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東京都の私立高校向け助成金シミュレーション結果と受給条件を解説
(画像=Hanasaki/stock.adobe.com)

東京都の私立高校向け助成金シミュレーション結果と受給条件を解説

東京都の私立高校向け助成金(私立高等学校等授業料軽減助成金事業)は、対象世帯の授業料の一部を助成する制度です。国の就学支援金との併用が可能であり、世帯状況によっては授業料の全額が助成されます。本制度の適用を受けるには、所得要件などの条件を満たす必要があります。

東京都の私立高校向け助成金シミュレーション結果

本記事で行った東京都の私立高校向け助成金シミュレーションの結果は、以下の通りです。

<世帯年収500万円>
→年間7万9,000円の助成
※家族構成:父、母、高校生1人、大学生1人の場合
<世帯年収600万円>
→年間35万6,200円の助成
※家族構成:父、母、高校生1人の場合

東京都の私立高校向け助成金は、都内在住の私立高校に通う高校生を対象にした制度です。国の就学支援金と合わせると、全日制・定時制では年間47万5,000円まで、都認可通信制では年間26万5,000円までの授業料が助成されます。

ただし、本制度には所得要件があり、世帯年収や家族構成によっては助成を受けられないこともあります。また、国の就学支援金で授業料全額が助成される場合は、本制度の対象には含まれません。

東京都の私立高校向け助成金の計算方法

東京都の私立高校向け助成金は、申請をした年の住民税から計算されます。助成額を計算するためには、基準額を計算する必要があります。

<基準額の計算式>
住民税の課税標準額×6%-住民税の調整控除相当額=基準額

基準額 全日制・定時制の助成額 通信制の助成額
15万4,500円未満 7万9,000円 対象外
15万4,500円~30万4,200円未満 35万6,200円 14万6,200円
30万4,200円以上 下記の表を参照 下記の表を参照

(※助成額は1年間の金額)

基準額が30万4,200円以上の世帯についても、以下の金額に収まる場合は最大で年間35万6,200円(※通信制は14万6,200円)が助成されます。

世帯人数 申請者1人のみに所得がある世帯 申請者と配偶者に所得がある世帯
3人 32万340円以下
4人 37万8,120円以下
5人 31万3,800万円以下 43万8,060円以下
6人 32万7,600万円以下 45万1,860円以下
7人 35万8,680円以下 48万2,940円以下
8人以上 35万8,680円+(A×3万1,080円) 48万2,940円+(A×3万1,080円)

(※上記のAは世帯人数から7人を差し引いた人数)

また、上記の基準額を超える世帯のうち、23歳未満の被扶養者が3人以上いる世帯は、年間5万9,400円の助成を受けられます(※全日制・定時制・通信制で共通)。

東京都の私立高校向け助成金を受け取った場合のシミュレーション

東京都の私立高校向け助成金を受け取ると、学費の負担はどれくらい軽くなるのでしょうか。東京都生活文化スポーツ局の資料によると、2023年度における初年度納付金は以下の通りです。

学費の内訳 1年間の平均額
授業料 48万3,311円
入学金 25万3,113円
施設費 3万6,096円
その他 18万4,399円
初年度納付金(総額) 95万6,918円

(参考:東京都「都内私立高等学校(全日制)の学費の状況」)
(※以下の表は、全日制の都内私立高等学校における学費状況)

ここからは1年間の学費を95万円として、東京都の私立高校向けの助成金シミュレーションを紹介します。

【例1】世帯年収500万円(父、母、高校生、大学生)の場合

住民税の課税標準額は、特別徴収税額決定通知書や課税証明書に記載されています。本記事では分かりやすく計算をするために、以下の条件でシミュレーションを行います。

<シミュレーションの前提条件>
住民税の課税標準額:世帯年収から所得控除を差し引いた金額
世帯内で所得のある人物:父のみ
所得の内訳:給与所得のみ
適用される所得控除:基礎控除、給与所得控除、配偶者控除(一般)、扶養控除(一般)
通っている高校:全日制の私立高校

