企業型DCは2022年のルール変更をきっかけに、多くのサラリーマンから注目されています。老後資産の形成に役立つ制度で、最近ではiDeCo(イデコ)と併用するケースも増えてきました。
ここでは、企業型DCの概要や仕組み、加入するメリットなどを分かりやすく解説します。
目次
国が実施する確定拠出年金のうち、企業が導入する制度を「企業型DC(企業型確定拠出年金)」と呼びます。企業型DCでは、原則として会社側が掛金を負担し、その掛金を使って従業員が年金資産を運用します。
○企業型DCの主な特徴
・会社側(勤め先)が掛金を負担する
・金融商品の運用は従業員(加入者)が行う
・従業員が60歳以降になると、年金または一時金が給付される
企業型DCは老後資産の形成に役立ちますが、積み立てた資産(掛金+運用益)は従業員が原則60歳になるまで引き出せません。加入者である従業員が60歳以降になると、それまでに積み立てた資産が年金または一時金として給付されます。
企業型DCと似た制度に、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と呼ばれるものがあります。制度の仕組み自体はほぼ同じですが、企業型DCとiDeCoには以下の違いがあります。
主な違い | 企業型DC | iDeCo |
---|---|---|
対象者 | 厚生年金の被保険者 | 国民年金の被保険者や任意加入被保険者 |
掛金の負担者 | 加入者の勤め先 | 加入者個人 |
資産の運用者 | 従業員(加入者) | 加入者個人 |
毎月の拠出限度額 | 採用している年金制度等によって異なる | 加入者の職業や属性によって異なる |
積立期間 | 原則75歳まで | 原則65歳まで |
運用商品 | 運営管理機関の取扱商品 | 金融機関の取扱商品 |
簡単に言えば、iDeCoはあくまで個人を対象にしており、会社単位で導入する制度ではありません。なお、特定の条件(※詳しくは後述)を満たしている場合は、企業型DCとiDeCoの併用も可能です。
ここからは、企業型DCへの加入によって従業員が得られるメリットを見ていきましょう。
一般的な投資では、1年間に発生した利益に対して20.315%(所得税+住民税)の税金が課されます。一方で、企業型DCではすべての運用益が非課税となるため、例えば投資信託の譲渡益や分配金などを受け取っても、税負担が増えることはありません。
企業型DCでは、60歳以降に受け取れる給付金に対しても所得控除が適用されます。
・年金として受け取る場合:公的年金等控除が適用される
・一時金として受け取る場合:退職所得控除が適用される
ただし、各控除制度の上限金額を超えた分は、節税効果が発生しないので注意しましょう。
口座管理手数料とは、確定拠出年金の加入者が口座の管理者(金融機関など)に対して支払う費用のことです。無料に設定している証券会社なども見られますが、iDeCoでは加入者個人が毎月負担をしなければなりません。
企業型DCでは毎月の掛金に加えて、口座管理手数料も勤め先の会社に負担してもらえます。
従業員側が知っておきたい知識として、「マッチング拠出」と呼ばれる制度があります。これは、企業型DCの加入者本人が自己負担によって掛金を上乗せできる制度です。
このときに上乗せした自己負担分は、すべて加入者個人の所得から控除されます。つまり、資産形成のスピードアップに加えて節税効果も高められるので、マッチング拠出の活用を検討してみましょう。
ただし、マッチング拠出とiDeCoの併用は認められておらず、また利用できるのは同制度が導入されている企業に限られます。そのため、マッチング拠出の利用を考えている方は勤め先の状況を確認しておきましょう。
2020年6月に公布された「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」によって、企業型DCのルールは次のように変更されることが決まっています。
主な変更点 | 概要 |
---|---|
受給開始年齢の引き上げ(2022年4月から) | 受給開始年齢の上限が、従来の70歳から75歳へと引き上げられた。 |
加入可能年齢の拡大(2022年5月から) | 加入可能年齢が、原則60歳未満から70歳未満へと拡大された。同じタイミングでiDeCoの加入可能年齢も65歳までに拡大されている。 |
iDeCoとの併用条件の緩和(2022年10月から) | 企業型DCの加入者が希望すれば、特別な条件を満たさなくてもiDeCoとの併用が可能になる。 |
特に押さえておきたい変更点は、iDeCoとの併用条件の緩和です。2022年9月まで実施される現行制度では、以下の条件を満たしていないと企業型DCとiDeCoの併用は認められません。
○企業型DCとiDeCoを併用する条件
・同時加入が会社側の規約で認められている
・併用について労使合意が行われている
・会社側が掛金上限額(事業主負担分)を引き下げている
2022年10月からは、上記すべての条件が撤廃されるため、従業員からすると併用しやすい環境が整います。
企業型DCは、サラリーマンとして働く個人の資産形成をサポートする制度です。iDeCoとの同時加入も可能であり、うまく併用すれば退職までに大きな年金資産を築けます。2022年10月からはさらに使いやすい制度になるので、併用を考えている方は早めに準備をしておきましょう。
※本記事は資産運用に関わる基礎知識を解説することを目的としており、資産運用を推奨するものではありません。