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厳しい9月を終え、10月の株式市場に待ち受けているものは?

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〔要旨〕

「波乱の10月」との見方が多い:過去に株価が暴落したことで、多くの投資家は10月に警戒を強める

今後について楽観的な理由が多く存在:今年の10月は懸念事項がいくつかあるが、長期的には楽観的な理由がある

今後の株価見通しは前向きである:10月には株価急落の可能性はあるが、株価は現在よりも上昇して年末を迎えると見込む

私が株式市場に楽観的な4つの理由

①新型コロナウイルス対策の進展、②魅力的な株価バリュエーション、③堅調な資本市場の動向、④非常に緩和的な金融政策―が、株式市場に楽観的な理由

今月注目すべき5つの問題

①米国の雇用統計:9月の米雇用統計が予想を下回る可能性があるが、それは一時的なものであろう。一方、インフレへの影響が大きい賃金の伸びに注目

②中国恒大問題の進展:中国恒大が債務リストラに取り組む一方で、中国当局が市場への動揺を押さえ込むことを示唆

③米国の債務上限問題:民主党は財政調整の枠組みを利用することで、債務上限対処法案は議会を通過し、米国債のデフォルトと格下げは回避されると見込む

④米中貿易戦争:米通商代表部のタイ代表が中国に貿易交渉の合意を順守するよう求める

⑤FRB議長の再任:直近、パウエル議長の再任の可能性が低下

ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、私は映画を観ることが大好きです。そして、ひどい映画も良質な映画と同じくらい楽しみますが、それはひどい映画にコメディーの要素があるからです。私が以前に学んだことの1つに、ひどい映画を探しているのならば、続編を観るのが一番だ、というものがあります(私の15歳の娘は、「それは事実だ」というでしょう。)。もちろん、例外はありますが、映画制作会社は、既にファンが存在していることから続編の制作を優先させる傾向があります。しかし、それが脚本や制作を急がせ、意図しない笑いを生み出すことがあります。そのよい例には、「マスク2」「ベスト・キッド4」「ジョーズ3」「ジョーズ4」「13日の金曜日 PART8 ジェイソンN.Y.へ」などがあります。脚本家になりたいと強く願っている19歳の息子の母親として、私は、息子が、他に何もなくても続編の脚本を書く仕事だけはおそらく常に見つけることができるだろうと安心しています。

私が続編を取り上げる理由は、9月が株式市場にとってひどい月だったためです— S&P500種指数は2020年3月以来の下落を経験しました。そして米国株式だけでなく、世界の株式市場も軟調な展開に苦しみました。そのため、私たちは、次のような疑問を持っています:今後の株価動向はどうなるのだろうか?9月のように、10月はひどい月になるのだろうか?それとも、市場は新たなページを開くことになるのだろうか?

私が株式市場に楽観的な4つの理由

①新型コロナウイルス対策の進展、②魅力的な株価バリュエーション、③堅調な資本市場の動向、④非常に緩和的な金融政策―が、株式市場に楽観的な理由である

一部のストラテジストは、10月の株価動向が9月よりも悪くなる可能性があることを示唆するモデルを指摘しています。過去、10月に株式市場が大きく下落したことから、今年の10月も同じような状況に陥るのではないか、と懸念するのはもっともでしょう。しかし、今月が株式市場にとって厳しい月になるかどうかにかかわらず、私は、株式市場への投資を継続することの重要性を強く感じています。そして、現金を保有している人にとっては、株価の急落の際に購入の機会を探すことも同じように重要だと考えます。

私が株式市場について前向きと考える、説得力のある理由は以下の通りです。

1.新型コロナウイルス対策の進展

米国では、新型コロナウイルスの感染者数は8月下旬から30%以上減少しており、一日当たりの新規感染者数は9月1日から35%減少しました 1 。そして、米大手製薬会社のメルクは、新型コロナウイルス治療の経口薬であるモルヌピラビルの臨床実験において、入院や死亡のリスクが約50%減少したとの研究結果を発表しました 2 。多くの国では全人口に対するワクチン接種について困難な状況に直面していることを考えると、これは非常に明るいニュースです。この新薬の開発が重要なのは、新型コロナの他の治療法が点滴や注射の形によるものであるため、迅速かつ広く配布することが非常に困難なためです(病院または診療所に行く必要があります)。この経口薬は、インフルエンザ薬として非常に有効なタミフルに例えられています。

