投資信託は、初心者でも始めやすい投資のひとつです。特に長期・分散・積立投資の場合は、最初に積立金額などを設定した後は「ほったらかしがちょうどよい」と言う人さえおります。
では、いつまで「ほったらかし」にすればよいのでしょうか。投資信託の価値が上がっていても、売却しなければ利益を手にすることはできません。
今回は、投資信託を売却するタイミングについて詳しく解説します。
投資信託を売却する6つのタイミング
投資信託とは、国内外の株や債券などを組み合わせたパッケージ商品のことです。何を組み合わせるか、どのような運用方針を取るかなどによって、さまざまな種類の投資信託が作られています。
投資信託の中には満期(償還日)が決められているものもありますが、「無期限」としているものも少なくありません。満期のない投資信託は、いつ終わらせればよいのでしょうか。
投資の目的や運用状況によって異なる6つの売却タイミングを、それぞれ見ていきましょう。
売却タイミング① 目標金額の達成
「資産が~円になったとき」「利益が~円になったとき」「元本が~倍になったとき」というように、投資のゴールを設定しておきましょう。このとき、達成を数字で判断できる明確なゴールにしておくことが大切です。
「もっと利益が出るかも」「もっと高くなるかも」と欲を出し、ずるずると保有を続けているうちに値が下がって損失を出す、というのはよくある話です。最初に「この数字になったら売却する」と決めておけば、判断を迷うことがありません。
売却タイミング② ライフイベントの発生
結婚資金や住宅資金、車の購入費などのために資産を運用している場合は、「そのライフイベントが発生したとき」が売り時になるのでしょう。
「もっと伸びそうだ」「もう少し利益がほしい」「損しているから後にしたい」と思ったとしても、ライフイベントのために運用してきたのであれば、売却を検討するのが良いでしょう。そのうえで、他の余裕資金があるか、などによって具体的な対応を決めていくことが重要です。
売却タイミング③ 期待するリターンが得られない
投資信託を長期運用する場合は日ごとの価格変動を気にするよりも、月単位や年単位で見守ることが大切です。短期で多少の上昇・下降があっても、長期で右肩上がりになっていれば利益を期待できるからです。
しかし、市況や社会情勢などによって「値上がりが見込めない」と判断したときは、売却を検討するのが良いでしょう。投資信託に組み込まれた金融商品に関連するニュースのチェックは重要です。
売却タイミング④ 基準価値の下落
ゴールの設定と同様に重要なのが、「損切りライン」を決めておくことです。「基準価値がいくら値下がったとき」「~%下落したとき」「損失額が~円になったとき」など、明確な売却ルールを決めておくことで迷わず売却できます。
損失が出たときに「もう少し待っていれば回復するかも」と保有を続けていると、損失が拡大することがあります。損切りラインを設けて事務的に売却することが、損失を最小限に抑えるコツです。
売却タイミング⑤ 魅力的な乗り換え先が見つかった
より利回りの高いものや将来性が期待できるものなど、魅力的な投資信託を見つけたときも売却タイミングのひとつです。新たな投資をするために、保有している投資信託を売却して資金を調達するという考え方です。
「新たな投資信託と保有している投資信託を交換する」という見方もできます。交換によって投資商品や投資先の国・地域が偏らないように、ポートフォリオをよく確認しましょう。
売却タイミング⑥ 非課税期間の終了
NISA(少額投資非課税制度)を利用して投資信託を購入している場合は、非課税期間の終了で売却をするかどうか検討するのがよいでしょう。
NISAの非課税枠は一般NISAでは最長5年間、つみたてNISAでは最長20年間です。非課税期間終了後の投資信託は、自動的に課税口座へ移管されます。譲渡益を非課税で受け取るためは、非課税期間が終わる年の12月の最終営業日までに売却する必要があります。
一般NISAでは、非課税期間が終了する金融商品を翌年の非課税枠に移管(ロールオーバー)して非課税運用を続けることも可能です。売却するか継続するかは、運用状況などを見て判断しましょう。
投資信託の売り方2パターン
投資信託を売却するときは、銘柄ごとに「すべて売却」か「一部売却」か選択できます。売却タイミングや目的に合った売却方法を選びましょう。
すべて売却
保有している複数の投資信託を丸ごと売却する方法です。売却タイミングの「①目標金額の達成」については、売却することで利益が確定します。「③期待するリターンが得られない」「④基準価値が下落したとき」なども、損失の拡大を防ぐためにもすべて売却する方法が適しています。
