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中国も緩和策を発動、今後の政策対応の焦点は財政政策へ
コロナウィルス問題が全世界で深刻化する中、FRB(米連邦準備理事会)を始めとする各国の中央銀行が協調しての緊急対応策が打ち出されました。これは、コロナウィルス問題が各国経済に短期的に深刻なダメージを及ぼすことが明確になる状況下で、企業の資金繰り悪化や金融市場の機能低下を食い止める必要が生じたためです。
15日に決定されたFRBの政策は、現時点で求められる対応策を広く網羅するものでした。具体的には、①事実上のゼロ金利政策の採用(政策金利であるFFレートの誘導目標を1.00~1.25%から0.00~0.25%へと一気に引き下げ)、②量的緩和策の実施(今後数ヵ月間で米国債・住宅ローン担保証券(MBS)を合わせて7,000億ドル買入れ)、③金融機関に対する窓口貸出金利の大幅引き下げ(引き下げ幅は150ベーシスポイント)、④預金準備率のゼロ%への引き下げ、が発動されました。一方、FRB、ECB(欧州中央銀行)、日本銀行など中央銀行6行は、米ドル・スワップ取引を通じてFRBが供給するドル資金を用いた市場への資金供給策を拡充すると発表しました。この対策には、従来1週間物に限っていた資金供給に3ヶ月物(84日物)を加える等の措置が盛り込まれました。先週にECBが発表した措置も金融市場や金融機関に潤沢な資金供給を行う政策であり、本日前倒しで実施される日本銀行の金融政策決定会合でも同様の措置が盛り込まれると見込まれます。また、中国でも13日、中国人民銀行が法定預金準備率(RRR)を0.5~1.0%ポイント引き下げると発表しました。大手銀行ではRRRがさらに1%ポイント引き下げられます。本日(16日)に実施されたMLF(中期貸出制度)による1,000億元の資金供給と合わせて、潤沢な資金が供給されます。
今回のFRB等の行動は、現時点では、思い切った対応であると前向きに評価できるでしょう。米国が大幅な利下げを実施したにもかかわらず、ドル円為替レートがこれまでのところ円高に振れずに比較的落ち着いているのは、中央銀行当局による国際協調が金融市場に対して一定の安心感をもたらしたためと考えられます。もっとも、米国政府やスペイン政府が国家非常事態宣言を発令する中で、欧米でのコロナウィルス感染拡大に伴う悪影響は足元でも深刻化し続けており、今後、企業収益へのさらなる悪影響は避けられません。また、FRB等が公表した今回の措置で、政策対応に打ち止め感が出てしまったことも事実です。こうした環境下、金融市場では実体経済面での悪材料が継続することで、ボラティリティーの高い状態が続く公算が大きいとみられます。今回のFRBの対応に対して、コマーシャルペーパー(無担保約束手形)の購入が含まれていない点等について失望する見方も一部にはありますが、FRBはコロナウィルス問題の深刻化に対してこれまで極めて柔軟に対応しており、今後金融市場の動揺が拡大するような場合には、株式やコマーシャルペーパーの買い入れを含めた新たな対応が視野に入ると思われます。
各国の金融当局が次々と対応策を打ち出したことで、政策対応の焦点は財政面での対応に移ります。中国政府による2020年予算はかなり大規模な景気刺激策を盛り込んだ内容になると期待されます。その一方で、大統領選を前にして与野党が対立しやすい米国や厳しい財政ルールを自らに課すEU(欧州連合)において、どの程度しっかりした景気刺激策が実施されるかが短期的な金融市場の行方を左右すると考えられます。
木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト
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MC2020-036