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FRBは利上げに関して強気に語るが、本当に実行するのだろうか?

FRBは利上げに関して強気に語るが、本当に実行するのだろうか?

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〔要旨〕

FRBの「ドット・プロット」が変更される:ドット・プロット(金利予測分布図)では、2022年内の利上げ回数について2021年12月時点で4回と予測していたが、現在では、約2倍の7回に上昇

ドット・プロットの予測は実現するのか?:FRBは、ドット・プロットの予測が実現し、景気後退のリスクが高まることを恐れている

米国景気に対する楽観的な見通しを維持:状況の厳しさは増しているものの、FRBが米国経済をソフトランディングへと導くことができると引き続き見込む

積極的な発言を示しているFRB

FRBは、利上げへの道筋についてさらに強気の見通しを示すことで、インフレに対する懸念を遠ざけ、積極的な金融引き締めの必要性を低下させることを望んでいる

積極的な発言は利上げの加速につながるのか?

米国政府支出の削減、マネーサプライの減少、インフレ率の自律的な低下の可能性などから、コアインフレ率のピークが間近である可能性である

ハト派に傾いた欧州の中央銀行

ロシア・ウクライナ危機に伴うインフレ懸念により、欧州の中央銀行はハト派に傾く

市場に適した政策を示す中国

中国政府は経済成長を後押しする政策の実施を表明

私には3人のティーンエージャーの子どもがいます。夫と私は良い親になるべく、常に努力してきましたが、私たちは子育てにおいて、いくつかの分野で優れていると思っています。子どもが小さいとき、私が「脅威と罰」と呼ぶ分野では、私たちは理想通りに進みませんでした。私たちは、脅威に対してのほうが、その後に受ける罰よりもはるかにうまく対応してきました。私たちが重大な結果を約束し、そのような罰を受けるような間違いを決して犯さないことを誓うことは非常に簡単です。要するに、私たちは、「実現しないような大きなことを言う」、または、テキサスの私の同僚がいうように、「口では大きなことを言うが実際には何もしない」のです。

私は、現在の米連邦準備理事会(FRB)はそのような状況にあると思います—つまり、声高に話しながらも、重大な行動をとらなくて良いように願っているのです。率直に言いましょう—最後までやり通す必要がない限り、強気に話すことは簡単です。しかし、時には強気に話すことが功を奏することがあります。強い意志を持ち、政策目標を達成するために必要なことは何でもするとのメッセージを市場と経済に送るならば、強気に話せない場合と比べてより少ない犠牲を払うことで対応することができます。

積極的な発言を示しているFRB

FRBは、利上げへの道筋についてさらに強気の見通しを示すことで、インフレに対する懸念を遠ざけ、積極的な金融引き締めの必要性を低下させることを望んでいる

実際、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は先週、「・・・すべての会合は生きた会合です。われわれは状況の推移を見ていき、金融緩和を取り除くためにより迅速に行動することが適切であると結論付けた場合、それを実行します。」と述べました 1 。そして今週、彼はさらに踏み込んだ発言をしています。3月21日の全米企業エコノミスト協会で、パウエルFRB議長は、通常想定される中立水準(金融政策が緩和的でも引き締め的でもない理論的な水準として定義) 2 を超えて、より抑制的なスタンスに入る引き締めが必要になると判断した場合も、そう動く考えだ、と述べました。そしてパウエル議長以外の米連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーも、最近タカ派的な発言をしています。

それはまるで、私たちがティーンエージャーの娘に、土曜日の深夜までに家に帰らなければ携帯電話を捨てると言ったときのようです。娘は午前2時に帰ってきましたが、まだ携帯電話を持っています。親である私たちは、「しつこく文句を言う→不平を言う→怒鳴る」という、ティーンエージャーだけがうまく実行できる一連のサイクルを最後までやり通すことがもたらす結果に対処できなかったのです。同様に、FRBは、ドット・プロットが実現し、景気後退のリスクを高める結果を恐れていると思います。しかし、FRBは、ドット・プロットで見られたようなより高く、より速い利上げへの道筋についてさらに強気の見通しを示すことで、インフレに対する懸念を遠ざけ、積極的な金融引き締めの必要性を低下させることを望んでいます。

「ドット・プロット」は、FRBが金利の道筋についての見通しを示すために使用するチャートです。では、FRBは現在ドット・プロットを用いて何とコミュニケーションを取っているのでしょうか。2021年12月時点では、予想される2022年の利上げ回数は4回でした。現在、2022年の利上げ回数はほぼ2倍の7回と予想されています。FOMCのある参加者は、フェデラルファンド金利が年末までに3.1%に達すると予測しました。これは、年間を通じて0.5%の利上げが複数回行われることを意味します。

確かに、2021年12月から多くの変化がありました。2021年12月のニューヨーク連邦準備銀行の月次調査では、消費者によるインフレ期待は(1年と3年先ともに)ピークに達し、緩やかな低下を示しました。その後、ロシアはウクライナを侵略しました。先週、最新の月次調査が公表されましたが、1年先と3年先の期待インフレ率が上昇に転じており、ロシア・ウクライナ危機とそれに続くコモディティ価格の上昇が消費者によるインフレ期待に影響を及ぼしていることを示しています。FRBは、長期のインフレ期待がしっかりとアンカーされている(安定的につなぎ止められている)状態を確保したいと考えています。これは、積極的な引き締めを実行しなくても良いようにFRBがタカ派的な発言を続け、信頼性が維持されることを望む必要があることを意味しています。米国の2年国債と10年国債の利回り格差は、FRBがタカ派色を強めたことから、ここ数カ月で大きく縮小しました。この利回り格差がマイナスになった場合、それは景気後退が近づいていることを示している可能性があり、FRBは一部のFOMCメンバーが要求しているのと同程度の利上げを実行するかもしれません。

積極的な発言は利上げの加速につながるのか?

