ESG投資のリスクや機会を調査できる「ESG投資分析・評価プラットフォーム」

「グリーンウォッシュ(Green Wash/ごまかしや上辺だけの環境投資)」を規制する動きが活発になる中、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資のリスクや影響、機会を定量化し、特定するためのプラットフォームが次なるトレンドとして注目されています。

世界で広がるグリーンウォッシュは「投資先の見極め」が重要

世界的なサステナビリティ意識の高まりを受け、世界のESG資産は2022年に総額41兆ドル(約5,781兆円)、2025年に総額50兆ドル(約7,050兆円)を突破するとBloomberg Intelligence(ブルームバーグ・インテリジェンス)は予想しています。これは、世界の運用資産総額の3分の1に匹敵する数字です。

一方で、自社の製品やサービスを環境上の利点があるかのように誇張、あるいは虚偽する企業や組織が増えています。米市場調査企業Harris Poll(ハリスポール)がグローバル企業のエクゼクティブ1,491人を対象に実施した調査によると、そのうち58%が「自社が何らかの形でグリーンウォッシュを行っている」と回答しました。

ESG投資の信頼性や透明性を高め、投資家が安心してESG市場に参加できる環境を整備するために、各国の規制当局はグリーンウォッシュに対し、これまで以上に厳しい姿勢で臨んでいます。

規制強化に向けた動きは、実績を伴わないESG関連の広告や金融商品を一掃し、市場に長期的な利益をもたらすことが期待されている反面、ESGへの投資規模が大幅に縮小する可能性が指摘されています。

投資家はこのような背景を踏まえ、ESGを明確に企業理念に取り入れ、かつ持続可能な商業活動から収益を上げている投資先を見極めることが、これまでよりも重要になるでしょう。

適切なデューデリジェンスに役立つ「ESG格付け」

投資家がESG投資を通して社会全体にポジティブな影響を与え、同時に収益化を狙う上でカギを握っているのは適切なデューデリジェンス(Due diligence/投資を行うにあたり、投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを調査すること)です。

近年は効果的なデューデリジェンス・ツールの一つとして、「ESG格付け(ESG Rating)」が採用されています。ESG格付けとは、企業のESGリスク耐性を長期的な視点から評価したもので、投資の機会や投資先が将来直面する可能性のある、長期的なリスクを理解するのに役立ちます。

ESGリスクは事業体に影響を及ぼし得るESG関連の非財務リスクのことで、「サステナビリティ・リスク」とも呼ばれています。代表的なESG格付けに、米金融サービス企業MSCIの「MSCI ESGスコア」や、米格付企業S&Pの「S&PグローバルESGスコア」などがあります。

ESG投資分析・評価プラットフォームとは

ESG格付けの需要が拡大する一方で、投資家がESG投資に関する洞察力を深めると同時に、投資先の選定や迅速な意思決定、リスクヘッジに役立つデジタルツールを開発・提供する動きが活発化しています。より包括的で高度なESG分析や予想を求める投資家の声を反映したものです。

現在注目されている2つのプラットフォームを見てみましょう。

Investable World(インベスタブル・ワールド)

国際投資調査企業Morningstar(モーニングスター)が提供する、データ主導型ESG分析・評価プラットフォームです。世界700以上のファンドのパフォーマンスやESGリスク、持続可能なインパクトに関するデータを分析することにより、投資家が自身の投資スタイルや条件に合う投資先や戦略を見つける機会を提供しています。

対象ファンドを水や食料、エネルギー、ヘルスなどのテーマ別にカテゴライズし、可視化ツールでデータを分かりやすく表現している点も魅力です。

ESG投資に関する知識を深めたい投資家向けに、無料のリソースも提供しています。

ESG Fusion(フージョン)

英サステナビリティ・アドバイザリー企業「ERM」が提供する、プライベートマーケット向けESG分析・評価プラットフォームです。未公開株投資のデメリットの一つとして、公開株に比べると情報量が少なく、事業活動などが不透明になるリスクが挙げられます。

「ESG Fusion」はその解決策として、非上場企業の気候変動(物理的リスク・移行リスク)やサプライチェーン、DE&I(Diversity,Equity and Inclusion/多様性・公平性・包括性)を含む10以上の要素を、AI(人工知能)を活用して包括的に評価しています。

ESG市場全体の透明性向上に期待

投資家はこのようなプラットフォームを介して、より賢明で迅速な投資判断を下せるようになる他、ESG市場全体の透明性が向上することも期待されています。

ESG市場が転換期を迎えている現在、ESG分析・評価市場は今後急成長が期待される領域です。Wealth Roadでは引き続き、大いなる成長の可能性を秘めた領域として、ESG投資分析・評価プラットフォームの動向に注視していきます。

※為替レート:1ドル=141円
※上記は参考情報であり、特定企業の株式などの売買及び投資を推奨するものではありません。

Recent Posts

  • マーケットビュー

弱含みか正常化か?大局的な視点で見る世界経済

※インベスコ・アセット・マネジ…

1か月 ago
  • マーケットビュー

FRBは景気後退を回避するために金融政策を再調整

※インベスコ・アセット・マネジ…

1か月 ago
  • マーケットビュー

日本:金融市場から見た石破新政権

※インベスコ・アセット・マネジ…

1か月 ago
  • マーケットビュー

中国:広範囲の金融緩和政策とその評価

※インベスコ・アセット・マネジ…

1か月 ago
  • お金の使い方

S&P500に100万円を投資! 10~30年後をシミュレーション

S&P500と連動する…

2か月 ago
  • 資産管理

新NISAのつみたて投資枠は貯金代わりになる? 5つの違いを解説

新NISAで安定運用を目指すと…

2か月 ago