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NISAとiDeCoを併用するコツ 特徴を理解して賢く資産形成する方法

NISAとiDeCoは国が用意した税制優遇制度で、資産形成の効率を高めてくれます。

NISAとiDeCoは併用できます。それぞれにメリット・デメリットがあり、人によって向き不向きがもあります。各制度の特徴を踏まえて、どちらの制度を利用すべきか、どのくらい投資すべきか、しっかり見極めましょう。

そこで本記事では、各制度の特徴を紹介し、効果的に併用する方法も解説します。

NISAとiDeCoは併用できる?

NISAとiDeCoはそれぞれ独立した制度で、併用が可能です。

NISAとiDeCoの共通点は、投資で得た利益が非課税になることです。通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかります。しかしNISAやiDeCoを利用すれば、約20%の税金が差し引かれることがないため、効率的に資産を形成できます。

NISAとは?

続いて、NISAとiDeCoの仕組みを順番に解説します。まず、NISAの仕組みとメリット・デメリットを見ていきましょう。

NISAとは

NISAは「投資で得た利益が非課税になる制度」です。NISAを利用すれば、通常は投資の利益に対してかかる約20%の税金がかかりません。

NISAには「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」があり、日本在住の成人が利用できるのは「一般NISA」と「つみたてNISA」です。

-一般NISA

非課税になる新規投資額は毎年120万円までで、期間は5年間です。つまり、毎年120万円ずつ投資すると、最大600万円の投資で得た利益が非課税になります。国内外の株式や投資信託など、幅広い投資先から運用商品を選べます。

-つみたてNISA

非課税枠は毎年40万円で、期間は20年間です。つまり、毎年40万円ずつ投資すると、最大800万円の投資で得た利益が非課税になります。つみたてNISAの投資対象は、長期・積立・分散投資に適した投資信託のみです。

NISAのメリット

NISAのメリットは以下の通りです。

-利益に約20%の税金がかからない

NISAは一定期間内における投資に対する利益が非課税になります。もし100万円の利益が出た場合、通常なら20万円が税金として納める必要がありますが、NISAなら20万円が手元に残ります。

-売却すればいつでも現金化して引き出せる

NISAは保有中の金融商品を売却して、いつでもご自身の銀行口座に資金を移すことができます。そのため、急な出費があった場合でも対応できます。

NISAのデメリット

NISAのデメリットは以下の通りです。

-元本保証ではない

NISAは元本保障ではないため、思わぬ損失を負う可能性があります。NISAの対象商品になっている株式や投資信託は日々の値動きによって、大きな利益を期待できる代わりに、大きな損失が出る可能性があるのです。

-通常の投資で得た利益と損失を相殺できない

NISA口座を通じた投資では損益通算ができないため、同一年分の利益と損失を相殺することによる節税を行えません。そのため、通常の投資で得た利益と、NISAを使った投資での損失を相殺できないというデメリットがあります。

iDeCoとは?

iDeCoは、自分で金融商品を選んで運用しながら老後の年金を積み立てる私的年金制度で、投資で得た利益にかかる約20%の税金がかかりません。iDeCoの投資先は投資信託や保険、定期預金などがあります。

iDeCoのメリット

iDeCoのメリットは以下の通りです。

-利益に約20%の税金がかからない

iDeCoを活用した一定金額内の投資による利益に対して税金がかかりません。iDeCoは長期積立が前提になっているため、積立期間が長くなるほど小さな利益が積み重なるので、大きな節税効果を期待できます。

-所得税や住民税を節税できる

iDeCoは掛金の全額を所得から控除でき、所得税・住民税を節税できます。所得税や住民税は、給与所得などから控除を差し引いた金額に税率をかけて計算します。掛金を控除すれば所得が小さくなり、税金も少なくなるのです。

-受け取り時にも税金の優遇がある

iDeCoでは、受け取り時にも税金の優遇があります。年金として受給する場合は「公的年金等控除」、一時金で受給する場合は「退職所得控除」が利用できます。

iDeCoのデメリット

iDeCoのデメリットは以下の通りです。

-原則として60歳になるまで引き出せない

iDeCoは積み立てた掛金を原則として60歳になるまで引き出せません。急な出費があってもiDeCoから資金が捻出できないことを覚えておきましょう。

-元本割れのリスクがある

iDeCoの対象商品の中には、元本割れのリスクが極めて低い商品がいくつかあります。そしかし、一部の商品は元本割れのリスクがあるため、運用先となる商品の特徴はしっかり確認しましょう。

