ホーム > お金の使い方 > つみたてNISA(積立NISA)の銘柄はいくつ買うのが正解?
つみたてNISA(積立NISA)の銘柄はいくつ買うのが正解?
(画像=nfuru/stock.adobe.com)

つみたてNISA(積立NISA)の銘柄はいくつ買うのが正解?

資産運用を始めるにあたって、「つみたてNISA」の利用を考えている方は多いでしょう。つみたてNISAでは投資信託・ETF(上場投資信託)を定期的に積み立てますが、銘柄をいくつ買うのが正解なのでしょうか。本記事では制度の仕組みを踏まえて、つみたてNISAの効率的な運用方法や注意点を紹介します。

つみたてNISAの銘柄はいくつ買うのが正解?

結論から言うと、つみたてNISAで毎月積み立てる銘柄数に正解はありません。「短期間で資産を増やしたい」「じっくりと老後資金を貯めたい」「リスクをできるだけ抑えたい」など、人によって資産運用の目的や方針が異なるためです。

例えば、20年間で資産を300万円まで増やしたいAさんと、10年間で資産を300万円まで増やしたいBさんがいるとしましょう。どちらも毎月1万円を積み立てる予定です。また、分かりやすくするために手数料は含めていません。

Aさんの場合は、一つの銘柄をコツコツと積み立てて小さなリターンを重ねれば、目標を達成できる可能性があります。毎月1万円を20年間続ければ、それだけで240万円になり、残り60万円分のリターンを出すことで目標額に到達できます。

一方で、Bさんは年間20万円の利益が目標になるため、リスクを負って高いリターンが期待できる投資を行わなければなりません。毎月1万円を10年間続けても120万円にしかならないため、残り180万円分のリターンを出す必要があります。このリターンを出すために、ハイリスクだけどハイリターンが期待できる複数の銘柄を積み立てることにしました。

このように、状況次第で適した商品や銘柄数は異なるので、つみたてNISAでは以下の点を意識してプランを考えることが大切です。

<運用プランを考えるときに意識するポイント>
・投資の目的
・現在の資産状況
・投資の知識
・リスク許容度

上記の点を踏まえて、ここからは複数銘柄を買う効果や注意点を見ていきましょう。

つみたてNISAで複数銘柄を買う効果

つみたてNISAで複数銘柄を買うと、メリット・デメリットの両方が生じます。いずれも運用プランに関わるので、一つずつ確認していきましょう。

複数銘柄を買うメリット

分かりやすいメリットとしては、リスクの分散が挙げられます。

投資では、「資産・地域・時間」を分散させるほど損失のリスクが抑えられます。例えば、投資地域を日本や米国、欧州などにバランス良く分けると、いずれかの地域が経済危機に陥っても直接的なダメージは受けません。

<分散投資のイメージ>
資産の分散:株式や債券、コモディティなど、さまざまな資産に投資をする。
地域の分散:日本とアメリカなど、投資先の地域を分ける。
時間の分散:積立のタイミングを毎月1回などにすることで、高値で購入するリスクを抑えられる。

また、つみたてNISAの対象商品である投資信託とETFは、一つの銘柄でさまざまな資産に投資できる商品です。ファンドにもよりますが、株式と債券に投資をするもの、世界中の株式に投資をするものなどがあるので、複数銘柄を組み合わせると資産の分散効果をさらに高めやすくなります。

その他にも、投資の経験を増やせる点もメリットといえます。購入銘柄を増やすと、その分だけ情報収集や分析が必要になるため、実践的な知識・スキルを身に付けられるでしょう。

複数銘柄を買うデメリット

つみたてNISAの対象商品である投資信託・ETFは、必ずしも分散効果が高いとは限りません。特定の資産や地域に偏っている銘柄もあるので、組み合わせ次第ではリスクが高くなる恐れがあります。