一部売却
売却タイミングの「②ライフイベントの発生」や「⑤魅力的な乗り換え先が見つかったとき」などは、一部売却という選択肢があります。調達したい資金の分だけ売却し、残りは運用を続けるという方法です。
運用が好調で「①目標金額の達成」の後もまだ値上がりが期待できる場合は、一部を残して運用を続けるのもよいでしょう。ただし、万が一値下がりしてもトータルで損失にならないように、バランスを考える必要があります。
投資信託の売却手順と注意点
保有している投資信託は、すぐに現金化できるわけではありません。売却を申し込んでから着金するまでの流れを確認しておきましょう。
投資信託の売却注文を出す
投資信託を購入した金融機関に、売却の注文を出します。このとき、「金額」「口数」などを指定できます。
多くの投資信託はいつでも売却することができますが、中には一定期間解約ができない「クローズド期間」を設けているものもあります。投資信託の説明書である目論見書で、事前に確認しておきましょう。
– 「解約請求」と「買取請求」の違いとは
投資信託を売却する際、「解約請求」か「買取請求」かを問われることがあります。
解約請求:投資信託の資産を直接取り崩して払い戻しを請求する方法
買取請求:窓口となる金融機関に、投資信託を買い取ってもらう方法
ただし、個人投資家にとっては違いがありません。証券会社によりますが、個人投資家の売却注文では解約請求のみを受け付けているところや、そもそも選択肢がないというところがほとんどです。
投資信託の売却注文成立日
売却注文の取引成立日(約定日)は、国内の株式や債券に投資する投信信託は15時までに売却注文をだすことで、当日の基準価額で約定となりますが、海外の株式や債券などに投資する投資信託の場合は一般的に翌営業日となります。ただし、売買注文には申込締切時間があるため、締切時間を過ぎると注文受付自体が翌営業日扱いとなり、約定が翌々営業日扱いなどになるので注意が必要です。
また、投資信託の委託先が休場日を設けている場合もあります。休場日の注文は休みが明けてからの受付となるため、さらに約定日が先送りされます。売買注文受付時間や休場日などは、証券会社の公式サイトや投資信託ごとの銘柄情報でしっかり確認しておきましょう。
投資信託の売却価格は、成立するまでわからない
売却日の基準価格が、投資信託の売却価格となります。
投資信託は、1日ごとに価格が変わります。株式などと違って「~円になったら売却する」と指定することができないため、約定するまで売却価格はわかりません。
投資信託の資産を引き出せるのは受渡日が過ぎてから
投資信託の売却注文が約定すると、決済が行われます。この決済日は「受渡日」と呼ばれ、ようやく資産の引き出しが可能になります。
受渡日は投資信託ごとにあらかじめ定められており、銘柄情報や目論見書で確認できます。投資先が国内の投資信託の受渡日は「約定日から3~4営業日後」が多く、投資先に海外商品がある場合はさらに日数がかかる場合があります。
投資信託を売却するために必要な手数料や税金に注意
投資信託の売却では、手数料や税金などの費用がかかります。ライフイベント費用などを取り崩す場合は、現金化できるまでの日数とともにコストも考慮しておきましょう。
– 信託財産留保額
投資信託を解約する際に支払う費用です。「基準価格に対して~%」で計算され、解約代金から自動的に差し引かれます。割合は投資信託によって異なり、中には信託財産留保額を「なし」としているものもあります。
また、別途「解約(換金)手数料」がかかる投資信託もあります。いずれも、目論見書などで確認できます。
– 税金
売却によって生じた利益(譲渡益)には税金がかかります。
税額は「(売却価格-元本)×税率20.315%」で計算できます。必要な資金の分だけ売却するときなどは、税金を考慮してどのくらい売却するかを決めましょう。
NISAを利用し、非課税期間内に売却して得た利益には税金がかかりません。投資コストを抑えたい人は、NISAの利用を検討することをおすすめします。
投資信託は売却することで利益が確定する
保有する投資信託の基準価格がいくら上昇していても、売却しないことには利益になりません。保有していることで満足せず、適切なタイミングで売却して利益を確定することが大切です。
各手数料や受渡日などは、目論見書や銘柄情報に明記されています。効率のよい投資をするためにも、これらの情報は事前にしっかりチェックしておきましょう。
※上記は参考情報であり、投資信託への投資、株式投資や債券投資、そのほかの投資を推奨するものではありません。