<住民税の課税標準額>
世帯年収-(基礎控除+給与所得控除+配偶者控除+扶養控除)=課税標準額
500万円-(48万円+144万円+38万円+76万円)=194万円

<住民税の調整控除相当額>
住民税の調整控除相当額は、世帯状況によって適用される金額が異なります。

<所得のある保護者等が1人>
・1,500円
<所得のある保護者等が2人>
・1,500円(配偶者控除あり)
<所得のある保護者等が2人>
・3,000円(配偶者控除あり)

したがって、このケースにおける調整控除相当額は1,500円になります。

<基準額の計算>
住民税の課税標準額×6%-住民税の調整控除相当額=基準額
194万円×6%-1,500円=11万4,900円

基準額が15万4,500円未満となったため、この世帯には年間7万9,000円が助成されます。前述の初年度納付金から差し引くと、87万1,000円を負担する形になりますが、最大47万5,000円までは国の就学支援金からの助成も受けられます。

【例2】世帯年収600万円(父、母、高校生)の場合

世帯年収や家族構成が異なると、東京都の私立高校向け助成金のシミュレーション結果も変わってきます。

<住民税の課税標準額>
600万円-(48万円+144万円+38万円+38万円)=332万円

<住民税の調整控除相当額>
所得のある保護者等が1人なので、調整控除相当額は1,500円です。

<基準額の計算>
332万円×6%-1,500円=19万7,700円

基準額が15万4,500円~30万4,200円未満の範囲となったため、この世帯は35万6,200円の助成を受けられます。ただし、上記のケースに比べると国の就学支援金が減額されるので(※)、初年度納付金の負担は変わらない可能性があります。

(※)東京都の私立高校向け助成金と同じく、住民税の課税標準額と調整控除額から基準額が計算される。ただし、支給額の決まり方に違いがあり、国の就学支援金では基準額が少ないほど助成が手厚くなる。

東京都の私立高校向け助成金の対象世帯

東京都の私立高校向け助成金を受け取るには、シミュレーション結果に加えて対象世帯も確認する必要があります。以下の条件を一つでも満たしていない世帯は、助成の対象外になるので注意してください。

【条件1】申請時まで東京都内に在住している

東京都の私立高校向け助成金は、都内に在住している世帯や子どもを対象にした制度です。助成を受ける年の5月1日から申請日までの間、生徒本人と申請者(保護者等)が東京都内に引き続き在住していない場合は、助成の対象外になってしまいます。

ただし、生徒本人が県外の寮(学校指定)に入る場合は、入寮証明書の提出によって助成を受けられます。

<助成の対象外となる主なケース>
・都外から東京都の私立高校に通っている
・生徒本人は東京都内に住んでいるものの、申請者の居住地が都外である
・5月1日から申請日までの間、一度でも都外に引っ越したことがある

申請者の居住地も条件に含まれるため、単身赴任が多い世帯などは注意してください。

【条件2】対象校に含まれる

東京都の私立高校向け助成金を受け取るには、次の在学要件も満たす必要があります。

<東京都の私立高校向け助成金の対象校>
【1】私立高等学校(全日制、定時制、都認可通信制)
【2】私立中等教育学校後期課程
【3】私立特別支援学校の高等部
【4】私立高等専門学校(1~3年生のみ)
【5】私立専修学校高等課程

在学要件の基準日については、高校の過程や入学時期によって以下のように異なります。

<全日制・定時制(4~6月に入学)>
・申請年度の7月1日
<都認可通信制(4~9月に入学)>
・申請年度の10月1日
(※入学時期が基準日以降になった場合は、申請日が基準日になる。)

上記の対象校に含まれる場合は、都外の私立高校に通う生徒も助成対象になります。

【条件3】基準額が一定金額未満である

前述の通り、申請する年度の基準額が一定金額未満であることも、助成の適用条件に含まれます。基準額の判定は毎年行われるため、例えば共働きによって世帯年収が増えたり控除が減ったりすると、翌年度から対象外になる可能性もあります。