米国政府支出の削減、マネーサプライの減少、インフレ率の自律的な低下の可能性などから、コアインフレ率のピークが間近である可能性である

ドット・プロットでタカ派色を強めたり、記者会見やスピーチで積極的に発言したりすることは容易にできます。しかし、実際に1年間で7回、翌年4回の利上げを行うことは非常に難しく、景気サイクルを損ないかねません。おそらく、FRBはそれほど積極的になる必要はないでしょう。コアインフレ率のピークが間近かもしれない理由として、2022年内の連邦政府支出の削減、M2(マネーサプライ)の減少、そしてもちろん、インフレ率が自律的に低下する可能性、すなわち、物価の上昇が需要を減少させ、その結果物価への圧力が弱まることが含まれます。これは、インフレ率が直ちに2%まで低下するという意味ではありませんが、適切な方向に進む可能性があります。

ハト派に傾いた欧州の中央銀行

ロシア・ウクライナ危機に伴うインフレ懸念により、欧州の中央銀行はハト派に傾く

先週のFRBの決定は、イングランド銀行(BOE)や欧州中央銀行(ECB)のものとは対照的です。BOEは3回連続で利上げを行いましたが、よりハト派的なトーンをとっており、ロシア・ウクライナ危機によって経済成長への悪影響が生じたため、今後の柔軟な姿勢を示唆しています。そしてECBは、債券購入の終了を早める一方で、FRBよりもはるかにハト派的なトーンをみせました。

これはもっともなことです—欧州は地理的のみならず、経済的にはるかに直接的に戦争行為にさらされています。ロシアによるウクライナ侵攻後のコモディティ価格の高騰のため、自動車燃料や家庭用暖房を含む欧州の小売エネルギー価格はすでに急激に上昇しています。ドイツの自動車メーカーや他の欧州の産業も、ウクライナの電子機器部品やソフトウエア・サプライヤーの混乱に直面しており、ロシアへの輸出は制裁によって大きく減少しています。そして、和平交渉が停滞し、敵意が増大しているような中、エネルギー価格は現在、再び上昇しています。さらなるエネルギー制裁または禁輸措置が議論されており、これはおそらく米国の経済成長よりも欧州の成長に厳しい打撃を与えるでしょう。

状況の厳しさは増しているものの、私は、FRBが米国経済をソフトランディングへと導くことができると引き続き見込んでいます。ユーロ圏にとってこの課題はさらに厳しいものですが、ECBは域内経済を支えるための正しい決定を下していると考えています。イングランド銀行も同様です。このような困難な環境では、柔軟な対応とデータへの依存が重要になります。

市場に適した政策を示す中国

中国政府は経済成長を後押しする政策の実施を表明

私は、中国株式に対して、引き続き前向きな見通しを持っています。実際、先週水曜日、中国の劉鶴副首相は、経済成長を後押しする市場に適した政策の実施を表明しました。また、劉鶴副首相は、「資本市場に重大な影響を与えるすべての政策は、政策期待の安定性と一貫性を維持するために事前に金融監督官庁と調整されるべきである。」として、規制措置はより適切に調整されるべきであり、安定を脅かすべきではないと述べました 3 。今後の規制については透明性が高まり、予想外の結果をもたらすことが少なくなるとともに、実際の規制も少なくなるとみています。概して、中国の経済成長を下支えし、中国経済が5.5%の成長率という目標を達成するのを支える政策が実施されると見込まれます 4 。先週の中国の副首相によるスピーチは重要な進展であり、投資家はそれに応じて反応し、中国株には買いが集まり、先々週の下落分の一部を取り戻しました。私は中国株に対して前向きな見通しを維持しており、財政・金融支援策が経済にとって効果的な追い風となると予想しています。

今後も、世界の市場は中央銀行関係者からの発言、ロシア・ウクライナ危機の進展、インフレ率とインフレ期待の影響を受け続けると思います。投資家はボラティリティを予測しながらもそれを恐れず、ポートフォリオの分散を維持し、より長期的な目標に集中するべきであると考えています。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

  1. 出所:米連邦準備制度、記者会見の内容、2022年3月16日
  2. 出所:NBCニュース、“Powell says ‘inflation is much too high’ and the Fed will take ‘necessary steps’ to address”、2022年3月21日
  3. 出所:ロイター、“China vows to roll out market-friendly policies”、2022年3月16日
  4. 出所:ブルームバーグニュース、“China Signals More Policy Support With 5.5% Growth Target”、2022年3月5日

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