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日本株上昇は、更に続く余地を持つ可能性

日本株上昇は、更に続く余地を持つ可能性

※インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供するコンテンツです。

〔要旨〕

  • 基礎固め:故安倍元首相が打ち出した野心的な経済計画「アベノミクス」が、今日の日本株上昇の下地を作った
  • 改革は定着しつつある:今日、日本は構造改革が定着しつつあるように見え、安倍元首相のビジョンの多くを実現しつつあると言ってよいように思われる
  • 更なる成長が期待できるか?:魅力的なバリュエーション、豊富な現金、そして金融政策により、今後日本株が上昇する可能性

アベノミクスの「3本の矢」

安倍元首相のビジョンが現在の日本に与える影響

日本株がさらに上昇し得る3つの理由

注目の日程

まるで1980年代後半に戻ったかのようです。リーボックのハイカットスニーカーやGuessのジーンズを履き、エスプリのジャケットを着ているからでも、メン・アット・ワークやイエスを聴いているからでもありません。日本経済について多くの熱狂が見られ、日本株がこの1年で力強く上昇したからです1

これはつかの間のトレンドに過ぎないのでしょうか、それとも「ジャパネサンス」の到来なのでしょうか。

日本の経済と株式市場は、パンデミック時に実施された強力な財政・金融刺激策の恩恵を確かに受けています。しかし私の見解では、その下地は、10年以上前に故安倍元首相が打ち出した野心的な経済計画「アベノミクス」によって築かれたと考えられます。

アベノミクスの「3本の矢」

アベノミクスは、日本経済を数十年にわたる停滞から脱却させるべく立案されました。この計画には、「3本の矢」として知られる3つの重要なイニシアチブが含まれていました:

  • 財政刺激策
  • 非常に緩和的な金融政策
  • 経済競争力と成長の向上に向けた構造改革

これは、金融及び財政刺激策によって日本経済をデフレから脱却させ、構造改革によって信頼感を改善しつつ、経済成長をより長期に持続可能なものとする、という強力な組み合わせから成るものでした。

  • 第1の矢である財政刺激策は、端的に言えば政府支出で、2013年に始まりました。これには大規模なインフラ整備計画が含まれ、その後すぐに追加的な財政刺激を行う政策パッケージが打ち出されました。
  • 第2の矢である非常に緩和的な金融政策には、超低金利だけでなく大規模な資産買入れも含まれました。日本では、大規模な資産買入れには日銀による日本国債購入を通じた量的緩和のみならず、日本株のETF(上場投資信託)などのリスク資産購入を通じた質的緩和も含まれます。この矢の1つの目的は、日本の高齢者層が、資産を銀行に預金しておくよりも投資に回すよう促すことでした。またもう1つの目的は、円安を促し輸出の伸びを支えることでした。
  • 第3の矢である経済構造改革は、労働人口を増やし、ビジネス規制を減らし、全般的に日本経済の競争力を高めることを目指した、漸次的な一連の政策から成るものでした。これには、企業の資本効率向上を目的として2014年に開始されたコーポレートガバナンス改革が含まれます。また、より多くの女性の復職促進や、従業員の賃上げの企業への奨励政策もこれに含まれます。

安倍元首相のビジョンが現在の日本に与える影響

さて、現在に話を戻しましょう。構造改革が定着しつつあるように見え、日本は安倍元首相のビジョンの多くを実現しつつあると言ってよいように思います。日本の春闘賃金交渉は、予想以上の結果となりました。日本最大の労働組合グループである連合と企業は、5.28%の賃上げで合意しました。これは昨年の3.8%の賃上げを大幅に上回り、最近のブルームバーグ調査におけるエコノミスト予想の4.1%をも上回りました2

10年前に開始されたコーポレートガバナンス改革によって、東証上場企業の資本効率は改善され、東証は更なる改善を推進しています。また、日本は安倍元首相の3本の矢のうち2本について、推進を続けています:岸田首相は追加的な大幅な財政刺激策を実施し、構造改革も引き続き支持しています。また最近、国内外からの投資を促進するため、規制を緩和し、外国人投資家が政府申請を英語で行えるようにするなどビジネス慣行を合理化しました。

日本株がさらに上昇し得る3つの理由

過去1年の日本の株式市場の力強い上昇により、日本経済の改善は全て織り込まれたとの見方もあるかもしれません。しかし私は、日本株を今後さらに上昇させる可能性のある理由が、更にあると考えています。

