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つみたてNISAを「使う・使わない」 投信積立の税額の違いを比較

投資用語は日常ではあまり使われないため、わかりにくいと感じる人もいるでしょう。例えば「投資信託」「積立投資」「投信積立」は似ていますが、それぞれ意味は異なります。

今回は、まず「投資信託」「積立投資」「投信積立」の違いを説明した上で、「つみたてNISA」を利用することで具体的に何が変わるのかについて、わかりやすく解説します。

投資信託(とうししんたく)とは

では、「投資信託」の説明から始めましょう。

投資信託は、金融商品の一種です。国内外の株式や債券など、さまざまな投資商品をパッケージにしたもので、「投信」「ファンド」とも呼ばれます。どのような組み合わせにするかはプロが決めていて、証券会社ごとにラインナップが異なります。

投資信託のメリット

-少額投資で始めやすい

株式や債券など金融商品には、それぞれ価格があります。株式は一般的に100株単位で取引されることが多いため、「価格×100株」以上の資金が必要です。

投資信託は複数の投資家から集めた資金をまとめて投資します。その運用成果は、出資額に応じて投資家に分配されます。個々の負担額は少なくても、大きな金額で投資運用ができる仕組みになっているのです。

-分散投資でリスク軽減

分散投資のメリットは、タマゴの例えがわかりやすいでしょう。すべてのタマゴを1つのカゴに入れた場合、そのカゴが落ちたらすべてのタマゴが割れてしまいます。しかし、タマゴを複数のカゴに分けて入れておけば、すべてのタマゴが割れてしまうリスクは軽減されます。

このように投資先も複数に分けておけば、大きな損失を回避できます。1つの運用成果がマイナスでも、他の運用がうまくいけばトータルで利益が出る可能性もあります。

投資信託では、株や債券といった「金融商品の種類」やその中で、例えばトヨタ自動車なのかホンダなのかといった「銘柄」あるいは日本や米国といった「国(地域)」など、様々な点で分散させた投資ができるというわけです。

-プロに任せて運用

一般的な投資運用では、自分で投資する商品を選び、売買注文を出し、保有資産を管理します。そのためには、企業情報や社会情勢、市場の動向などを調べて分析するための知識と時間が必要です。

投資信託では、どういった商品にどのくらい投資するかを決めた後は、運用のプロに一任できます。必要な情報を分析し、目標どおりの運用ができるように調整もしてくれるので、初心者や忙しい人でも投資しやすい仕組みといえるでしょう。

投資信託のデメリット

投資信託は初心者でも手軽に始められますが、デメリットもあります。

-手数料が掛かる

株式投資には売買手数料というのが掛かりますが、投資信託では、購入時手数料のほかに、プロに運用を任せるための「信託報酬」という手数料が必要です。金額は投資信託ごとに異なりますが、商品情報として公開されているため、購入前に確認しておくことが大切です。

-運用成果が約束されていない

投資信託に組み入れられている株式や債券の価格は変動します。購入価格よりも売却価格が高い場合は利益に、購入価格よりも安い価格で売却すると損失になります。

利益と損失の振り幅を「リスク」と呼びます。リスクとリターンは表裏一体で、大きな利益が期待できるものは大きな損失の可能性もあり(ハイリスク・ハイリターン)、損失が小さいものは利益も小さくなります(ローリスク・ローリターン)。

また、元本が保証されていないため、運用状況によっては元本割れを起こすこともあります。

積立投資(つみたてとうし)とは

続いて「積立投資」について解説します。

「積立投資」は、運用方法の一種です。一度に大きな資金を投資する方法を「一括投資」、複数回に分けて投資する方法を「積立投資」と呼びます。

積立投資のメリット

一般的な積立投資では、最初に「タイミング」「指定日」「金額」を設定しておくと自動的に買付が繰り返されるため、手間なく続けられるというメリットがあります。

-時間分散でリスク低減

価格が変動する金融商品の購入タイミングをずらすことを「時間の分散」といい、価格が高いタイミングで多く購入してしまう「高値づかみ」を回避する効果があります。

また、「毎月1万円ずつ」のように購入すると、高い時は少なく、安い時は多く購入することになるため、結果的に平均購入額を低く抑えられることがあります(ドル・コスト平均法)。

