世界がエネルギー価格の上昇や前例のない気象災害に見舞われている現在、サステナビリティ(※)への関心が一層高まっています。
本記事では、カナダの投資調査企業コーポレイト・ナイツが2023年1月に発表した最新版『2023年版世界で最も持続可能な100社(以下、グローバル100)』をもとに、企業のサステナビリティへの取り組みの重要性について考察します。
(※)持続可能性のこと。
グローバル100は売上高が10億ドル(約1320億円)を超える世界の上場企業6,000社以上を対象に、ESGの観点から各社の持続可能性を評価し、上位100社をランキング形式で選出したものです。
評価指標に用いられる25のKPI(重要業績評価指標)には、エネルギー・温室効果ガス排出量・廃棄物の生産性や、環境・社会への貢献度を意識した収益や投資、離職率といった包括的なサステナビリティに関わる項目が含まれています。
2023年のランキングは、原油価格の大幅な上昇が自然エネルギーや、電気自動車(EV)を含む地球に優しいといわれる事業の成長を促していることを裏付ける結果となりました。ランキングの上位10社を見てみましょう。
2023年 | 企業名 | 業種 |
---|---|---|
1 | シュニッツァー・スチール・インダストリーズ | 金属リサイクル |
2 | べスタス・ウィンド・システムズ | 風力発電 |
3 | ブランブルズ | 物流 |
4 | ブルックフィールド・リニューアブル・パートナーズ | 再生可能エネルギー |
5 | オートデスク | IT |
6 | エヴォクア・ウォーター・テクノロジーズ | 上下水道処理 ソリューション |
7 | スタンテック | コンサル |
7 | シュナイダー・エレクトリック | 電気機器・産業機器 |
8 | シーメンスガメサ・リニューアブル・エナジー | 再生可能エネルギー |
9 | 台湾高速鉄道 | 鉄道 |
10 | ダッソー・システムズ | IT |
(※『世界で最も持続可能な100社』から筆者作成)
前年から大きく順位を上げて1位の座に輝いたのは、米金属リサイクル企業シュニッツァー・スチール・インダストリーズです。
同社は1906年の設立以来、年間数百万トンもの材料を転用・再利用する一方で、カーボンフリー(※)の電力で施設を稼働させ、取水量(河川や水路から取り入れる水の量)の88%を再利用するなど、サステナビリティに対して積極的に取り組んでいます。
トップ10には、再生可能資源・エネルギー関連の事業を運営するブルックフィールド・リニューアブル・パートナーと、再生可能エネルギー製造企業シーメンスガメサ・リニューアブル・エナジー、台湾高速鉄道公社の3社が新たにランクインしました。
(※)企業や国家による温室効果ガスの排出量を差し引きゼロにすること。
グローバル100社の44%は欧州を拠点としており、アジア太平洋地域は22%でした。国別では米国(20%)、カナダ(11%)がリードしています。セクター別では、IT(20%)と金融(15%)の関連企業が上位占めています。
日本からはコニカミノルタ(50位/前年53位)、エーザイ(53位/前年32位)、リコー(80位/初登場)、積水化学工業(84位/前年22位)の4社がランクインしています。
リコーは環境を配慮した製品の売上比率の上昇、役員報酬に対するサステナビリティ指標の採用、再生可能エネルギーの導入推進など、政府との提携のもとに気候変動対策でリーダーシップを発揮する姿勢が高評価につながりました。
今回のランキングで順位を31も上げたイタリアのインテサ・サンパオロ銀行(59位)は、持続可能な社会的・環境的融資の拡大と情報開示を充実させ、持続可能な収益の比率を234%上昇させました。
対照的に、2022年の68位から圏外へ脱落した米半導体メーカーのアナログ・デバイセズは環境への配慮が悪化し、CEOと一般従業員の給与格差が2020年から倍増しました。
コーポレイト・ナイツは、グローバル100社について「持続可能性への移行に必要な製品・サービスを提供し、21世紀の新たな経済基盤を形成している」と分析しています。
グローバル100はサステナビリティの課題に対して真剣に取り組んでいる企業が社会への貢献を通じて、困難な時代においても自社の成長を着実に促している現状を反映しているといえるのではないでしょうか。Wealth Roadでは、引き続きサステナビリティ市場の動向についてレポートします。
※為替レート:1ドル=132円
※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買及び投資を推奨するものではありません。