-手数料がかかる

iDeCoでは加入者側が手数料や口座維持費を負担することになっており、リターンが小さい元本保証の商品だけで運用すると、運用利益よりも手数料が大きくなり、損する可能性も考えられます。

NISAとiDeCoの違いを比較

NISA つみたてNISA iDeCo
税制上の優遇措置 ・運用益が非課税 ・運用益が非課税 ・運用益が非課税
・掛金の全額が所得控除の対象
・受給時の控除あり
運用期間 5年間 20年間 60歳まで
※2022年5月以降は65歳まで延長
最低投資額 100円から(金融機関・銘柄による) 月々100円から(金融機関・銘柄による) 月々5,000円から
投資限度額 年間120万円 年間40万円
(毎月3万3,333円)
自営業者:毎月6万8,000円
会社員、専業主婦(夫):毎月2万3,000円
公務員:毎月1万2,000円
※企業年金に加入している場合、上限額は上記よりさらに下がる。
投資商品 投資信託・国内外の株式など 金融庁の基準を満たす投資信託・ETF(上場投資信託) 投資信託・定期預金・保険など
投資方法 一括投資
積立投資
積立投資 積立投資
引き出し いつでも可 いつでも可 受給年齢(原則60歳以上)まで不可
手数料(税込)
※取引手数料・信託報酬など金融商品にかかるものを除く
口座管理手数料なし 口座管理手数料なし 加入・移換時手数料 2,829円(初回のみ)
国民年金基金連合会手数料 105円/納付月ごと
資産管理手数料 66円/月
運営管理手数料 0~数百円/月(金融機関による)
給付事務手数料 440円/給付ごと など

節税効果をシミュレーション

NISAとiDeCoを実際に運用した際に、どのくらい節税効果があるのか、以下の条件で投資した場合を見てみましょう。

運用益の節税効果(NISAとiDeCo共有)

【投資内容】
投資金額:毎月1万円 積立投資
投資期間:20年間
運用利率:3.0%

【20年後の運用結果】
総額:326万8,381円
(内訳)
投資元本:240万円
運用利益:86万8,381円
NISAやiDeCoを利用した場合は運用利益に税金がかかりませんが、利用しない場合は「運用利益×20.315%」の税金がかかります。

【節税できる金額】
86万8,381円×20.315%=17万6,412円
約17万円もの節税効果があることがわかりました。

所得税・住民税の節税効果(iDeCoのみ)

iDeCoの「掛金の所得控除」による節税効果を見てみましょう。課税所得の計算は収入などによって異なるため、以下の条件とします。

【投資内容】
年収:500万円(会社員)
投資金額:毎月1万円

【1年あたりの軽減額】
※社会保険料は年収の14.39%、所得税は収入に応じて10%、住民税は一律10%として計算
所得税軽減額:1万2,000円
住民税軽減額:1万2,000円
軽減額合計:2万4,000円
例えば30歳でiDeCoを始めた場合、積立期間は30年です。

【節税できる金額】
2万4,000円×30年=72万円
毎年2万4,000円、30年間で72万円もの節税効果があります。

手数料がかかることをデメリットと捉える人もいるかもしれませんが、iDeCoではそれ以上の節税効果が期待できます。

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NISAが向いている人・iDeCoが向いている人

続いて、NISAが向いている人・iDeCoが向いている人の特徴について紹介します。

NISAが向いている人

NISAが向いている人は、以下のような人が該当します。

・結婚や出産などの急な出費に対応したい人
・老後資金を貯めたい人
・積極的に株式や投資信託を運用したい人

上記に該当する人は、一般NISAかつみたてNISAの利用を検討してみましょう。

NISAが向いていない人

NISAが向いていない人は、以下のような人が該当します。

・少しでも損をしたくない人
・急な出費に対応できる余裕資金がない人
・投資のリスクを理解できていない人

上記に該当する人は、NISAの活用には向いていないため、他の資産運用を検討しましょう。

iDeCoが向いている人

iDeCoが向いている人は、以下のような人が該当します。

・急な出費に対応できる余裕資金がある人
・老後資金を長期で積み立てたい人
・高年収によって所得税控除の効果が大きい人
・定期預金や保険で資産形成している人

上記に該当する人は、iDeCoの利用を検討してみましょう。

iDeCoが向いていない人

iDeCoが向いていない人は、以下のような人が該当します。

・急な出費に対応できる余裕資金がない人
・老後までに資金を引き出す機会がある人
・積み立てる掛金によって生活の余裕がなくなる人

上記に該当する人は、iDeCoの活用には向いていないため、他の資産運用を検討しましょう。

NISAとiDeCoを併用するコツ

NISAとiDeCoを併用することで、それぞれのメリットが薄れることはありません。より効率的に運用するために、目的に合わせてうまく組み合わせることが大切です。

リスクを抑えてコツコツ投資したい人は「iDeCo+つみたてNISA」

毎月一定額をコツコツと積み立てる積立投資は、損失のリスクを抑えやすい投資手法です。iDeCoやつみたてNISAを活用して一定の金額で積立投資を継続すれば、安値のときに購入数が多くなり、高値のときに購入数が減ります。その結果、平均購入単価が下がることで、1度で資産の大半を投資するよりも損失のリスクが抑えやすくなります。

