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【臨時レポート】金融市場の動揺が続く

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グローバル金融市場における動揺が止まりません。昨日(3月11日)のS&P500株価指数の前日比下落率は4.9%に達し、3月10日の上昇分(4.9%)が吹き飛ばされる形となりました。米長期金利が低下するなど市場ではリスク・オフの動きが強まりました。金融市場における動揺が続いた背景として最も大きかったのは、米国のコロナウィルス問題に対する財政政策対応についての期待が剥落したことでした。これに、WHO(世界保健機関)が新型コロナウィルスについて「パンデミック(世界的な大流行)と認定したことが追い打ちをかけました。

一昨日(3月10日)は、これまで感染問題の悪影響が限定的であるとの見方を示していたトランプ大統領が、財政政策について前向きの発言をしたことが株価上昇の原動力となりました。しかし、昨日は財政パッケージを巡る与野党間の早期合意が困難であることが明確となり、金融市場での期待感が失望に変わったと言えます。私は、11月の大統領選挙を控えてトランプ政権を擁する与党共和党と野党民主党の対立は先鋭化しやすく、与野党合意は容易ではないと考えていました。ただ、感染問題の深刻化が明らかになるなか、トランプ政権の呼びかけに対して野党民主党がすべての対策に反対するとは考えにくく、最終的には限定的な規模での政策パッケージが成立する公算が大きいと考えられます。これに対して、米国だけではなく、欧州でも大規模な財政政策対応を迅速に実施することが困難であると認識が広がっています。欧州では、 EU(欧州連合)が課す財政ルールが厳しいことから、主要国が積極的な財政政策を遂行することには困難が伴います。財政ルールを一時的に変更することは選択肢ですが、加盟国の合意によってルールを変更することには相当な時間がかかります。ラガルドECB(欧州中央銀行)総裁が欧州政府に対して財政面からの対策実施を切実に訴えているのは、硬直的な財政ルールのもとでの積極財政策の採用が容易ではない中、欧州の指導者による政治的決断を求めていると理解すべきでしょう。

コロナウィルスという、いまや実体経済に大きな減速圧力をもたらしている問題に対して財政面での対応が限られる中、金融当局への負担は強まらざるを得ません。本日(3月12日)に開催されるECB理事会では、金融機関への資金供給に加えて、政策金利の引き下げが実施される可能性が高まっています。3月17-18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、政策金利の50bp(ベーシスポイント)引き下げの可能性が高まっており、金融市場の動揺が続けば、4月のFOMCでさらに追加利下げが実施されるとみられます。

欧米ではコロナウィルス感染者の増加が続いており、学校の休校や大きな規模のイベント中止、さらに一部地域での移動制限措置などによって経済活動が停滞する可能性が高まっています。こうした状況下で今後の金融市場ではボラティリティーが高い状況が継続するとみられますが、各国当局が適切な財政・金融政策を積み重ねていくことが、市場における動揺の抑制につながっていくと想定できるでしょう。投資家は中長期的な投資スタンスとして、リスク資産を含めた分散投資を継続すべきと考えられます。

木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト

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