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中国経済と米国のインフレ状況に見出される明るい兆し

中国経済と米国のインフレ状況に見出される明るい兆し

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〔要旨〕

中国経済の明るい兆し:12月の国内総生産は、中国の経済活動の再開が予想以上に経済にプラスに働いたことを示唆

米国のインフレが緩和:12月の米消費者物価指数の上昇率(前年同月比)は6カ月連続で鈍化

債務上限が迫る:イエレン米財務長官は、1月19日までに米国連邦債務が法定上限を突破する可能性があると警告

中国に明るい兆しが見えてきた

欧米における景況感の改善

米国のインフレは好ましい方向に進んでいる

迫り来る米国連邦政府の債務上限

今週のイベント:日銀金融政策決定会合と決算シーズン

私たちは、2022年という「ひどい年」から、確実に新しいページをめくったといえるでしょう。2023年は、最初の2週間で株価と債券価格が世界的に上昇し、素晴らしいスタートを切りました。

中国に明るい兆しが見えてきた

特に注目すべきは中国株で、1月最初の2週間で同国の株式市場は2けたのリターンを記録しました 1 。中国の経済活動の再開とゼロコロナ政策の解除により、投資家の興奮は明らかに高まりました。

2022年秋に中国株式市場が上昇に転じて以来、誰もが抱いていた疑問は、皆が待ち望んでいる力強い経済成長はいつになったら実現するのか、ということでした。しかし、それは間近に迫っているかもしれません。国内総生産(GDP)の期待は低く、2022年のGDPは2021年よりもはるかに低いと思われましたが、3%と市場予想を上回る結果となりました 2 。2022年10-12月期の成長は、経済活動再開による新型コロナウイルスの感染拡大といった負の影響を受けつつも、予想を上回りました。12月は実際に心強い内容で、12月初旬に始まった経済活動の再開が、予想以上に経済にプラスとなったことを示唆しました。

そのため私は、さまざまな状況が予想された2023年1-3月期の中国経済について、今はより楽観的な見方をしています。というのも、1月22日から15日間続く旧正月は、諸刃の剣になりそうだからです。明るい面をみると、この非常に重要な祝日を家族と過ごすために人々が帰省するため、消費の増加が見込まれることが挙げられます。一方、旅行者の増加により新型コロナウイルスの感染が拡大し、感染の大きな波が起こる可能性があり、その結果消費の落ち込みやサプライチェーンの混乱が生じる可能性があります。しかし私は、12月の経済活動の結果から、旧正月は中国経済にとってマイナスよりもプラスに働くのではないかと考えています。

私の予想では、最悪のシナリオとなった場合でも、中国経済は、2023年1-3月期の経済活動が低調なものの、家計消費の拡大により4-6月期から力強い成長が始まると考えています。全体として私たちは、2023年の中国GDP成長率を5%以上と予想しています。

欧米における景況感の改善

しかし、改善がみられるのは中国だけではありません。欧州でも景況感は改善しつつあります。例えばドイツのZEW景況感指数では、エネルギー価格の低下と中国経済再開への期待感によって、ドイツの景気に関する見通しが劇的に改善したことが示されています 3

米国経済の先行きについても、景況感が改善しているとの声が聞こえてきており、もしかすると米国は景気後退を回避できるかもしれません。フィラデルフィア連邦銀行のハーカー総裁は先週の講演で、このところ強まってきた見方を総括し、「GDPの伸びは緩やかになるだろうが、景気後退は予想していない…心強いのは、利上げを行い、インフレが冷え込む兆候が見られているにもかかわらず、米国経済が全体として比較的健全な状態を保っていることだ」と述べました 4

米国のインフレは好ましい方向に進んでいる

2023年に入り、米国のインフレも好ましい動きをみせています。先週発表された12月の米消費者物価指数は、市場予想通り、インフレが引き続き緩和的に推移していることを示しました。12月の同指数は、前年同月比でみた上昇率が6カ月連続で鈍化、前月比では-0.1%と、2020年5月以来、初めての前月比低下を記録しました 5

しかし、現状は米連邦準備理事会(FRB)のインフレ目標には遠く及ばず、また2023年中に達成することはないと、私は考えています。驚きはありませんが、財価格がコアインフレの低下をけん引しているものの、サービス価格や住居費はまだ高水準にあり、特にサービス価格はより長期にわたり高止まりする可能性が高いことが伺えます。しかし重要なのは、インフレが好ましい方向に動いており、それが今後も続くのではないかと予想されることです。投資家が聞きたいのは、FRBが政策金利の引き上げを一時停止するのに十分なインフレの緩和の度合いはどの程度なのか、ということです。これは、短期的には間違いなく最も重要で、答えを与えられなければならない質問です。私は、このところみられている進展が今後も続けばFRBは満足し、今後3カ月程度で政策金利の引き上げを停止する可能性もあるのではないかと考えています。