  • 魅力的なバリュエーション。第一に、過去1年間力強い上昇が見られたにもかかわらず、日本株は依然として魅力的であるように見えることです。MSCI ジャパン指数のバリュエーションは、実績株価収益率(PER)16.35と他の主要指数(例えばS&P500種指数の実績PER22.93) に比べてまだ低い水準にあります3 。加えてMSCIジャパン指数の配当利回りは、1.99%と他の主要指数(例えばS&P 500種指数の配当利回り1.4%)を大きく上回っています3
  • 現金が傍らにあること。第二に、日本にはそのまま置かれている現金が大量にあるということです。日本では、家計の金融資産の52.5%が現預金ですが、その割合は米国では12.5%、ユーロ圏では35.5%に過ぎません。もちろん、米国やユーロ圏の家計における株式への配分比率はより高くなっています4 。現金を株式に移すきっかけとなるのは、日本の家計の銀行預金から株式への資金移動の奨励を目指し、今年1月にスタートした非課税投資貯蓄制度である新NISA(日本版ISA)かもしれません。
  • 金融政策の正常化。最後に、日銀による金融政策の段階的正常化の決定も、それが実際に起こった時、プラスに働く可能性があります。このような正常化は信頼感を高める可能性があります―17年ぶりの利上げは、日本経済がより良い状態にあり、今後も改善が見込まれるため、もはや高次の支援を必要としないとの強いメッセージとなります。加えて、金融政策の正常化は円高を引き起こす可能性が高く、これも日本株にとってプラスに働く可能性があります。外国人投資家による日本株の昨年のリターンの多くが円安によって損なわれましたが、円高が進めば、円安により阻まれていた外国人投資家による投資を後押しする可能性があります。

昨年12月、私の同僚であるチーフ・インベストメント・オフィサー兼日本株式運用部長の小澤大二は、日経平均株価が1989年につけたピークを上回るだろうと正確に予測しました。 彼は、日銀による金融政策正常化に向けた慎重な取り組みと投資連鎖全体を強化する政府の改革に裏打ちされ、名目GDPの持続的な成長が実現すれば、日本の株式市場は好調を維持するだろうと予想しました。私はこの評価に大いに賛成であり、日本経済と株式市場の更なる好展開を楽しみにしています。

注目の日程:

今週は、中央銀行-特に日銀、イングランド銀行、米連邦準備制度理事会(FRB)に注目が集まります。いずれの中央銀行も金融政策の変更が近いと目されていますが、日銀が先に動き、今週または4月に金融政策の正常化を開始すると予想されています。春闘交渉により、日銀の正常化に向けた確信が早晩高まると見られるためです。

また、直近でいくつか意外なデータが出た後の今週は、FRBとイングランド銀行がいつ利下げを開始するかについても貴重なガイダンスが得られそうです。特に、今年の利下げ回数が2回にとどまるとの予想が示され得ると囁かれており、FRBのドットプロット(FOMCメンバーによる金利予測分布図)に注目したいと考えています。実際そうなったとしても、慌てないでください。以前も申し上げたように、ドットプロットは非常に不正確な場合があります―2021年12月のドットプロットを見れば、神経を落ち着かせることができるでしょう。

公表日 指標等 内容
3月18日 ユーロ圏CPI インフレの動向を示す
3月18日 米国NAHB住宅市場指数 住宅市場の健全性を示す
3月18日 日銀金融政策決定会合 金利の道筋に関する最新の決定を発表
3月18日 オーストラリア準備銀行
金融政策決定会合
金利の道筋に関する最新の決定を発表
3月19日 ドイツZEW景況感指数 今後6カ月間の景況感を測定
3月19日 ユーロ圏ZEW景況感指数 今後6カ月間の景況感を測定
3月19日 米国住宅建築許可件数、
住宅着工件数
住宅市場の健全性を示す
3月19日 カナダCPI インフレの動向を示す
3月20日 英国CPI インフレの動向を示す
3月20日 ドイツ生産者物価指数 生産者に対して支払われるモノ・サービスの価格変化を測定
3月20日 米連邦公開市場委員会 金利の道筋に関する最新の決定を発表
3月21日 スイス国立銀行金融政策
決定会合
金利の道筋に関する最新の決定を発表
3月21日 イングランド銀行金融政策
委員会
金利の道筋に関する最新の決定を発表
3月21日 英国PMI 製造業とサービス業の経済の健全性を示す
3月21日 ユーロ圏PMI 製造業とサービス業の経済の健全性を示す
3月21日 米国PMI(S&Pグローバル) 製造業とサービス業の経済の健全性を示す
3月21日 日本CPI インフレの動向を示す
3月21日 英国小売売上高 消費需要を測定
3月21日 カナダ小売売上高 消費需要を測定
  • 1.出所:MSCI、2023年12月31日。2023年のMSCIジャパン指数のリターンは20.77%。
  • 2.出所:ブルームバーグ調査、2024年3月12日
  • 3.出所:MSCI、2024年2月29日、ブルームバーグ、2024年3月15日
  • 4.出所:日経アジア、“Japan households’ investments drive 80% of asset growth”、2023年12月26日

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

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