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2023年のESG市場は現状どう?グリーンウォッシュや世界情勢の影響?
(画像=narawit/stock.adobe.com)

2023年のESG市場は現状どう?グリーンウォッシュや世界情勢の影響?

コロナ禍のサステナブル投資熱が失速した2022年を経て、2023年はESG市場の持続的な成長に影を落とす出来事が相次ぐ一年となりました。一方では、グリーン投資(※)の拡大など、回復を予感させる期待材料もあります。

(※)環境問題に配慮した経済活動への投資。

2023年、ESG市場に大きな影響を与えた出来事

2023年のESG市場は、世界的なインフレ圧力や金利の上昇、ロシアのウクライナ侵攻を筆頭とする世界情勢の変動、欧米を中心とするグリーンウォッシュ(※)、それに伴う規制強化などの影響が、ESG市場に大きな影響を与えました。

(※)企業が環境を配慮しているように装う行為。

米国においては、フロリダ州でESG投資活動を制限する「反ESG法」が成立するなど、政治的要因がESG市場へ飛び火し、ESG投資への懐疑心が広がりました。

市場への影響は?

2023年はこのような一連の潮流が、ESG投資に反映されることとなりました。

モーニングスターの報告書「グローバル・サステナブルファンド・フロー』によると、2023年第3四半期の世界のサステナブルファンドへの資金流入は137億ドル(約2兆824億円)と、前四半期から44%減少。運用資産は4.2%減の2兆7,000億ドル(約405兆円)となり、ファンド発行数も大幅に減少しました。

その結果、米国のサステナブルファンドからは過去1年間で総額142億ドル(約2兆1,584億円)が流出しました。
一方で、ESG投資が財務パフォーマンスと結びついていないことを指摘する調査結果も報告され、一部の企業や投資家間でESGへの関心が低下しています。2023年第1四半期決算発表でESGに言及したS&P500企業はわずか74社と、2021年第4四半期から約53%減少しました。

回復を期待させる3つの要素

しかし、このようなデータだけで「ESG投資離れが加速している」と判断するのは時期尚早であることを示唆する、以下のような有望な要素もあります。

【要素1】欧州は底堅い推移、アジアで資金流入増加

ESG投資へのスタンスは、国・地域によって異なります。

例えば、世界のサステナビリティファンドの8割以上を占める欧州においては、資金流入の減少やグリーンファンドの閉鎖が相次いだものの、第3四半期の純流入額は153億ドル(約2兆3,256億円)と底堅い推移を維持しています。欧州は最も多様性に富んだESG市場と力強い回復力を有しており、今後も成長を続けることが期待されます。

一方で、日本を除くアジア圏においては資金流入が増加するなど、投資家間でサステナビリティをより重視する動きが高まっています。

【要素2】クリーンエネルギー投資が化石燃料投資を上回る?

環境負担が少ないクリーンエネルギー(※)や再生可能エネルギー、エネルギー貯蔵、水質浄化、森林管理など、脱炭素社会実現のカギを握る技術への投資は依然として活発です。国際エネルギー機関(IEA)は、世界のクリーンエネルギーへの投資が2021~2023年にわたり自然エネルギーと電気自動車(EV)に牽引され、初めて化石燃料への投資を上回ると予想しています。

米国においては、2022年に成立した「インフレ抑制法」が、ESG市場にポジティブな効果を与えると期待されています。この法律の目的には、投資家にクリーンエネルギー投資の機会を与えると同時に、クリーンエネルギーへの移行を主導する企業を支援することが含まれています。

【要素3】グリーン債が過去最高額を記録

一方で、環境問題プロジェクトを支援する動きも勢いを増しています。英法律事務所リンクレーターズの調査結果によると、2023年前半には世界のグリーン債(※)の発行額が、過去最高の5,680億ドル(約86兆3,360億円)に達しました。

(※)政府や企業、自治体などが、国内外のグリーンプロジェクトに必要な資金を調達する目的で発行する債券。

2024年のESG市場はどうなる?

ESG市場は重要な改革の時期にあり、市場を取り巻く環境は急速に変化しています。2024年も引き続き、さまざまな要因が市場に影響を与えると予想されますが、短期的・長期的価値の創造や財務実績、安定性、成長、透明性などに焦点を当てたアプローチが、これまで以上に重視されるようになるかも知れません。

一方で、財政難や高資本コストなどの理由から、サステナビリティへの取り組みが遅れている低所得国への投資を促進する動きが、国際社会で高まる可能性があります。総体的には、包括的で成長力の高いESG市場の構築に向けた取り組みが進むことが予想されます。

ESG市場の安定感が成長のカギ?

SGDs(持続可能な開発目標)の達成を目指す世界的な取り組みが、ESG市場の成長を促進し続ける可能性は高いでしょう。このような追い風のもと、サステナビリティを主導する企業が競争力のある持続的な利益を創出できるようになれば、ESG市場に安定感が生まれ、投資家が安心して長期的な視線から投資できる環境が整うのではないでしょうか。Wealth Roadでは、今後もESG市場の動向をレポートします。

※為替レート:1ドル=152円
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