不安を感じる場合は、前述の「東京都の私立高校向け助成金を受け取った場合のシミュレーション」を参考にしながら、毎年の基準額を計算しておきましょう。

東京都の私立高校向け助成金の申請手続き&スケジュール

東京都の私立高校向け助成金は、以下の流れで申請できます。

<助成金を受け取るまでの流れ>
【1】証明書類を用意する
【2】申請受付サイトにアクセスする
【3】必要事項を入力し、証明書類をアップロードする
【4】内容を確認して申請する
【5】結果の通知
【6】助成額の振込

証明書類 必要になる世帯
住民票 全ての世帯
生活保護受給証明書 生活保護を受給している世帯(※)
課税証明書、非課税証明書 生活保護を受給していない世帯(※)
入寮証明書 生徒本人が学校指定の寮に入っている世帯

(※)国の就学支援金を5月末までに申請した場合は不要。

ここからは「全日制・定時制」と「都認可通信制」に分けて、具体的なスケジュールを紹介します。

全日制・定時制の場合

2023年度の私立高校向け助成金は、以下のスケジュールで実施されました。

<全日制・定時制のスケジュール>
【1】通常申請:6月中旬~7月下旬
【2】結果通知と助成(通常申請):10月中旬~12月下旬
【3】特別申請:1月上旬
【4】結果通知と助成(特別申請):3月中下旬

5月末までに国の就学支援金を申し込んだ場合は、申請時に「就学支援金(e-Shien)のログインID」と「就学支援金受付番号」が必要になります。そのため、e-Shineのログイン情報や学校から配布された書類は、きちんと保管をしておきましょう。

都認可通信制の場合

次に、2023年度における都認可通信制の年間スケジュールを紹介します。

<都認可通信制のスケジュール>
【1】通常申請:10月上旬~10月下旬
【2】特別申請:1月上旬
【3】結果通知と助成:3月中下旬

全日制・定時制とは違い、都認可通信制では10月から通常申請が始まります。また、申請方法によって結果通知と助成の時期が変わることもありません。

東京都の私立高校向け助成金以外の支援制度

子どもが私立高校に通う世帯に向けて、東京都は他にも支援制度を用意しています。授業料以外の支援も受けられるため、私立高校向け助成金以外の制度も確認しておきましょう。

【1】私立高等学校等奨学給付金

教材費や学用品費など、授業料以外の学費を助成する制度です。所得要件や在学要件などを満たすと、経済状況に応じた給付金を受け取れます。

<生活保護と生業扶助の受給世帯>
全日制や定時制、通信制は、年間5万2,600円までの給付金が助成されます。

<生活保護の受給世帯、住民税の非課税世帯>
全日制や定時制は年間15万2,000円まで、通信制や専攻科は年間5万2,100円までの給付金が助成されます。

年間スケジュールは東京都の私立高校向け助成金(全日制・定時制)と同じであり、6月中旬から7月下旬にかけて通常申請を行います。

【2】入学支度金

入学支度金貸付制度がある高校へ進学する場合に、最大25万円の入学費用を無利子で借りられる制度です。在学期間中(3年間)に返済する必要はありますが、借りたお金は授業料や実習費、施設設備費、光熱費などにも使えます。

学校によって申請時期や返済方法などが異なるため、利用を検討している人は進学先・通学先に問い合わせてみましょう。

【3】育英資金

学習意欲があるにも関わらず、経済的理由により修学が難しい高校生を対象にした制度です。私立の高等学校や専修学校、高等専門学校に通っている場合は、月額3万5,000円までの奨学金を無利子で借りられます(※専修学校の専門課程は月額5万3,000円まで)。

本制度では学生に奨学金を貸し付けるため、返済義務は生徒本人が負うことになります。また、申し込みにあたっては複数の条件を満たす必要があるので、計画を立てる前に詳細を確認しておきましょう。

事前に東京都私立高校向け助成金のシミュレーションをしよう

東京都私立高校向け助成金は、世帯収入や家族構成によって支援額が変わります。また、年度が変わると再び申請する必要があるため、経済状況が変わると助成を受けられなくなるかもしれません。学費負担が不安な世帯は、入学前に東京都私立高校向け助成金のシミュレーションを念入りに行い、場合によっては他制度の利用も考えましょう。

※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。

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