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投資信託はすぐ売れない?利益分だけ売るのはあり?
(画像=Looker_Studio/stock.adobe.com)

投資信託はすぐ売れない?利益分だけ売るのはあり?

投資信託をすぐに売る場合、何に注意しないと損失を被る可能性があるのでしょうか。例えば、1度に全額ではなく、利益分だけを売るのも選択肢の一つです。メリット・デメリットについてもまとめているので、資産運用の計画を立てる際に役立ててください。

投資信託が値上がりしたら、すぐに売って利確(※)したいときもありませんか。そんなときは、いつ投資信託が売れるか確認しておかないと、想定していた値段で売れない可能性があります。実際に投資信託を売却するとき、何に気をつけたら良いのでしょうか。

投資信託をリアルタイムですぐ売ることはできない

ほとんどの投資信託は、金融機関の営業日に売却を申し込めます。実際に売却されるまでには時間差があり、申し込んだタイミングで取引価格が決まるわけではありません。この時間差を知るために、以下の日程を確認する必要があります。

<申込日>
取引の注文を出した日のこと。基本的には営業日の15時が締切となる。

<約定日>
実際の取引価格が決まる日のこと。

<受渡日>
投資信託の売却代金を受け取る日のこと。

申込日から約定日までの日数や、約定日から受渡日までの日数はファンドごとに異なります。いずれの投資信託もリアルタイムでの取引には対応していないため、すぐに現金化できない点は理解しておきましょう。

投資信託をすぐ売るときのメリット

投資信託は長期保有に向いた商品といわれますが、すぐに売却するメリットもあります。

メリット1.利益を確保できる

投資信託で含み益が出ているときにすぐに売って現金に換金した場合、投資信託分の資産を減らさないで済みます。もちろん将来の値上がり益を逃してしまう可能性はありますが、利益を確保できるのも十分なメリットといえるでしょう。

以下のタイミングで投資信託を売却すると、その時点での利益を確保できます。

・購入時点よりも基準価額が大きく値上がりしたとき
・基準価額は変わらないものの、各種手数料(※1)を上回る分配金を受け取れたとき

投資信託の損益は、基準価額(※2)の増減や受け取った分配金、発生した手数料などから計算できます。基準価額の増加分や分配金がコストを超えている場合は、売却によってその差額分の利益を確保できます。

(※1)購入時手数料や信託報酬、信託財産留保額などのこと。
(※2)投資信託の値段のこと。

メリット2.損失の幅を抑えることができる

投資信託の購入後に基準価額が下落しそうな場合は、すぐに売ることで損失を最小限に抑えられるかもしれません。相場や資産状況によっては損切り(※)も考える必要があります。

(※)損失を抱えている状態で売却すること。

また、市場変化などの理由で運用が難しくなった投資信託は、満了日の前に「繰上償還(※)」をされることがあります。繰上償還が行われると、投資家自身で売却のタイミングを選べなくなるため、その前に売却しておくことも考えておきましょう。

(※)通常の投資信託では、繰上償還の条件が規定されている。

メリット3.他の金融商品に投資できる

投資信託を売却して受渡日を迎えると、その商品に投資していた分を現金化できます。一度にファンドの全額を売却せずに、「利益分だけ売る」「半分だけ売る」といった選択肢もあります。

全額または一部を売却することで手元の投資資金が増えるため、他の金融商品を購入できます。売却したファンドよりも将来の値上がりや分配金が期待できるファンドに投資できれば、十分にメリットがある選択肢といえるでしょう。

投資信託をすぐ売るときのデメリット

投資信託をすぐに売ると、その後の状況次第では損をすることがあります。どのような損につながるのか、以下では2つのデメリットを紹介します。

デメリット1.思い通りの値段で売れない

前述の通り、投資信託はリアルタイムの基準価額で売却することはできません。投資家の平等性を確保するために、申し込み時点では基準価額が分からない「ブラインド方式」が採用されています。そのため、短期間の値動きに惑わされて取引を急ぐと、思い通りの値段で売れない可能性があります。

デメリット2.積立投資と複利の効果がなくなる

保有している投資信託を手放すと、積立投資と複利の効果を失ってしまいます。

<積立投資の効果>
購入金額を一定に保つと、値下がりしたときには購入量が多くなり、値上がりしたときには購入量が少なくなります。その結果として平均購入単価が平準化されるため、相場の状況にもよりますが、損失のリスクを抑えやすくなります。

<複利の効果>
金融商品の運用によって得られた利益を使って同じ商品に投資することで、利益が利益を生む状態を作ることです。

積立投資と複利の効果を期待して運用している場合は、投資信託をすぐに売れないように心がけましょう。想定外のことが起きない限り、基準価格が大幅に変動したとしても売りたくなっても売らないことが大切です。

投資信託を売るタイミング6選

投資信託を長期保有する場合であっても、最終的には手放すことになります。売ってから後悔しないために、投資信託の売却を考えるタイミングについて解説します。

1.目標の基準価額に達したとき

投資信託を運用する場合は、事前に売るタイミングを考えておくことが大切です。例えば、「基準価額が10万円まで上昇したときに売却」「基準価額が1万円まで下落したときに売却」などの基準を決めておくと、売却のタイミングを悩まないで運用することができます。

