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究極のクリーンエネルギー?「空気から電気をつくる」技術開発が加速
(画像=sharaku1216/stock.adobe.com)

究極のクリーンエネルギー?「空気から電気をつくる」技術開発が加速

空気中の水分子、つまり湿気から電気をつくる「空気発電」が、究極のクリーンエネルギーとして注目を集めています。本記事では、空気発電の最新研究・開発動向と事例、将来性についてレポートします。

空気から電気をつくる仕組み

世界中の研究者は長年にわたり、さまざまな手法を用いて空気発電に取りくんでいます。たとえば、稲妻が発生する仕組みにヒントを得た発電法があります。水蒸気を多く含んだ積乱雲の中で発生した電気は、落雷や稲妻となって膨大な量のエネルギーを放電します。典型的な稲妻は約3万アンペアと、家庭用電流の2,000倍に及びます。

この仕組みを応用し、空気中の水分子に含まれる電荷(※)を効率的に回収して電気に変換できれば、環境に優しく安全な究極のクリーンエネルギーを生成できる可能性があります。

(※)粒子や物体が帯びている電気量。

最新の研究開発3つの事例

このような技術を用いて、建物や自動車などが必要とする大量のエネルギーを生成するためには、まだまだ研究開発が必要です。その一方で、近い将来、小型コンピューターやセンサー、ウェアラブル機器といった小型デバイス向けの発電に活用できるようになると期待されており、近年は次のような研究開発が進められています。

【1】 湿気とナノ細孔膜で電気をつくる(米国)

マサチューセッツ大学アマースト校の研究チームは、稲妻の仕組みにヒントを得た空気発電に取り組んでいます。
最新の研究では、直径100ナノメートル未満のナノ細孔に集めた水分子を利用して、微量の電気を生成する技術「エアジェン(Air-gen)」を開発しました。水分子がナノ細孔を通過する際に摩擦帯電が生じ、極めて小規模ではあるものの落雷と同じ原理で電気を生成するというものです。過去の研究では、細菌から得られるタンパク質を使用するなど素材を重視していましたが、最新の研究結果のカギとなるのはナノ細孔であることを示唆しています。

【2】 湿気と金属で電気をつくる(イスラエル)

イスラエルのテルアビブ大学環境・地球科学学部の研究者も稲妻にヒントを得た研究成果に関しては、亜鉛やステンレス鋼といった特定の金属が高相対湿度(※)にさらされると、自然に電荷を蓄積するという性質に着目。2020年に研究室及び屋外で実施された実験では、相対湿度が60%の環境下で2枚の金属の表面を1ボルトに帯電させることに成功しました。この結果は、常に高相対湿度が発生するイスラエルのような地域において、新たなエネルギー源として利用できる可能性を示しています。

(※)空気の水蒸気含有量を表す尺度。

【3】湿気を直接電気に変える(ポルトガル)

「湿気の吸着エネルギー(※1)を電気エネルギーに直接変換する」という、革命的なモジュール式デバイスを開発したのは、ポルトガルのルソフォナ大学の材料科学者チームです。

これは、独自に開発したナノマテリアルを使用して湿度の高い空気中の水分子を捕獲し、ナノスケールのチャネル(※2)に流すことにより電荷を生成するというもの。直径4㎝のデバイスはLEDライトの供給に十分な電気を生成でき、相対湿度が30%以上であればあらゆる環境で作動します。また、デバイスを連結することにより、家庭用からエネルギープラント用に至るまで、多様な機器に適合させることが可能です。

同社は、欧州イノベーション・カウンシル(※3)の資金提供による「CATCHERプロジェクト」にも参加しており、2024年までに1日当たり10kwhの電力を受動的に生成するための装置を開発することを目指しています。

(※1)吸着反応に必要なエネルギー。
(※2)電流の流れる伝送路。
(※3)革新的なアイデアと技術を有するスタートアップの支援を強化するための組織。

今後の課題

開発が加速する一方で、実用化に向けた課題も横たわります。たとえば、空気中の水分子に含まれる電荷を効率的に回収し、十分な電力を生成する技術的進歩が必須であるほか、既存の再生エネルギーに対して発電量とコスト競争力があることを実証する必要があります。また、湿度が低い地域や寒冷地などには不向きである点も指摘されています。

「持続可能な社会の実現を支える技術」として注目

空気発電の実用化はまだ道のりが長いことが予想されるものの、究極の環境に優しい次世代エネルギーとなる可能性を秘めた技術です。持続可能な社会の実現を支える重要技術として、今後さらに世界中で研究開発が加速し、注目度が高まることが期待されます。Wealth Roadでは、今後も空気発電を含むクリーンエネルギー市場の動向をレポートします。

※上記は参考情報であり、特定の銘柄の売買及び投資を推奨するものではありません。

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