積立投資のデメリット

積立投資は、長期運用に適しています。成果が出るまでに時間がかかるため、短期間で利益を狙う場合は不向きです。

長期・積立・分散投資ができる「投信積立(とうしんつみたて)」

そして、投資信託で積立投資を行うことを、「投信積立」と呼びます。

銘柄や国などを分散している投資信託で、時間の分散が可能な積立投資を行うことで、さらなるリスク低減効果が期待できます。また、長い期間運用を続けることで複利の恩恵を受けられます。

複利とは、運用益を投資資金に組み入れ、元本を増やしていく運用方法のことです。投資期間が長ければ長いほど元本が大きくなり、それが新たな利益を生みます。

つまり、投信積立は「長期・積立・分散投資を実現できる方法」というわけです。

つみたてNISA(ニーサ)とは

「NISA」には短~中期投資に向く「NISA(一般NISA)」と、少額からの長期・積立・分散投資を支援する「つみたてNISA」があります。つみたてNISAは、個人投資家のための税制優遇制度です。どのようなメリットがあるのでしょうか。

つみたてNISAのメリット

-運用益にかかる約20%の税金がない

最大のメリットは、運用益が非課税になることです。通常、投資運用で得た利益には国税と地方税がかかります。税率は2021年8月現在で20.315%、つまり10万円の利益があっても2万円以上が税金として差し引かれるということです。

つみたてNISAには、年間40万円の非課税枠が設定されています。非課税枠内で投資した分の利益には、税金がかかりません。

非課税期間は最長20年間で、毎年40万円分の新規投資が対象です。つまり、最大800万円分の投資に対する運用益が非課税になるため、効率的な資産形成が期待できます。

つみたてNISAを利用する場合、利用しない場合の税額の違い

では、つみたてNISAにどのくらいの節税効果があるのか、シミュレーションしてみましょう。

つみたてNISAの非課税枠をすべて使うために、毎月の積立額は3万3,000円に設定しました。年率4.0%の運用を20年間続けた場合の資産総額と運用益に対してかかる税額は、以下のとおりです。

<つみたてNISAを利用した場合の非課税額試算>

毎月投資額
(定額購入)
3万3,000円
(年間39万6,000円)
運用期間 20年間
運用利率 4.0%
総額 1,200万6,598円
[内訳]
投資元本合計:792万円
運用益合計:408万6,598円
運用益に対する税額(20年間) つみたてNISA利用 利用なし
0円 83万192円

※運用利率は20年間変動なしとして計算
※その他手数料は考慮せずに計算

つみたてNISAを利用することで、約83万円の税金を節約できることがわかりました。積立金額が3万3,000円ですから、83万円は約2年分の投資額と同じであり、節税効果が大きいことがわかります。

つみたてNISAのデメリット

つみたてNISAにはいくつかの制限があり、それをデメリットと捉える人もいるでしょう。どのような違いがあるか、確認しておきましょう。

<つみたてNISAを利用した場合の制限比較>

つみたてNISA 利用あり つみたてNISA 利用なし
(一般的な投信積立)
課税 年間投資額40万円まで非課税 運用益に対して20.315%
期間 20年間 無制限
投資商品 金融庁の基準を満たす投資信託・ETF(上場投資信託) 自由に選べる
積立金額 非課税枠内
(1ヵ月あたり約3万3,000円が上限)
無制限
口座開設数 1人1口座のみ 複数口座開設可能

-投資対象商品の制限

つみたてNISAの投資対象商品は、「金融庁の基準を満たす投資信託とETF(上場投資信託)」に限られています。金融庁の基準には、「販売手数料なし」「信託報酬は一定水準以下」など手数料に関する条件も盛り込まれているため、コストの低い投資信託が揃っているということになります。

株式に投資したい人には厳しい制限ですが、投信積立をしたい人は絞り込む手間が省けるので、ありがたいかもしれません。

-般NISAとの併用ができない

つみたてNISA口座は、1人1口座しか持てません。

NISAには「つみたてNISA」と「NISA(一般NISA)」がありますが、同時期に両方から投資することはできず、どちらか一方を選択する必要があります。切り替えは可能ですが、保有資産がない状態でなければ切り替えられないため、注意が必要です。

投信積立をしたい人には、つみたてNISAが効果的

老後など将来のための資産形成が目的なら、つみたてNISAが効果的です。しかし、短期間で利益を上げたい場合や株式など個別銘柄に投資したい場合、大きな資金を投じたい場合などには向きません。

まずは、自分の投資目的を明確にすることが大切です。いくら制度が優れていても、利用目的と合致していなければ宝の持ち腐れになってしまいます。多くの情報に触れ、税制優遇をうまく活用しましょう。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資そのものを推奨するものではありません。

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