2023年はインフレや金利上昇、景気後退リスク、地政学的な緊張の高まりといった不安材料を背景に、実物資産が脚光を浴びました。本記事では、2024年に需要や投資のさらなる加速が期待される実物資産についてレポートします。
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2023年の世界の株式市場は金利低下や景気回復への期待感が高まったことから、一部で活発な動きが見られました。特に米国では、テクノロジーや通信サービス、一般消費財株、グロース株は大幅な反発を記録し、S&P500(※)は同年11月末の時点で年間平均を大きく上回る約21%のリターンを記録。日本では、日経平均株価も同期間に20%以上も上昇するなど、国内株式も健闘しました。
(※)米株式市場の動向の指標となる株価指数。
情勢が目まぐるしく変化する中、2024年も投資家の高い関心を集めると期待されている投資対象の1つが実物資産です。OECD(経済協力開発機構)の予想によると、2024年は多くの国・地域でインフレが沈静化する反面、世界的な高金利の継続や国際情勢の不安定化などが重石となり、世界GDP成長率は前年から0.3%減の2.7%へ失速する見通しです。
その一方で、2024年は米国を筆頭に台湾やインド、韓国などで選挙が予定されており、国際情勢や経済・金融・投資市場への影響が懸念されています。このような背景から、短期的な市場サイクルやボラティリティリスクの回避手段として、実物資産の魅力が一層増す可能性が考えられます。
実物資産への投資が多様化する中、2024年にさらなる成長が期待できるのはどのような実物資産なのでしょうか。以下、注目されている3つの分野を見てみましょう。
農地はインフレ・景気後退環境下で優れたパフォーマンスを発揮し、長期的に安定したリターンが期待できる実物資産です。米国の農地ベンチマークであるNCREIF農地不動産指数の過去25年間の平均年間リターンは11.4%と、S&P500(9.3%)を上回りました。
近年は金利やコストの上昇が圧力となっているものの、生活必需品である食糧を生産する農地はインフレリスクを回避しつつ、食糧需要の増加からも利益を期待できるという、他の資産にはない固有の特長があります。
米国においては2008年の世界金融危機以降、農地投資の長期的な将来性を見越した投資企業による、農地取得が急増しています。近年は個人投資家が購入できる農地ファンドや農地REIT(※)も広がってきており、投資家層が徐々に広がっていることも、成長を後押しするかもしれません。
(※)REITは投資家から集めた資金を使い、投資法人が不動産に対して投資を行う金融商品。
クリーンエネルギーも2024年の重要な投資テーマの1つです。サステナビリティ意識の高まりや政府の支援を追い風に、設備投資の拡大により資産価値が増加し、新たな技術開発やプロジェクトが引き続き注目を集めることが期待されます。
IEA(国際エネルギー機関)によると、2016年以降、世界のクリーンエネルギー投資は化石燃料投資を上回っており、2023年には1兆7,400億ドル(約254兆400億円)に達しました。
全体に占める割合が最も高い再生可能エネルギーを筆頭に、エネルギー効率化技術や低炭素燃料(※)、電気自動車(EV)、送電網、水素エネルギーなど、多様なクリーンエネルギー技術の可能性を模索する動きがさらに活発化することが予想されます。
(※)バイオディーゼルや再生可能ディーゼルなど、従来のガソリンやディーゼルより炭素排出量が少ない燃料。
インターネットのデータ通信や携帯・IP電話、クラウドなどの提供に必要なデータセンターは、不動産の中で急速に成長している領域の1つです。
データセンターを扱うREITは、インフレ耐性があり、継続的な成長を期待できる投資対象として注目が高まっています。長期的なデータセンター需要の拡大が期待できる点も、大きな魅力です。統計調査プラットフォームStatistaは、世界のデジタルデータ量が2025年までの10年間で約10倍に増加すると予想しています。
インフレや不安定な世界情勢を背景に、投資家の関心が実物資産に対する関心はますます高まることが予想されます。投資家はさまざまな状況を踏まえ、潜在的な成長力とリスクの両方を考慮した投資戦略を立てる必要があるでしょう。Wealth Roadでは、今後も実物資産の動向をレポートします。
※為替レート:1ドル=146円
※上記は参考情報であり、特定の銘柄の売買及び投資を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の運用成果等を保証するものではありません。