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目次
北米と欧州:景気減速後、回復が見込まれる
中国:政策当局は成長の安定化を模索
日本:上半期に一定の引き締めが見込まれる
見通しに対するリスク:地政学、コモディティショック、金融アクシデント
世界経済にとってのその他の2つのシナリオ
・下方シナリオ:ハードランディング
・上方シナリオ:ソフトランディング
選好される資産クラス
北米と欧州におけるここ2年ほどのインフレとの闘いを経て、私たちは、金融政策当局が引き締めサイクルの終わりに達したと考えています。しかし、過去の利上げの波及的な影響は続くでしょう。従って、私たちの2024年のグローバル市場見通しは、成長の持続性とインフレの粘着性のバランスを中心に据えています。欧米先進国については、2024年もディスインフレが続き、上半期には景気減速が起こるものの、下半期には回復していくと予想しています。一方で中国と日本については、状況は大きく異なります。
2022年から2023年にかけての急速な利上げにもかかわらず、多くの先進国経済は成長を続け、最近になってようやく弱含みの兆しが見え始めたところです。2024年に向けて世界経済はわずかに減速し、主要先進国は上半期にバンピーな(でこぼこした)着地をすると予想されます。国により結果は異なるとみられ、米国は政策的引き締めや与信条件の厳格化の影響に対して最も底堅いと思われますが、ユーロ圏や英国の成長は既に減退してきています。
ただし、インフレが徐々に沈静化し、金融政策の転換が起こることで、減速は短縮されると予想されます。私たちは、金融政策当局は現在、引き締めサイクルの終わりに達したと考えています。欧米先進国の主要中央銀行にとっての次のステップは緩和と考えられ、成長が減速し、インフレが許容範囲の方向に動き続けるにつれて、2024年上半期の後半に緩和が開始されると予想しています。これにより景気回復の実現が後押しされ、インフレの低下に応じて実質賃金が上昇するに従い、2024年下半期に世界経済がトレンド成長へと回帰していくと考えています。
他方で、中国経済は著しく異なる状況にあります。2023年に新型コロナウイルス後の経済再開による楽観論が後退した後、政策当局は成長の安定化を模索しています。私たちは、適切な政策によって経済の姿が改善し得ると考えており、中国の政策当局が成長率安定化のため、2024年に財政政策をわずかに拡大すると予想しています。
私たちの見解では、中国の成長率は2024年上半期に低迷し、下半期に改善する可能性が高く、結果として実質成長率は4.3-4.7%程度になると予想されます。
日本もまた、著しく異なる状況にあります。インフレ上昇がどこまで続くかについては大いに不確実性があるため、日銀は大幅な引き締めは引き続き控えるだろうと予想しています(何といっても日銀は過去に、インフレの夜明けだと思ったものの違ったという経験があります)。しかし私たちは、日銀は2024年上半期にわずかな引き締めを開始する可能性が高いと考えています。また日銀は、世界の債券市場のボラティリティの過大な上昇からくるノックオン効果を防ぐために、イールドカーブ・コントロール政策を微調整するとみています。
インフレの大幅な上昇によって日銀が大幅な引き締めを余儀なくされ、世界の債券利回りが上昇し、日本円が円高に振れるリスクがわずかにあります。
グローバル・パンデミック以降、リスクと不確実性が高まったままとなっています。ロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢、台湾をめぐる緊張の継続は、世界市場、サプライチェーン、物価に更なる不確実性をもたらしています。現在継続中の紛争は、成長に負の影響を与えるコモディティ価格ショックの引き金となる可能性もあります。
米国の政治的不確実性もまた、米国財政の持続可能性、政府機関の閉鎖の可能性、更には債務不履行の可能性への懸念を悪化させています。他方で、多くの主要国で与信条件が急速に厳格化されたことで、2023年上半期に見られたような金融アクシデントの可能性への恐れが高まっています。
私たちの基本シナリオでは、これらの要因による重大な影響はないと想定していますが、見通しに対するリスクであることは認識しています。
成長とインフレのバランス及び政策当局が結果として取る対応に焦点を当てた、その他の2つのシナリオも考えられます:
「ハードランディング」には2つのドライバーが考えられます:既にコミットされた政策の誤ち、または更なる引き締めを誘発する持続的なインフレです。
• 1つ目については、政策的引き締めのラグが長期にわたり、かつ可変的であることにより、欧米先進国の手には負えないことが2024年に判明する可能性があります。この場合、成長率の低下とディスインフレの加速が予想されます。
• あるいは、2つ目として、インフレがより長期化することで、政策当局が政策金利をより長期に、より高く維持する必要に迫られ、結果的に予想以上に大きな経済的影響がもたらされる可能性もあります。
いずれの場合も投資への示唆は似たようなものとなりますが、短期的な経験は異なるでしょう。最初のシナリオでは政策的緩和が早まる可能性が高いため、ロング・デュレーション債券や株式がより早くアウトパフォームするでしょうが、これらの資産はインフレが持続するシナリオではアンダーパフォームするでしょう。
米国については、供給サイドのショックが解消するか既に解消しており、需要サイドの軽度の冷え込みがインフレを低下させるという上方シナリオも考えられます。この「ソフトランディング」シナリオでは、米国は既に景気サイクル半ばの減速期にあり(あるいはその脱却過程にあり)、そこから2024年上半期に再加速すると考えられます。
このシナリオでは、コアインフレは基本シナリオの場合よりも確実に、よりスムーズな軌道で低下し、FRBはより早期の緩和が可能になると予想されます。米国以外の国では、双子の赤字に苦しむ新興国とともに、ユーロ圏、日本、中国などの黒字国がこのシナリオの恩恵をよりしっかり受けると予想されます。これは、米国のディスインフレと成長が世界経済を押し上げ、中国やユーロ圏における足元の軟調さが相殺されるためです。
私たちの基本シナリオに基づくと、2024年の年明けとともに世界のリスク選好度が高まり、市場は同年下半期の回復を織り込み始め、一定のボラティリティが生じると予想されます。このような環境では株式が有利となりますが、金利の低下が見込まれることから債券も良好なパフォーマンスを上げるでしょう。
結論:上半期は市場が下半期の回復を織り込んでいるため、シクリカル株とバリュー株を選好しますが、下半期はトレンド成長率への回帰と金利低下により、テクノロジー株とグロース株が恩恵を受ける可能性があります。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2023-189