2.予想より大きく値下がりしたとき

基準価額が予想より大きく値下がりしたときは、これ以上の値下がりによって損失を増やさないために損切りを検討する必要があります。

ただし、売却後に値上がりする可能性もあるため、「一時的な値下がりかどうか」は慎重に判断する必要があります。相場の状況を分析しながら、場合によっては追加で同じファンドを購入することで平均購入単価を下げたり、一部だけを損切りしたりすることも考えてみましょう。

3.現金が必要になったとき

日常生活やライフイベントで現金が必要になったときも、投資信託を売るタイミングです。生活が安定していないと投資は継続できないため、基本的には実生活を優先しましょう。

実際にどのようなケースで現金が必要になるのか、以下では分かりやすい例を紹介します。

<現金が必要になるタイミングの例>
・出産の予定があるとき
・子どもが進学するとき
・車を購入するとき
・マイホームを購入するとき

上記の他にも、急な病気やけが、失業なども現金が必要になるタイミングです。投資信託の現金化には時間がかかるため、現金が必要になるタイミングが訪れたら早めに手続きを進めましょう。

4.他に魅力的な商品を見つけたとき

長く投資を続けていると、現在の投資先よりも魅力的な投資商品が見つかるかもしれません。投資先を変えたほうが結果的に大きなリターンを期待できることもあります。ただし、将来の値動きを予測することは難しいため、投資判断は慎重に行ってください。

5.新NISAの総枠が上限に達したとき

2024年1月から始まる新NISAでは、毎年の非課税投資枠が拡充される代わりに、1,800万円までの総枠が設けられる予定です。この総枠に達すると、新NISAの口座からは新たな金融商品を購入できなくなります。

新NISAの総枠は再利用が認められており、保有中の投資信託などを売却すると、その枠で新たな金融商品を購入できます。現状の保有銘柄よりもリターンが期待できる金融商品を購入するために、一部の保有銘柄を売って総枠の空きをつくる必要が出てきます。

なお、新NISAの概要は2023年6月時点のものであり、制度開始までに変更される可能性があります。

投資信託を売るときのコツ

ここからは、投資信託を売るときのコツを解説します。

基準価額が何%上下したかで売り時を設定する

投資信託を売るタイミングは、「基準価額が何パーセント上下したか」を基準に設定してみましょう。例えば、「基準価額が50%上がったら売却」「基準価額が50%下がったら売却」のように決めておけば、細かい値動きを毎日気にする必要がありません。

基準価額だけではなく純資産総額にも目を向ける

投資信託の取引価格は、約定日の基準価額で決まります。基準価額は重要な判断材料ですが、売り時を判断する場合は「純資産総額」にも目を向けることが大切です。

純資産総額は投資信託の規模を表しており、以下のようにファンドの運用を左右することがあります。

<純資産総額が少ないファンドの傾向>
・十分な分散投資が難しい
・運用管理のコストを確保しづらい
・繰上償還のリスクが高い

純資産総額が極端に少ない場合は、ポートフォリオや運用方針の幅が狭まるため、運用難に陥る可能性があります。ただし、純資産総額が多いからと言って、必ずしも安心できるファンドとは限りません。

例えば、膨大な純資産を抱えるファンドがポートフォリオを変更すると、株価などのマーケットが変動する影響で、運用が不安定になる可能性もあります。基準価額や純資産総額はあくまで目安なので、一つの情報だけで判断しないようにしましょう。

月次レポートを確認する

投資信託のパフォーマンスを判断する際には、「月次レポート」が役立ちます。月次レポートは、ファンドの運用会社や委託会社が毎月発行している資料であり、大きく分けると3つの情報が記載されています。

<月次レポートに記載されている情報>
【1】直近のパフォーマンス
→基準価額や純資産総額の推移、騰落率、分配金の実績など
【2】ポートフォリオの内訳
→資産構成、組入上位の地域や銘柄、組入通貨など
【3】運用状況や市場に対する見解
→担当者によるコメントなど

投資信託に関連する資料には、他にも目論見書や運用報告書があります。

これらの資料にも多くの情報が記載されていますが、その中でも月次レポートは更新頻度が高いため、タイムリーな情報を確認できます。月次レポートにはマーケットに関する情報も記載されているため、ファンドの運用状況の確認や売買のタイミングを判断するのにも活用できます。

利確して買い直す

株式相場などが大幅に上昇していて加熱気味の場合、利確(※)して買い直すのも選択肢の一つです。相場が想像以上に盛り上がっていると、その後は反動で同じぐらい下落する可能性があります。このような状況を避けるために、利確してから落ち着くまで待つことも考えてみましょう。

(※)利益確定の略称。金融商品を購入したときよりも高値で売却すること。

投資信託は売る状況を想定してから買おう

投資信託の基準価額は日々変動しているので、いつ売るのがベストなのか分かりません。そのため、投資信託を買うときに自分なりの売るタイミングを決めておくと、実際に売るタイミングがやって来たときに悩まないで取引できます。

※本記事は投資信託に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資信託の売買や投資を推奨するものではありません。

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