2.魅力的な株価バリュエーション

まだ割安ではありませんが、株価の大幅下落により、株価バリュエーションはわずか数週間前よりも魅力的な水準になっています。好ましくないニュースの多くが株価に織り込まれているようにみえる一方で、すべての良好なニュースが織り込まれていないことは間違いないでしょう。

3.堅調な資本市場の動向

世界的にM&A活動が活発化しています。実際、2021年初から9カ月間の世界的なM&A活動は4.3兆米ドルを超えました。これは、過去最大だった年をすでに上回っています 3 。また、米国では新規株式公開も大幅に増加しています。これは、企業の信頼感の高まりとリスク回避の弱まりを示唆しています。

4.非常に緩和的な金融政策

米連邦準備理事会(FRB)は、9月にテーパリング(資産買い入れの段階的縮小)の開始の発表を行わず、緩和的な姿勢を維持しています。そして、今秋後半に実施される可能性が高いテーパリングが始まったとしても、FRBのバランスシートには膨大な資産があり、金融政策環境は非常に緩和的であると見込まれます。実際、多くの主要先進国の中央銀行はバランスシートを拡大させており、状況はすぐには変化しないでしょう。このことが、リスク資産をサポートする環境を提供するはずです。さらに、そして重要なことに、FRBのパウエル議長は利上げの実施についてハードルを引き上げており、利上げをテーパリングから切り離しています。

繰り返しになりますが、これらは10月に大幅な下落が発生しないという意味ではありません。それでも、株式市場は現在よりも高い水準で年末を迎えるだろうと考えています。

今月注目すべき5つの問題

10月に注目すべき点は次のとおりです。

1.米国の雇用統計

直近、新規失業保険申請件数が急増している中、9月の米雇用統計が予想を下回る可能性があるが、それは一時的なものであろう。一方、インフレへの影響が大きい賃金の伸びに注目

ここ数週間、米国では新規失業保険申請件数が急増しており、雇用市場に対する懸念が生じています。そのため、10月8日に発表される9月の米雇用統計に注目しています。私は、9月の雇用統計が、米国人労働者が幾分か平常に戻ったことを反映する最初の統計になりそうだと述べてきました。そして、9月に子供たちが学校に戻り、職場に復帰する親に対する育児面での圧力が和らぎました。予想を大きく下回る雇用統計によって市場が動揺する可能性はありますが、新型コロナとの闘いが改善していることを踏まえると、それは一時的な雇用の弱さに過ぎないと考えます。私は、「より粘着的なインフレ」を生み出す傾向があることから、賃金の伸びに着目しています。ただし、賃金が大幅に上昇したとしても、どの業種でそうなったのかを注意深く検証する必要があります。前にも述べたように、賃金の上昇がサービス部門で見られている場合は、それほど心配していません。サービス部門は従業員の離職率が非常に高いことから、将来的に賃金引き下げという柔軟性が高まると考えます。

2.中国恒大問題の進展

中国恒大が債務リストラに取り組む一方で、中国当局が市場への動揺を押さえ込むことを示唆

中国恒大は本日(10月4日)、2億6000万米ドルの社債の償還期限を迎えました(実際の償還期限は10月3日) 4 。そして、香港取引所は同社株式の取引の停止を発表しましたが、同社の不動産管理子会社株の売却が近いようです。これは、同社が債務リストラと義務の達成を試みていることを示唆する一方、中国の規制当局が中国恒大のリングフェンス(別会社化)に焦点を当て、市場に動揺が広がらないようにすることを示唆しており、どちらも歓迎すべきニュースです。今後数週間で、同問題のさらなる進展が見込まれます。中国恒大問題はまだ終わったわけではないのです。

