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特別レポート:クレディ・スイスの問題が市場のボラティリティと不確実性に拍車をかける

特別レポート:クレディ・スイスの問題が市場のボラティリティと不確実性に拍車をかける

※インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供するコンテンツです。

〔要旨〕

  • クレディ・スイスの重要性:解決策が見つからない限り、システム上重要な大規模銀行が直面する問題は、再び世界金融危機のリスクを懸念するきっかけとなる可能性がある
  • 政府支援:政府および中央銀行が金融セクターの信頼性を補強するために介入する必要があるかもしれないと考える
  • 短期的なボラティリティ:高金利を背景に投資家心理が脆弱であることから、ボラティリティは高止まりすると予想する

何が起こったのか?

市場の反応

今後の見通し

投資戦略

注目点

何が起こったのか?

スイスの金融大手クレディ・スイス・グループの株価は3月15日の日中に 一時30%下落し、欧州金融セクター全体の下落を引き起こしました1。クレディ・スイスはここ数十年、一連のスキャンダルに巻き込まれ、最近では破綻した米アルケゴス・キャピタル・マネジメントと英金融会社グリーンシル・キャピタルへのリスクの高いエクスポージャーがありました2

しかし、今回の急落の引き金となったのは、クレディ・スイスの筆頭株主であるサウジ・ナショナル・バンクが、規制上の制限を理由にクレディ・スイスへの出資額を引き上げないとコメントしたことにあります(持ち株比率が10%に達したときに生じる規制上の負担を避けたいとの意向)3。3月14日には、遅れて発表されたクレディ・スイスの年次報告書には顧客からの資金流出が1,100億スイスフランに増加したことが示されていました。また、監査法人であるプライスウォーターハウスクーパースは、同行の報告に関する内部統制の有効性について「不適正意見」を記載していました。SVB(シリコンバレー銀行)の破綻後、預金の損失に対する感度が高まっている現在の環境では、投資家から大きな否定的な反応を引き出すことになりました。

市場の反応

クレディ・スイスは、2022年末時点で、総資産5,310億スイスフラン(総資産額でSVBの約2倍)、運用資産1兆2,940億スイスフランを有し、各国の規制監督当局・国際機関から構成される金融安定理事会によって「グローバルなシステム上重要な銀行」と位置付けられている大規模金融機関となっています4

クレディ・スイスの資産規模は、カウンターパーティーのエクスポージャーの大きさを示しており、2008年に約6,000億米ドルの総資産を有していたリーマン・ブラザーズとほぼ同程度の規模であると考えています。つまり今回の件は、2008年から2009年にかけての世界金融危機を想起させ、株式市場およびすべての資産クラスにおいて安全への逃避を引き起こしました。

株式市場の下落は、ソブリン債利回りの低下と金価格の上昇を伴い、ボラティリティに関連した指標は急上昇しました。金利先物は、FRB(米国連邦準備制度理事会)とイングランド銀行の次回会合での利上げの可能性が低下することを示唆しています。また、明日のECB(欧州中央銀行)会合の予想最大利上げ幅は、前回の50bpから25bpに変更されました5

今後の見通し

今回のクレディ・スイスの件が解決されようとも、マクロ環境における逆風が強まる中で、金融セクターがアウトパフォームするのは厳しい状況になる可能性があると考えています。預金流出を食い止めるためには預金金利を引き上げなければならず、それが利ざやを圧迫することになると思われます。

先週のSVBの破綻は、特定のビジネスモデルに特化し、他とは異なるように見えますが、次々と脆弱性をあぶりだす高金利環境がさらに問題を広げていく可能性があると考えています。世界金融危機以降、金利が歴史的な低水準で推移していることもあり、銀行の破綻は過去5年間でわずか8件(2000年以降の全563件のうち)しか発生していません6

しかし、規制当局と中央銀行が協調して金融システムをバックアップすることで、世界金融危機の再発を防ぐことができる可能性が高いと我々は考えています。例えば、スイス国立銀行(中央銀行)は3月15日深夜、必要であればクレディ・スイスに流動性を供給することを発表しました。しかし、短期的には投資家心理は脆弱なままであり、このような事象が市場の回復の芽を摘んでしまう可能性があるとも予想しています。より広い意味では、金融セクターとリスク資産については、政府や中央銀行がこれらの問題のさらなる拡大を防ぐために強い決意を固めるまで、弱含む状態が続くと予想しています。

投資戦略

当面は、米国のFRBによる政策の不確実性や、銀行の問題がよりシステミックになるのではないかという懸念により、ボラティリティが高まると予想されます。市場心理の悪化に伴い、2月末にマクロ・フレームワークを後退期に設定しました。当面は、株式よりも債券、リスク・クレジットよりも高格付けクレジット、さらにディフェンシブなセクターやファクターなど、モデル・ポートフォリオにおいてよりディフェンシブな姿勢をとることを選好します。しかし、FRBが一時停止ボタンを押せば、世界的にリスク選好度が高まることが予想されます。

注目点

リスクは、銀行セクターの問題がシルバーゲート、シリコンバレー銀行、シグネチャー銀行、クレディ・スイスだけでなく、より広範囲に及んでいることです。私たちは、銀行セクターが大きな逆風にさらされ、特にクレジット・デフォルト・スワップが他の大手金融機関に波及する可能性があるため、その動向を注視していくつもりです。

もう一つのリスクは、FRB(米国連邦準備制度理事会)が金利引き上げの「一時停止ボタン」を押したり、すぐに緩和的な政策に移行するには、今後のインフレ緩和の度合いは満足いくものではないかもしれません。引き締めサイクルの長期化や新たなサイクル開始の場合、銀行セクターへのより強いプレッシャーとなり、景気後退リスクの高まりや、持続可能な景気回復開始のタイミングの遅れを招く可能性があります。

1.出所:Refinitive、2023年3月
2.出所:Makortoff, K. and Pegg, D., Crooks, kleptocrats and crises: a timeline of Credit Suisse scandals, The Guardian、2002年2月21日(https://www.theguardian.com/news/2022/feb/21/tax-timeline-credit-suisse-scandals)
3.出所:Refinitive
4.出所:Credit Suisse Annual Report
5.出所:Refinitiv、2023年3月15日
6.出所:連邦預金保険公社

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

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