『サクッとわかるビジネス教養 お金の基本』より一部抜粋
(本記事は、杉山 敏啓氏の著書『サクッとわかるビジネス教養 お金の基本』=新星出版社 、2021年9月10日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
株式を買うときは会社から直接買いつけるのではありません。株式を売買する投資家は証券会社を通じて注文を出し、証券会社が株式の取引をする市場である証券取引所で実際の売買を行います。
証券取引所ではオークション方式で株式の取引を成立させています。「価格優先」の原則と「時間優先」の原則に従って、売り注文と買い注文をマッチングさせるのです。投資家が買い注文を成立させたい場合は、より高い価格もしくは成行注文(なりゆきちゅうもん)(価格に糸目をつけない注文)で、より早く注文を出す必要があります。
株式は安く買って値上がり後に高く売って儲ける、というイメージがありますが、株式投資の基本的な目的は、株式を長期で保有してインカムゲインである「配当金(はいとうきん)」を得ることにあります。配当金とは会社が儲けた利益の一部を株主に還元(かんげん)する(配当する)お金です。多くの会社は年に1~2回、定期的に配当を実施します。
東京証券取引所に上場※1する会社の平均配当利回りは1.92%※2で、銀行の定期預金の利率と比べても高い利回りです。ただし無配(むはい)といって配当金が出ないこともあります。
※ 1 証券取引所で株式などを公開して自由に売買できること。
※ 2 2021年3月単月。
長期の株式保有で受け取るインカムゲインとは逆に、短期間で得られる利益が株式の売買差益(ばいばいさえき)であるキャピタルゲインです。株式を安いときに買って高いときに売れば、その差が値上がり益となります。
キャピタルゲインはインカムゲイン以上に大きな利益を得る可能性がある一方で、株式相場(かぶしきそうば)※次第ではキャピタルロス、つまり値下(ねさ)がり損(そん)になることもあります。株価が下がり回復が見込めないときは早めの損切(そんき)り(ロスカット)をするか、塩漬(しおづ)け(長期保有)にして株価が回復するまで待つことになります。
※ 株式の取引市場で常に変動する、そのときの価格(株価)。
<著者プロフィール>
杉山 敏啓
江戸川大学教授・博士(経済学)
1969年東京都生まれ。聖光学院高等学校卒業、青山学院大学経済学部首席卒業、早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了、埼玉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程修了。都市銀行系シンクタンクで金融分野の研究開発・コンサルティングに長年従事。この間、立命館大学MOT大学院客員教授、東京大学大学院工学系研究科研究員、京都市会計室金融専門員などを兼務歴任し金融分野の理論と実務の両面に深く携わる。2018年より江戸川大学社会学部経営社会学科教授として金融ビジネス基礎、ファイナンシャル・プランナー育成ゼミ等の講義で教鞭をとる。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、証券経済学会員、日本金融学会員。 著書(含む共著・監修)に『金融の基本教科書』(日本能率協会マネジメントセンター)、『用語でわかる金融の基本としくみ』(日本能率協会マネジメントセンター)、『手にとるように金融がわかる本(監修)』(かんき出版)、『ペイオフ対策のための金融機関評価と選択』(生産性出版)、『銀行の次世代経営管理システム』(金融財政事情研究会)、『金融機関のアウトソーシング』(シグマベイスキャピタル)、『日本金融の誤解と誤算』(勁草書房)、『銀行業の競争度』(日本評論社)など。金融専門誌や学術誌への寄稿、講演、メディア取材対応等の実績多数。