3.米国の債務上限問題

民主党は財政調整の枠組みを利用することで、債務上限対処法案は議会を通過し、米国債のデフォルトと格下げは回避されると見込む

米国議会が債務上限を引き上げることができず、特に米国債の格付けが1つ以上の格付け会社によって引き下げられた場合、債務上限の問題は確かに株式と債券に悪影響を与える可能性があります。そして、それは格付け会社が警告していることです。格付け会社フィッチは、債務上限が「適時に引き上げ、もしくは停止されない場合、瀬戸際政策や資金調達における柔軟性の低下によって米国債が債務不履行(デフォルト)に陥るリスクが高まる可能性がある」と警告しました 5 。この問題についてはさらに懸念されるニュースが流れる可能性がありますが、最終的には債務上限は引き上げられると予想しています。民主党が財政調整の枠組みを利用して単独で引き上げなければならない状況かもしれませんが、議会を通過し、米国債のデフォルトと格下げが回避されると考えます。うまくいけば、債務上限問題は格付け会社が求めているタイムリーな方法で解決されるでしょう。

4.米中貿易戦争

米通商代表部のタイ代表が中国に貿易交渉の合意を順守するよう求める

先週の初めに、米国政府がトランプ政権下で課された関税をゆっくりと静かに是正するといううわさを聞きましたが、それは、私がずっと以前に起こると予想していたことです。しかし、米通商代表部のタイ代表は、4日、中国が米中貿易交渉の第一段階に基づく合意を順守していないとして、より強い態度を示しました。単なる外交上の一つの話かもしれませんが、タイ代表はまた、米国は中国との貿易関係において「新たなコース」を構築する必要があると主張しており、おそらくそれは、関税の是正を意味しています。今後数週間で、米中関係の行方を注視したいと思います。関税の是正は、米国株と中国株の両方にとってポジティブな可能性があります。

5.FRB議長の再任

直近、パウエル議長の再任の可能性が低下

パウエル氏がFRB議長に再任される可能性は、過去数週間で低下しています。オンライン予測市場のPredictit(プレディクトイット)によると、パウエル議長再任の可能性が、9月12日時点で90%であったのに対し、10月3日時点では63%に低下しています 6 。それでも悪い数値ではありませんが、パウエル議長が再任しなかった場合に何が起こるかを考えることは価値があります。簡単に言えば、FRBはよりハト派に傾くでしょう。FRBが積極的に行動せず、進行中の景気拡大を阻害しないという確信が高まったため、投資家がより強気になる可能性があることが上振れリスクとなります。他方、このシナリオ下での最大の下振れリスクとしては、FRBがインフレを抑制できるという市場の信頼が失われるリスクを指摘したいと思います。パウエル議長の任期が来年の早い段階までは終わらないことから、この問題が数カ月続く可能性があることに注意することが重要です。

10月は、過去に株式市場の暴落があったことで投資家に恐怖を与えますが、ほとんどの10月はかなりよい月であったことを覚えておく必要があります。そうは言っても、2021年10月は醜い続編となるかもしれません。ボラティリティが高まり、投資家が神経質になったとしても、驚かされないでしょう。しかし、私が映画のひどい続編でもコメディーの要素を重視してみるように、市場の厳しさが続くとしても、それを買い場とみなすことができるでしょう。

1.出所:ニューヨーク・タイムズ、2021年10月4日
2.出所:メルク、2021年10月1日
3.出所:リフィニティブ
4.出所:ビジネスインサイダー、“Trading in Evergrande shares has been suspended pending a ‘major transaction’ – and as another debt test looms”、2021年10月4日
5.出所:フィッチ・レーティングス、“Debt Limit Brinkmanship Could Put Pressure on US ‘AAA’ Rating”、2021年10月1日
6.出所:プレディクトイット、2021年10月3日

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

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