コロナ後に戻る消費、戻らない消費とは

新型コロナウイルス感染症の収束を見越し、これまで我慢していた消費行動が爆発する「リベンジ消費」が期待されています。

その一方で、コロナ禍で消費者の生活様式や価値観が大きく変化したことが、今後の消費動向に影響する可能性も予想されています。コロナ後に戻る消費、戻らない消費について考察してみましょう。

8割以上の人が「コロナ禍以前の生活には戻らない」と考えている

コロナ禍による消費行動の変化が、新型コロナウイルスの収束後もニューノーマルとして定着する可能性を示す調査結果が報告されています。

野村総合研究所(NRI)が2021年12月に日本人約3,000人を対象に実施した調査では、81%が「コロナ禍以前の生活には戻らない」と考えていることが明らかになりました。

その理由として最も多かった回答は「(オンライン・デジタル化などの)今の生活様式に慣れてしまったから(36%)」というもので、2021年7月の調査と比較すると1.4倍に増加しています。「コロナ禍で周りが変わった(11%)」という回答も、2倍以上でした。

その一方で、「完全に収束するとは思えないから(26%)」と回答した人の割合は、半分以下に減りました。

コロナ禍の消費に変化

コロナ禍の行動制限やリモートワークの普及により、人との付き合いや外出が大きく減少した一方で、自宅での時間を充実させたいと考える人が増えました。

また、生活のデジタル化が急速に進み、外出しなくても仕事ができることや人とコミュニケーションが取れること、さらに動画配信サービスや宅配サービスなどを利用してプライベートな時間を楽しめるといった生活様式が定着したことも挙げられるでしょう。

消費スタイルは「プレミアム消費」「徹底探索消費」が増加

コロナ禍で、消費者には具体的にどのような変化が見られたのでしょうか。需要が拡大しているのは、価格より個人のこだわりを重視する「プレミアム消費」です。

「プレミアム消費」とは、消費に対するこだわりが強く、自分の気に入ったモノの付加価値に対して対価を払う消費スタイルを指します。

野村総合研究所が3年ごとに実施している消費者志向調査によると、依然として、購入する際に安さよりも利便性を重視する「利便性消費」が主流です。ところが、コロナ禍で所得や将来に対する不安感が広がった2021年には、過去20年間で初めて減少(2018年44%→2021年41%)に転じました。

それに代わって、「プレミアム消費(22%→24%)」が製品にこだわりを持たず、低価格を重視する「安さ納得消費(24%→24%)」と同じくらい重視されるようになりました。多くの情報を収集して気に入ったモノを買う「徹底探索消費(10%→11%)」も伸びを示しました。

「質」重視傾向と所有意識の低下

同様の潮流は、国際コンサル企業アーンスト・アンド・ヤングがコロナ禍の消費行動パターンを分析した報告書『未来の消費者指数(Future Consumer Index)』でも報告されています。

例えば、消費者の欲求意識は「必要なモノ」から「欲しいモノ」へと移行しており、商品やサービスの品質だけでなく、体験や時間の質を重視する傾向が強くなっています。

また、一部の消費者は自宅で過ごす時間が増えたことで「モノを所有し過ぎている」と感じ、モノを増やさない断捨離思考に移行しています。経済的な理由で節約を余儀なくされている消費者も多く、所有意識の低下が見られます。

それに伴ってレンタルやサブスクリプションサービスの利用や修理、再販への関心が高まっています。

コロナ後に戻る消費、戻らない消費

以上の変化を踏まえて、コロナ禍で最も打撃を受けた産業の消費が、新型コロナウイルスの収束後に戻る可能性があるのかどうかを見ていきましょう。

飲食サービス産業は?

飲食店の営業自粛やリモートワークの影響で、フードデリバリー(宅配)やテイクアウトといった中食市場は急拡大しました。

「気軽」「時間や手間を節約できる」「家でゆっくりと食事をしたい」などの理由で利用する人が多く、コロナ収束後もニューノーマル需要として定着することが予想されます。

その一方で、外食産業の売上はまん延防止措置解除後も低迷しており、コロナ禍以前の水準には程遠い状況です。今後は、中食にはない付加価値を消費者にアピールする戦略が必要になるでしょう。

イベント・旅行産業は?

コンサートやスポーツ観戦などのイベントや国内・国外旅行の需要に関しては、消費者の意識が分かれるところです。

日本交通社が2021年12月に実施した調査では「3密を避ける」傾向が依然として強く、「国内旅行に行きたい」と回答した割合は同年5月に調査から若干増加したものの、海外旅行に関しては慎重な姿勢が見られます、
徹底した感染予防などで安全性を確保し、消費者が安心して利用できる環境を提供できるかどうかが復興のカギとなりそうです。

一方で、消費者が自宅での娯楽に慣れてしまった現在、スポーツ観戦などデジタルで視聴可能なものは、需要の回復に時間を要すると予想されます。

オフィス関連消費は戻らない?

リモートワークの普及による働き方の変化は、オフィス関連消費に大きな影響を与えました。

リモートワークの環境を支援するツールの需要が今後も伸び続けることが予想される反面、たとえば、スーツやネクタイといった出社を前提とするビジネス関連商品は伸び悩む可能性があります。オフィス街のコンビニや飲食店も、引き続き苦戦を強いられるかもしれません。

コロナが収束に近づくにつれて個人消費は回復していくことが見込まれますが、それは必ずしもコロナ前の水準への回復を意味するわけではありません。「リベンジ消費」の中にはコロナ禍で価値観が変わったことによる新需要もあるため、企業はそれを踏まえて新たなビジネスモデルを打ち出す必要に迫られるでしょう。

Wealth Roadでは、引き続き消費市場の最新動向についてレポートします。

※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買及び投資を推奨するものではありません。

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