また、つみたてNISAの対象商品は、金融庁の基準を満たした銘柄のみです。2023年2月9日時点で221銘柄が認可されており、各金融機関はこの中から取扱商品を選んでいます。そのため、一般的な投資信託やETFに比べると、投資先の選択肢が減ってしまいます。

そのため、複数銘柄を運用する場合はつみたてNISAを利用しないのも選択肢になります。課税口座(一般口座・特定口座)を使うと20.315%の税金は課されますが、その代わりに以下のメリットを得られます。

<課税口座で複数銘柄を運用するメリット>
・株式やREITなども取引できる
・投資対象の投資信託やETFが増える
・課税口座全体での損益通算ができる
・1年間の運用成績がマイナスだった場合に、その損失を翌年以降に繰り越せる

投資の目標や資産状況を踏まえて、ご自身に向いている運用プランを考えてみましょう。

つみたてNISAで複数銘柄を買う際のポイント

つみたてNISAで複数銘柄を買う際には、制度の仕組みを活かすプランを考えることが大切です。どのような方針が望ましいのか、ここからは複数銘柄を買うときに意識したいポイントを見ていきましょう。

ポイント1.投資先の地域が異なる銘柄を選ぶ

投資先の地域を分散させることは、リスク分散の基本です。地政学的リスクを抑えるために、さまざまな組み合わせを考えてみましょう。

2023年2月時点で認可されている銘柄については、以下のような投資地域があります。

<つみたてNISAにおける主な投資地域>
・日本国内(日経平均株価やREITに投資するファンドなど)
・米国(米国の個別株や株価指数、債券に投資するファンドなど)
・先進国(米国や欧州などの先進国に投資するファンドなど)
・新興国(新興国の株式に投資するファンドなど)
・全世界(世界中の株式や債券に投資するファンドなど)

手っ取り早く投資地域を分散させたい方は、全世界の株式を中心に運用するファンドへの投資を検討しましょう。ただし、実際の投資先が偏っている可能性もあるので、各銘柄のポートフォリオや運用方針は事前に確認することが大切です。

ポイント2.類似商品なら手数料が安いファンドを選ぶ

類似商品が見つかった場合は、できるだけ手数料が安いファンドを選ぶことも大切です。

つみたてNISAの対象商品はノーロード(※1)であり、さらに信託報酬(※2)にも上限があります。余計な手数料を抑えやすいですが、ファンドによってコストの負担は変わります。

(※1)購入時手数料が無料のファンドのこと。

(※2)ファンドを管理・運用してもらうためのコスト。

<投資信託やETFにかかるコスト>
・信託報酬
・監査報酬
・売買委託手数料
・信託財産留保額 など

上記の中でも「信託報酬」は、ほとんどの投資信託・ETFにかかるコストです。一般的には年率で表記されるため、小さな違いに感じるかもしれませんが、信託報酬が1.0%変わるだけでもコストには大きな差が生まれます。

<信託報酬による保有コストの違い>
購入金額×信託報酬×消費税÷365日=1日あたりの信託報酬
1日あたりの信託報酬×365日=年間の信託報酬

【ケース1】
購入金額が100万円、信託報酬が年率0.5%の場合
100万円×0.5%×1.1÷365日=約15円(1日あたりの信託報酬)
15円×365日=5,500円(年間の信託報酬)

【ケース2】
購入金額が100万円、信託報酬が年率1.5%の場合
100万円×1.5%×1.1÷365日=約45円(1日あたりの信託報酬)
45円×365日=16,500円(年間の信託報酬)

1年間で考えると、信託報酬の差は10,000円以上になります。

(※上記は基準価額に変動がなく、その他のコストも発生しない場合のシミュレーション。)

信託報酬は差がつきやすいコストなので、類似商品の年率は比較しておきましょう。

ポイント3.人気ランキングだけで選ばない

投資信託の人気ランキングは、パフォーマンスが良い銘柄を手っ取り早く確認できる情報です。参考になる情報もありますが、適した投資信託は人によって異なるため、人気ランキングだけで選ぶことは避けましょう。

