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コロナ禍で加速する世界的インフレ懸念 投資市場への影響は?

世界的なインフレ懸念の影響は、投資市場にも広がっています。一部の専門家は米国株や米景気の過熱に対し、「市場の楽観は短期的なもの」と警鐘を鳴らしています。コロナ禍のインフレ局面で、投資家はどのような点に注意すべきなのでしょうか。

世界的なインフレ懸念 なぜ今?

なぜ今、インフレが懸念されているのでしょうか。その理由のひとつは、原油や資材の高騰です。

2021年の年初、1バレル50ドル(約5,694円)台だった原油価格は、10月には7年ぶりに84ドル(約9,567円)を記録しました。金属や天然ガスなども需要に供給が追い付かず、軒並み値上がりしています。その結果、企業が増加したコストを商品価格に上乗せすることで物価が押し上げられる、「コストプッシュ型」と呼ばれるインフレ局面に差しかかっているのです。これは「悪いインフレ」の典型例であり、「良いインフレ」では景気の拡大とともに物価が上昇します。

米CPI、30年ぶりの高水準 日本の家計にも飛び火?

経済協力開発機構(OECD)諸国のインフレ率は2020年12月以降上昇基調に転じ、2021年8月までの1年間で4.3%上昇しました。主要国の中で最もインフレが加速しているのは米国で、航空運賃とアルコールを除くほぼ全ての分野で価格が上昇。米労働省が発表した10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で6.2%増と、約30年ぶりの高い伸び率となりました。主に食品や燃料価格の上昇が、物価を押し上げています。

こうした背景から、消費者の間ではインフレが家計に与える影響への懸念が高まっています。購買意欲や景気動向の指針となる米ミシガン大学消費者マインド指数(速報値)は、6月をピークに下降。11月12日現在は予想をはるかに下回る66.8と、10年ぶりの低水準に落ち込んでいます。

日本では、9月の総合CPIが前年同月比0.2%増の100.1。8月までは前年同月比でマイナスだったことから、どちらかといえばデフレ状態と言いえます。しかし、「円安や原油価格の上昇で輸入品の価格が上昇し、値上げの動きが広がる可能性がある」との見方もあります。賃金が2年連続で減少する中、家計がさらに圧迫されることは避けられないでしょう。

「悪いインフレ」が投資に及ぼす影響

過剰なインフレは、投資市場にもさまざまな形で影響を与えます。

インフレが進むと消費者の購入意欲が削がれ、企業の売り上げが落ち込み、株価が下落します。また、中央銀行は物価を下げる意図で、短期金利の引き上げなどの金融政策を講じて企業の借り入れを縮小し、市場への通貨供給量を減らそうとします。短期金利が上昇すると借り入れコストも上昇するため、企業は設備投資などを縮小します。住宅ローンや自動車ローンなどの個人融資の金利も上がるため、消費が低迷して景気減速の材料となります。

加えて、満期までの利子が確定している債券や固定利付債の価値が下がるリスクもあります。金利が変動しなかったとしても、インフレそのものが債券の価値に影響する可能性は否めません。例えば、投資で2%のリターンを得たとしても、インフレ率が3%であれば実質リターンはマイナス1%になってしまいます。

米ストラテジストが警告

コロナ禍の米国株式市場はインフレ懸念にも関わらず、10月中旬から11月にかけて強気相場を維持しました。市場予想を上回る堅調な企業業績や、米景気に対する楽観が広がったことが主な要因です。

しかし、市場の楽観ムードとは裏腹に、バンク・オブ・アメリカやモルガン・スタンレーなどのストラテジストは、金融政策の引き締めなどを理由に「欧米の株式市場のリスク選好は持続しない」との警告を発していました。

実際、11月12日の米国株式市場は、10月の消費者物価指数(CPI)が約30年ぶりの高水準となったことに加え、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを前倒しするとの観測から、S&P500種株価指数やナスダック総合株価指数、ダウ工業株30種平均が軒並み下落しました。一方、債券市場は一足先に早期の金融引き締めを織り込み、売りが加速しています。

10月の日経平均株価は、5ヵ月ぶりに下落に転じました。米国の長期金利の上昇を受けてグロース(成長)株などが売られるなど、リーマンショック以降、10年ぶりの下落幅となりました。

パンデミック中のインフレリスクヘッジ 注意点すべき点は?

今回のインフレ懸念は、パンデミックという前例のない要素が絡んでおり、投資環境がさらに複雑化しています。また、景気後退とインフレが共存する「スタグフレーション」への懸念も高まっていると考える市場参加者もあり、より慎重な投資判断が求められます。

「株式や債券はインフレヘッジに有効」との見方もありますが、現在のような金利の上昇局面では、不動産や金(ゴールド)といった実物資産への退避を検討する投資家も少なくありません。

残念ながら投資の世界に絶対的な法則は存在しないため、これらの予想や見解はあくまで過去の実績に基づくものであり、将来の成果を保証するものではありません。しかし、未来は予想できなくても、リスクを極力回避するために対策を講じることは可能です。

そのためには、インフレが各国の経済活動に大きく影響を与えることを念頭に、市場だけでなく世界情勢にもアンテナを張り巡らしておく必要があります。その上で、こまめにポートフォリオを見直すことも大切です。

※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買や投資を推奨するものではありません。

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