迫り来る米国連邦政府の債務上限

しかし、そのような状況を台無しにする問題があります―米国連邦政府の債務上限です。イエレン米財務長官は先週、1月19日までに米国連邦債務が法定の上限に達する可能性があると警告しました。ただしこれは、米国政府がその日をもって債務の支払いや返済ができなくなる訳ではなく、政府の運営維持のために、特別な資金管理措置に着手する必要があるだろうということを意味しています。イエレン財務長官は、連邦政府がこれらの特別措置を使い切る前に、債務上限を速やかに引き上げるよう議会に促しましたが、この特別措置による資金は6月上旬には枯渇する可能性が高いとみられます。

債務上限は、以前から2023年のリスクとして投資家の注目を集めていましたが、1週間以上前に行われた米下院議長選以降、その重要性が増しています。下院議長選で15回も投票が行われることは予想していませんでしたが、これは、米議会での債務上限の引き上げ審議が通常より困難になりうることを示唆しているように思われます。

もし米国政府が期限内に債務上限を引き上げることができず、特別措置が必要となった場合、市場にはどのような影響がありうるでしょうか。こうした事態は2011年の夏にも起こり 6 、当然ながら、株式は大幅に売られました。驚いたことに、投資家が「資金の安全な逃避先(セーフヘイブン)」となる資産クラスを求めたため、それ自体利払いが不可能となる恐れがあるにもかかわらず、米国債価格は上昇しました。株式では、ボラティリティの低い銘柄がアウトパフォームしました。金価格も上昇し、ハイイールド債は価格が下落しました。今夏も、債務上限引き上げの合意がなされない場合には、同じシナリオが繰り返されるのではないかと予想しています。

真のリスクは、これが、すぐに解決可能かつ短期的な危機にとどまらない可能性があるということです。この問題が解決しないまま長引けば長引くほど、株式の売りが大きくなり、国債の値上がり幅が大きくなる可能性があります。また当然ながら、米国が景気後退に陥る可能性も高くなります。2011年の債務上限交渉時とは、関係者の多くの顔ぶれが異なるため、この問題がどのように展開するか予測するのは困難です。

今週のイベント:日銀金融政策決定会合と決算シーズン

今週は、1月18日の日銀金融政策決定会合が、日本銀行にとって非常に重要な政策転換の始まりになると予想されることから、多くの注目が集まっています。日銀は、2022年来の世界的な金融引き締めの積極化の流れの中で、金融緩和を実施する数少ない中央銀行となっていましたが、日銀自身が引き締めに乗り出すのではないかとの懸念もあります。しかし、私たちはそうは考えていません。12月20日に日銀が長期金利の許容変動幅をプラスマイナス0.25%から同0.5%に拡大して以来、日本国債に対する売り圧力が急激に高まっています。実際1月13日には、新発10年物国債利回りが、許容変動幅の上限の0.5%をわずかに上回りました 7 。12月の許容変動幅の変更以降、日銀はイールドカーブの上昇圧力を抑えるために、国債買い入れを始めとするオペレーションを繰り返し行っていますが、これは持続可能な対応とは思われません。

日銀は、外需が大幅に減速していることから、日本経済を支え続ける必要があると認識している可能性が高く、私たちは、今週の日銀会合で金融引き締めが実施されるとは考えていません。しかし、イールドカーブ・コントロールなどの政策修正の可能性は確かに存在しており、私たちはそれを注視していく考えです。

また、決算シーズンの開始も注目されます。これは、特定の企業の業績について知ることができるという点で重要なだけでなく、短期的な予想に関するガイダンスになるという点でも重要です。さらに、決算説明会で語られる内容から、より一般的な経済的洞察を得ることもできます。従って、私は今後数週間、開催されていく数多くの決算説明会に細心の注意を払うつもりです。今後のリポートで紹介していく予定です。

執筆協力:デイヴィッド・チャオ、木下智夫、ブライアン・レヴィット

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

  1. 出所:MSCI、MSCIチャイナ・インデックスは2023年1月13日に年初来12.1%上昇
  2. 出所:中国国家統計局、2023年1月17日
  3. 出所:欧州経済研究センター(ZEW)、2023年1月17日
  4. 出所:フィラデルフィア連邦銀行、“The Local and National Economic Outlook”、2023年1月12日
  5. 出所:米国労働統計局、2023年1月12日
  6. 出所:ブルームバーグ、2011年の債務上限問題が議論されていた期間中(2011年7月~9月)、S&P500指数は-15.1%、S&P500ローボラティリティ指数は-5.4%、ブルームバーグ米国債指数は6.7%、ブルームバーグハイイールド債券指数は-6.2%、金価格は9.2%のリターンを記録
  7. 出所:ブルームバーグ、2023年1月13日

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