そもそも、これまでのパフォーマンスが優れているからと言って、この先も同じ状態が続くとは限りません。短期間の実績だけで投資先を選ぶと、高値で購入してしまうリスクも高まります。

そのため、人気ランキングの情報はあくまで参考程度に留めておき、実際の投資先は自分で判断しましょう。

ポイント4.少ない本数で分散投資できる銘柄を選ぶ

分散投資によってリスクを抑えるために、闇雲に複数銘柄を保有してもリスクの分散につながっていない場合があります。

例えば、日経平均株価とTOPIXをベンチマークにする銘柄を組み合わせても、複数の銘柄を保有することによる分散効果は高くありません。投資資産(株式)や投資地域(日本)が被っている影響で、これらの銘柄は同じ動きをする可能性が高いためです。

分散投資は多くの商品を購入することではなく、あくまでリスクを分散させる手法です。以下のように組み合わせ方を工夫すれば、少ない本数でも分散投資の効果を高められます。

<分散効果を高める商品選びのポイント>
・「投資資産」と「投資地域」が異なる銘柄を選ぶ
・異なる値動きの銘柄を組み合わせる

保有銘柄の数が多くなると分析や管理が煩雑になり、想定していないリスク負ってしまう可能性があります。ご自身が把握できる範囲の本数に留めることで、

つみたてNISAにおけるリスク許容度の考え方

つみたてNISAの運用では、リスク許容度の設定にも取り組みましょう。リスク許容度とは、「どれくらいの損失なら耐えられるか」の度合いを具体化したものです。

リスク許容度を設定すると、リスクを抑えながら目標達成に近づける銘柄を見極めやすくなります。そのため、以下の観点から状況を整理し、自身のリスク許容度を判断しましょう。

<リスク許容度を判断するための項目>
1.年齢:投資に失敗しても修正できる年齢か
2.収入:毎月いくらまでなら無理なく積み立てられるか
3.資産:余剰資金がどれくらいあるか
4.家族構成:現時点でどれくらいの支出があるか、家族が増える予定はないか

上記はあくまで目安ですが、参考にしながらご自身のリスク許容度に合った投資信託を見極めましょう。

複数銘柄を買う際のポートフォリオ例

つみたてNISAで複数銘柄を買う際には、どのようなポートフォリオを作れば良いのでしょうか。ここからは目的別に分けて、ポートフォリオの考え方を紹介します。

リスクをできるだけ抑えたい場合

損失のリスクを抑えたい場合は、債券型投資信託が選択肢になります。国内債券が中心のファンドでポートフォリオを組めば、株式中心のファンド大きな損失にはならないでしょう。リスクを抑えながら運用したい場合は、以下のようなポートフォリオがあります。

<ポートフォリオ例>
・国内債券と海外債券を組み合わせる
・全世界株式や債券などに分散投資をする
・バランス型の比率を増やす

少ない本数で分散投資をしたい方には、さまざまな資産に投資をする「バランス型」が向いています。銘柄にもよりますが、バランス型の投資信託は株式や債券、不動産など多くの資産にまとめて投資できるので、高い分散効果を期待できます。

ハイリターンを狙いたい場合

つみたてNISAの対象商品の中でハイリターンを狙いたい場合は、株式中心の投資信託が選択肢になります。特に新興国株式などはリスクが高くなる代わりに、価格変動が大きくなることでリターンが期待できます。

株式を中心に運用している投資信託を選ぶ際には、ベンチマークとなる指数にも目を向けましょう。例えば、米国の代表的な500銘柄で構成される「S&P500」と、米国の優良銘柄30種類で構成される「ダウ平均」とでは構成銘柄が異なります。

