住宅ローンをコツコツ返し、お金に余裕があるときには繰り上げ返済か貯金をするというお金の使い方は、一見すると堅実そのものです。しかし、資産配分が不動産に偏っているという見方もできます。そこに潜むリスクと、それを改善する方法について説明します。
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マイホームは多くの人にとって耐久消費財
かつて自宅は、金融商品や現預金と同じ”資産”でした。「土地の価格は絶対に下がらない」という土地神話のもと、誰もがマイホームの購入を夢見ていた時代です。その後バブル崩壊を経て、「住宅は耐久消費財である」という考え方が定着しつつあります。今や自宅は資産ではなく、純粋に”住む”ためのものなのです。
一方で、歴史的なベストセラーとなったロバート・キヨサキ著『金持ち父さん貧乏父さん』には、ローンを組んで購入するマイホームは”負債”であると書かれています。
マイホームは資産でしょうか、それとも負債でしょうか。それとも、家電や車と同じ耐久消費財なのでしょうか。
答えは人によって異なります。「いつかは買い替える」という人にとっては、大部分が資産でしょう。転勤などで引っ越しが多い人は、負債のように感じられるかもしれません。
そもそも「この家が気に入ったから住んでいる」という人に「資産か負債か」と聞くのは、余計なお世話かもしれません。
1973年から2018年まで、持ち家比率は60%前後で大きな変動はありません。土地価格や景気の変動にかかわらずほぼ一定であることから、資産として保有しているのではなく、住居として保有している人が多いことがわかります。
「終(つい)の住処(すみか)」のつもりでも住み替えが必要になることも
「一生住み続ける」人にとって、マイホームは耐久消費財です。立地条件や地域へのこだわりが最優先事項であり、資産として保有しているという意識はあまりないでしょう。
しかし、何が起こるかわからないのが人生です。親の介護が必要になって実家に住むことになるかもしれません。転職や転勤によって手放すこともあるでしょう。
特に老後は、引っ越す可能性が高いです。健康状態や要介護度によっては、老人ホームや高齢者向け住宅に移ることになるかもしれません。市街地から遠く離れた一戸建てよりも、駅近のマンションに住んだほうが安心と考えて引っ越す人もいます。
住み替えにおいて、自宅の資産価値は重要です。高く売れれば、新居の購入や入居一時金に当てることができるので、選択肢が広がります。このようにライフプラン全体を見渡すと、マイホームは”資産”と捉えるべきかもしれません。
資産を不動産に集中させ過ぎることのリスク
老後の住み替え資金を考慮すると、資産価値が下がらず、むしろ上がる住居を購入することが最善策です。しかしこれは普通の人が行うのは至難の技といえます。不動産業者のようなプロでも簡単ではないでしょう。不動産の価値の変動には、相場や周辺環境の変化、建物の管理状態など、複雑な要素がからんでいます。
所有する資産全体の価値が目減りするリスクを和らげるためには、資産が属する地域や種類を限定させず、さまざまな対象に分散するポートフォリオ運用が効果的です。
たとえば資産が預貯金とマイホームのみという状態だと、多くをひとつの不動産につぎ込んでいることになり、リスキーです。災害や人口減少などの変化によって、大幅に資産価値が下落する可能性があります。
マイホームを購入したうえで余裕資金があれば、国内の不動産以外にも運用の幅を広げることで、リスクを分散させられます。たとえば、国内の株式や国債などの他、海外の株式や債券、不動産などを購入することです。海外投資と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、投資信託や変額保険であれば、国内商品と同様、簡単に売買できます。
投資信託には特定の地域や種類の資産を対象とするものもありますが、世界中の株式や債券、不動産や実物商品をバランスよく配分したものもあります。これらを購入することで、「国内不動産だらけの資産配分」を修正することができるのです。
地域や種類をバランスよく資産運用しよう
「夢のマイホーム」を手放すことは、現時点では考えられないかもしれません。しかし将来何が起こるかわからない以上、保有する資産全体の価値を考慮して、マイホームを売却することも想定しておきましょう。資産配分が不動産に偏っていると、リスキーです。このリスクを軽減するためには、国内外の株式・債券やそのほかの金融商品など、さまざまな地域や資産の種類を組み合わせて運用することが大切です。