「老後資金の準備を優先したい」「節税効果を最大化したい」という人は、上限額までiDeCoを利用し、余裕があればつみたてNISAで積立投資をすることを検討しましょう。

「節税効果を得つつ、自由に引き出せる資産も確保しておきたい」という人はつみたてNISAを優先し、無理のない範囲でiDeCoに加入するとよいでしょう。

老後資金を用意しつつ、様々な投資をしたい人は「iDeCo+一般NISA」

iDeCoやつみたてNISAでは、株式やREIT(不動産投資信託)に投資することはできません。一般NISAの魅力は、幅広い金融商品に投資できることです。投資信託だけでなく、株式やREITなど様々な投資商品を取引できます。

「老後資金の準備を優先したい」という人は、上限額までiDeCoを利用し、一般NISAは余裕資金で投資することを検討しましょう。

「自由に引き出せる資産も確保しておきたい」という人は一般NISAを優先し、無理のない範囲でiDeCoに加入しましょう。

「NISA」+「つみたてNISA」は併用できない

NISA口座は、1人1口座しか開設できません。例えば一般NISA口座を持っている人は、つみたてNISA口座に切り替えることはできますが、同時に両方から投資することはできません。必ず、どちらか一方を選択することになります。

また、保有商品をすべて売却してからでないと切り替えられないことにも注意が必要です。

一般NISAとつみたてNISAの選び方

続いて、一般NISAとつみたてNISAの選び方を詳しく解説します。各NISAの得意なことを整理したので、どちらのNISAを選ぶのか決める際の参考にしてください。

一般NISAが得意なこと

続いて、一般NISAが得意なことを2つ紹介します。

-ロールオーバーができる

ロールオーバーとは、非課税期間(5年)が終了したときに、保有している金融商品を、翌年の新たな非課税投資枠に移行することです。

一般NISAへのロールオーバーは2023年までとなります。2024年以降は一般NISAが廃止されるため、新NISAにロールオーバーする必要があります。

-非課税期間が短いため投資額が大きく、まとまった投資ができる

一般NISAの年間非課税枠は120万円で、つみたてNISAの年間非課税枠40万円の3倍です。非課税期間は5年間と短いものの、まとまった資金を投資できるのが魅力です。つみたてNISAとは違って一括投資ができるため、安いときを見極めて投資したい人にも向いています。

-投資先の選択肢が幅広い

一般NISAは運用商品が幅広く、投資信託だけでなく国内外の株式やREITにも対応しています。配当金も非課税になるため、高配当の株式を保有する場合もメリットが大きいといえます。

つみたてNISAが得意なこと

続いて、つみたてNISAが得意なことを3つ紹介します。

-リスクを抑えてコツコツと資産形成

つみたてNISAは「長期・積立・分散投資」に特化した制度です。長期間の運用に向いているため、リスクを抑えて資産形成を続けたい人に向いています。

2022年6月現在、つみたてNISAは2042年まで専用口座を開設できます。新規投資は2042年までで、以後20年間(最大2061年まで)は非課税で保有できます。

-年間投資額が少ないから続けられる

つみたてNISAの非課税枠は年間40万円、月額に換算すると約3万円です。積立投資のコツは「長く続けること」ですが、少額であれば続けやすいでしょう。

-厳選されているから選びやすい

金融庁の基準を満たす商品しか選べないということは、どれを選んでも「コストが低い」ということです。投資信託しか選べませんが、それは「分散投資ができる」というメリットともいえます。

つまり、「長期・積立・分散投資をしたいけれど、どうすればよいかわからない」という初心者でも利用しやすいといえます。

税制優遇制度を使って賢い資産形成をしよう

どの制度にも、メリットとデメリットがあります。どのように組み合わせて運用するかを決めるためにも、まずは自分の目的をしっかり見定めておくことが重要です。

NISAやiDeCoといった税制優遇制度をうまく使って、資産形成+節税で運用効率の向上を目指しましょう。

※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買や投資を推奨するものではありません。

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