また、新興国株式で構成される投資信託も、銘柄によってベンチマークが異なるので、どのような指数を基準にしているのか確認しておきましょう。

円安・円高に備えて資産運用をしたい場合

投資信託で円安や円高に備えたい場合は、「為替ヘッジあり」のファンドを選びましょう。為替ヘッジは、為替取引などを利用することで、為替の影響を抑えてくれます。この為替ヘッジあると「為替ヘッジなし」のファンドと比べて、コストが高くなります。そのため、相場の状況を踏まえ、為替ヘッジが費用なのかどうかを判断する必要があります。

つみたてNISAの銘柄を変更するときの注意点

複数銘柄を買うために、積立設定を細かく調整している方もいるでしょう。つみたてNISAの銘柄変更は簡単にできますが、状況によっては大きな損につながることもあります。ここからは、つみたてNISAで銘柄変更をするときの注意点を紹介します。

注意点1.積立をやめるとドル・コスト平均法の効果がなくなる

ドル・コスト平均法とは、購入金額と購入頻度を一定に保つことで、金融商品の平均購入単価を引き下げる手法です。「高いときに少なく買う」「安いときに多く買う」を定期的に行うので、ドル・コスト平均法には高値で購入してしまうリスクを抑える効果があります。

つみたてNISAは事前に積立設定を行うため、意識せずにドル・コスト平均法を実践している方も多いでしょう。しかし、ドル・コスト平均法は長期積立投資が前提であり、短期間でやめると高値で購入したままで終わることがあります。

そのため、すでに一定の金額・頻度で積み立てているファンドは、そのままの設定で積み立てることを考えてみましょう。

注意点2.値上がりしているファンドへの変更はリスクがある

リアルタイムで値上がりしているファンドを見つけると、積み立てる銘柄を変更したくなる方もいるでしょう。しかし、その上昇がいつまで続くのかは分かりません。

金融商品の上昇には、必ず最高点となる「天井」があります。購入するタイミングと天井が重なると、しばらくしてから下落トレンドに移る可能性があるので、損失を被るかもしれません。

そのため、基準価額が上昇しているファンドを見つけた場合、いったん冷静になってから相場の状況と銘柄の分析を行いましょう。

注意点3.選択肢が少ないときは金融機関の変更も視野に入れる

つみたてNISAの対象商品は、利用する金融機関によって異なります。150本以上の銘柄をそろえている金融機関がある一方で、厳選した十数本しか取り扱っていない金融機関も少なくありません。

もし選択肢が少ないときには、金融機関の変更も考えましょう。商品ラインナップが充実した金融機関に変更をすると、投資先の選択肢が増えるだけではなく、キャンペーンによってポイントがもらえる金融機関もあります。

NISA口座の金融機関変更には以下のようなルールがあります。

<NISA口座の金融機関変更における主なルール>
・変更手続きができるのは1年に1回まで
・1回でも非課税投資枠を使っていると、その年には金融機関を変更できない
・前年10月1日から、希望する年の9月30日までに手続きをする必要がある

金融機関の変更は手間もかかるので、つみたてNISAの解約前に手順やルールを確認しおきましょう。

投資の目的や資産状況に合わせて、つみたてNISAの積立銘柄数を考えよう

つみたてNISAの銘柄数は、投資の目的や資産状況に合わせることが重要です。もともと多くの投資信託には分散効果があり、銘柄数が増えるほど分析・管理が難しくなるため、集中的に1本の銘柄を積み立てる選択肢もあります。金融機関の変更によって選択肢が増えることもあるので、さまざまな方法を模索しながらご自身に合った運用方針を考えましょう。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。

本サイトの記事は(株)ZUUが情報収集し作成したものです。記事の内容・情報に関しては作成時点のもので、変更の可能性があります。また、一部、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供している記事を掲載している場合があります。 本サイトは特定の商品、株式、投資信託、そのほかの金融商品やサービスなどの勧誘や売買の推奨等を目的としたものではありません。本サイトに掲載されている情報のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はご自身の判断でなさるようお願いいたします。 当サイトご利用にあたっては、下記サイトポリシーをご確認いただけますようお願いいたします。