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日本に富裕層はどれくらいいる?米国と比べて超富裕層が少ない理由

日本と世界で富裕層の実態を比べてみると、意外な結果が見えてきます。日本は経済大国に含まれますが、平均賃金や税制面で見ると富裕層が増えやすい環境とはいえません。

本記事では実際の資料やデータをもとに、日本における富裕層の実態を紹介します。

日本の富裕層人口は世界で3位

以下のデータは、三菱UFJ信託銀行の「日本の富裕層マーケットに関する考察」を参考に、2019年末時点での富裕層人口が多い国をまとめたものです。ここでは、純資産100万ドル(約1億3,000億円)以上を富裕層と定義しています。

順位 国名 富裕層の人数
1位 米国 2,021.5万人
2位 中国 578.8万人
3位 日本 332.2万人
4位 英国 235.7万人
5位 フランス 216.9万人
6位 ドイツ 216.3万人
7位 カナダ 145.2万人
8位 オーストリア 142.0万人
9位 スイス 88.4万人
10位 オランダ 85.2万人

(参考:三菱UFJ信託銀行「日本の富裕層マーケットに関する考察」)

日本には約330万人の富裕層が存在しており、世界の富裕層人口は3位につけています。総人口に占める割合では順位(日本は世界8位)がやや下がりますが、2005年からの推移を見ると富裕層は増加傾向にあります。

以下の調査では、純金融資産保有額が5億円以上を「超富裕層」、1億円以上5億円未満を「富裕層」と定義しています。

時期 富裕層の世帯数 超富裕層の世帯数
2005年 81.3万 5.2万
2007年 84.2万 6.1万
2009年 79.5万 5.0万
2011年 76.0万 5.0万
2013年 95.3万 5.4万
2015年 114.4万 7.3万
2017年 118.3万 8.4万
2019年 124.0万 8.7万
2021年 139.5万 9.0万

(参考:野村総合研究所「日本の富裕層は149万世帯、その純金融資産総額は364兆円と推計」)

上記の通り、日本の富裕層は2009年頃にやや減少したものの、2011年以降は増加傾向が続いています。

日本と米国の富裕層割合は大きな差がある

次に、世界トップの富裕層人口を誇る米国と日本の富裕層割合を比べてみましょう。

<米国の階層別・金融資産の保有割合>

階層の定義
(※1)
階層別の合計保有額
(※2)
階層別の保有割合
(※3)
超富裕層 350万ドル 以上 20兆ドル 47%
富裕層 100万ドル以上 11兆ドル 25%
準富裕層 50万ドル以上 5兆ドル 11%
アッパーマス層 10万ドル以上 6兆ドル 14%
マス層 10万ドル未満 2兆ドル 4%

(参考:三菱UFJ信託銀行「日本の富裕層マーケットに関する考察」)

<日本の階層別・金融資産の保有割合>

階層の定義
(※1)
階層別の合計保有額
(※2)
階層別の保有割合
(※3)
超富裕層 5億円以上 97兆円 6%
富裕層 1億円以上 236兆円 15%
準富裕層 5,000万円以上 255兆円 16%
アッパーマス層 3,000万円以上 310兆円 20%
マス層 3,000万円未満 656兆円 42%

(参考:三菱UFJ信託銀行「日本の富裕層マーケットに関する考察」)

(※1)個人が保有している金融資産の総額ごとに分類。
(※2)階層別(超富裕層・富裕層ごと)に属する人の金融資産の合計。
(※3)超富裕層からマス層までの金融資産を合計し、その合計を「階層別の合計保有額」で割った割合。

米国に比べると、日本は超富裕層や富裕層が保有している金融資産の割合が小さく、アッパーマス層やマス層の割合が大きくなる傾向にあります。米国の富裕層とは金融資産の保有割合に大きな差があることが分かります。

日本の富裕層割合が米国などと比べて少ない要因

日本の富裕層割合が少ない要因としては、「相続税」と「平均賃金」が挙げられます。

相続税の実質的な負担率が高い

他の主要国と比べると、日本の相続税は実質的な負担率が高い傾向にあります。以下、各国の相続税については、三菱UFJ信託銀行の「日本の富裕層マーケットに関する考察」を参考にしています。

<日本>
税率:10~55%
基礎控除:3,000万円+法定相続人×600万円
その他の控除:配偶者控除(※)

<米国>
税率:18~40%
基礎控除:1,158万ドル(約15億540万円)、相続人に配偶者を含む場合は2倍
その他の控除:配偶者は相続税を免除

<ドイツ>
税率:7~30%
基礎控除:配偶者は50万ユーロ(7,250万円)、子は40万ユーロ(約5,800万円)
その他の控除:配偶者は25.6万ユーロ(約3,712万円)、子は1~5万ユーロの特別控除(約145〜725万円)

米国やドイツと比べて日本は相続税率が高く、基礎控除もやや少なめです。また、大幅な非課税措置があるのは配偶者のみなので、子や孫などに資産を相続すると、税負担が重くなってしまう場合があります。

(※)正式名称は「配偶者の税額の軽減」、配偶者に対して「1億6,000万円」と「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額まで課税されない制度のこと。

OECDの中でも平均賃金が少ない

2021年の平均賃金を比べると、日本の水準はOECD加盟国(※)の中で24位です。

米国とは約3万5,000ドル(約455万円)の差があり、日本の賃金はOECD全加盟国の平均よりも低い水準です。富裕層割合が高い国に比べると、相対的に平均賃金が少ないので、労働収入から富裕層を目指すことが想定的に難しい傾向にあります。

(※)先進国を中心に加盟している、経済協力開発機構のこと。2023年4月時点では38ヵ国が加盟している。

日本では富裕層の高齢化も進んでいる

日本の富裕層の平均年齢は、過去20年間で約10歳上昇したといわれています。以下のデータは、海外のコンサルティングファームである「Capgemini」と「Merrill Lynch Wealth Management」のレポートを参考に、富裕層の年齢分布をまとめたものです。

富裕層の年齢層 日本の分布
75歳超 15%
66歳~75歳 32%
56歳~65歳 33%
46歳~55歳 13%
31歳~45歳 7%
31歳未満 1%

(参考:Capgemini & Merrill Lynch Wealth Management「ワールド・ウェルス・レポート 日本語版」)

医療などの進歩により、日本の平均寿命は1950年代から伸び続けているため、今後も富裕層の高齢化が進むかもしれません。

まとめ

日本の富裕層は2005年頃から増えていますが、米国の富裕層分布とは大きな差があります。経済状況や税制面から考えると、主な要因としては「相続税の負担率」と「平均賃金の低さ」が考えられるでしょう。日本には40代後半以上の富裕層が多く、このままの状況が続くとさらに高齢化が進む可能性があります。

※為替レート:1ドル=130円
※為替レート:1ユーロ=145円
※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。

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