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タカ派的な発言にもかかわらず残る、FRBの金融政策転換の可能性

タカ派的な発言にもかかわらず残る、FRBの金融政策転換の可能性

※インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供するコンテンツです。

〔要旨〕

パウエル議長はタカ派姿勢を維持:パウエルFRB議長はインフレに対して対処することが経済的な痛みにつながるとの発言を繰り返す

依然として重要視される経済データ:パウエル議長の発言は重要だが、FRBの政策運営がデータ依存であることは安心材料に

次の注目点は?:経済データ次第では、9月のFOMCではFRBが0.5%の利上げという、タカ派度を和らげる方向にそれとなく転換すると予想

ジャクソンホールで確認されたこと

ジャクソンホール会議で、パウエルFRB議長はインフレに対して断固とした対応を取ると強調

9月のFOMCに関する見解

FRBは引き続き経済データに依存した政策運営を行うと示唆

9月に予想されること

FRBの金融政策がそれとなく転換される可能性が存在

中国経済の現状

中国政府が1兆元規模の景気刺激策を発表

8月26日(金)、ワイオミング州ジャクソンホールでの経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が現状の急速な金融引き締めペースの継続を示唆したことで、世界中で株価が大きく下落しています。パウエル議長による講演はわずか10分足らずのものでしたが、その内容に世界中の多くの投資家が動揺し、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ幅に対して警戒感が強まりました。しかし、私は、ジャクソンホールでのパウエル議長の発言は、FRBの今後の動向を示唆するというよりは、ブロードウェイのショーの第一幕に似ていると思います。すなわち、すべての出演者が台本通りに動いているものの、幕が下りるまでに多くのことが変化する可能性があります。

ジャクソンホールで確認されたこと

ジャクソンホール会議で、パウエルFRB議長はインフレに対して断固とした対応を取ると強調

私の予想通り、パウエル議長の発言は非常にタカ派的でした。パウエル議長は厳しい口調で、インフレの抑制には経済的な痛みを伴うとのメッセージを繰り返しました。そして、「われわれは、需要が供給と整合的になるように、そして、インフレ期待がアンカーされた(安定的に維持される)状況を継続させるために、インフレに対して強力で迅速な措置を講じています。われわれは、インフレが十分に沈静化したと確信できるまで、手綱を緩めることはしません 1 」とし、インフレへの対処として、大型トラックで経済に突っ込んでいくように、断固とした対応をとることを示唆しました 1

パウエル議長はまた、「物価の安定を回復させるには、しばらくの間、引き締め的な政策スタンスを維持する必要がありそうです。過去の経験は、早急な政策の緩和を強く戒めています 1 」とも述べ、FRBが当面、利上げを維持する可能性を強調しました。他のFOMCメンバーも、非常にタカ派的な発言をすることでこの合唱に加わっています。例えば、米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は、FRBはフェデラルファンド金利(FF金利)を4%以上にする必要があると主張し、とりわけタカ派な姿勢を示しました 2

9月のFOMCに関する見解

FRBは引き続き経済データに依存した政策運営を行うと示唆

金融市場の最初の反応とは対照的に、私はいくつかの理由から、ジャクソンホールでのパウエル議長の講演を好意的に評価したいと思います。

  • ジャクソンホールでのパウエル議長の発言内容は、必要だったと考えます。FRBは、インフレ期待に下押し圧力をかけ続けるために、タカ派的な発言をし続ける必要があるのです。結局のところ、言うのは簡単なのです。
  • また、FRBが当面利下げを予定していないのであれば、許容できる水準で利上げを終了させる必要があると考えます。つまり、FRBは、予想よりも早くタカ派スタンスからの転換を図る必要があるということです。
  • しかし、最も重要なことは、先週、パウエル議長が、FRBが経済データに依存した政策運営を続けるとの発言を繰り返したということであり、私はこの事実に安堵(あんど)しました。

9月に予想されること

FRBの金融政策がそれとなく転換される可能性が存在

今までの経済データから、私は、FRBが9月に0.5%の利上げという、タカ派度を和らげる方向にそれとなく転換すると予想しています。理由は、以下の通りです。

  • インフレ期待
    市場関係者はジャクソンホールでのパウエル議長の講演に集中したため、ミシガン大学消費者調査の発表を見落としたのではないかと思います。当該調査では、消費者によるインフレ期待が短期および長期的ともにアンカーされつつある(安定的に維持されつつある)ことが示されました。結果は、1年先のインフレ期待が6月の5.4%に対して8月は4.8%、5年先のインフレ期待は6月の3.3%に対して8月は2.9%となりました 3
  • S&Pサービス業購買担当者景気指数
    8月の同指数は44.1と市場予想を大きく下回り、2020年5月以来の低水準となりました 4 。これはサービス支出の大幅な減少が間近に迫っていることを示しています。言い換えれば、FRBはすでに、米国経済に対して大きな木づちをふるっているのです。そして、パウエル議長は、最近の利上げの影響が一部、まだデータに表われていないことを認めています。これは、「悪い知らせは良い知らせ」ということでしょう。このような経済データを受け、FRBが金融引き締めを止めるとは思いませんが、今後の利上げが9月に0.5%、その後利上げの打ち止め前に0.25%の利上げを数回実施するという、より緩やかなものになる可能性が高くなるはずです。

もちろん、9月のFOMCまでには、より多くの経済データが公表されるでしょう。FOMCが開催される9月21日はまだ先のことで、多くのことが起こり得ますが、FRBが9月に金融政策をそれとなく転換する可能性は非常に高いと考えます。「謙虚な自慢(数年前に私の子どもたちのあいだではやった表現です)」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、今後は「金融政策のそれとない転換」という表現を耳にする機会が増えるかもしれません。

中国経済の現状

中国政府が1兆元規模の景気刺激策を発表

FRBをめぐる市場の悲観論に加え、ここ数カ月は中国をめぐる悲観論も多く聞かれました。しかし、先日、中国政府が1兆元を超える景気刺激策を発表し、成長支援策を打ち出したことで、ここ数日で状況は変化したようです 5 。この中にはインフラ投資への多額の資金投入も含まれています。これは、多くのエコノミストが2022年の経済成長率予測を下方修正する要因となった逆風を打ち消し、中国経済にとって大きなプラスとなる可能性があります。

今週の注目ポイント

今週、私が注目するデータは、中国のPMI、ユーロ圏のインフレ率、カナダの国内総生産、米国の雇用統計です。中央銀行が引き締めを強化する場合、経済への打撃とインフレ抑制の効果を見極めるため、どのデータも重要となります。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

  1. 出所:米連邦準備制度、パウエル議長によるスピーチの写し、“Monetary Policy and Price Stability”、2022年8月26日
  2. 出所:ブルームバーグ、“Mester Says Fed Might Need to Move Rates Above 4% and Hold”、2022年8月26日
  3. 出所:ミシガン大学、2022年8月26日
  4. 出所:ロイター、“U.S. private sector activity contracts again in August, survey shows”、2022年8月23日
  5. 出所:中華人民共和国財政部、中華人民共和国国務院

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