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次の株価の急落に備えよ

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株式市場は現在を上回る水準で2021年を終えると予想するが、その道のりは平坦なものではないだろう

〔要旨〕

株価の急落は短命に終わる:最近の株価の急落では、熱心な投資家がすぐに市場に戻る

逆風の存在:新たな株価急落を引き起こす可能性のある4つの逆風を注視

ファンダメンタルズは堅調さを維持:堅調なファンダメンタルズと緩和的な金融および財政政策を考えると、株式市場は現在よりも高い水準で2021年を終えると予想

注視すべき4つの逆風

1. 新型コロナウイルスの感染状況:感染の制御に成功していた東南アジアをはじめ、ワクチン接種率の高い英国やイスラエルの国々で感染者数が増加。一方で、米国では接種率の低かった州で同数値の上昇が確認される

2. 疑問視されるワクチンの有効性:イスラエルではワクチンの感染予防効果が大きく低下しているが、重症化の予防効果は依然として高い

3. 米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めへの懸念:今週のFOMCではテーパリングの発表はないと予想するものの、今後のFRBメンバーの発言に注目

4. 米国の債務上限の問題:イエレン米財務長官は債務上限の問題に対して懸念を示す

株価の急落に備えよ

今後の株式市場でボラティリティが高まる場面が予想されるものの、株式市場は現在を上回る水準で2021年を終えると見込む

先週、株式市場の急落に投資家が動揺している真中に、私は「落ち着いて、ポートフォリオの分散を保ちましょう。そして、現金を保有しているなら、株式購入の機会を探ってください。」という一文でリポートを締めくくりました。執筆後、私は、投資家が購入の機会を探す間もなく、株式市場が回復するのではないかと思いました。結局のところ、株価の急落後には熱心な買い手が株式市場に急いで戻ってくるというというのが過去1年以上にわたってみられたパターンでした。そして、今回も同じく、投資家が瞬きする時間もないくらいにあっという間に株価は回復しました。ただし、多くの人が予想しているように今夏の株価の急落が終わったと考えているとしたら、それは大きな間違いだと思います。私は、新たな株価急落を引き起こす要因と考えられる4つの逆風を注意深く見守っています。本稿では、その4つについて触れたいと思います。

注視すべき4つの逆風

• 新型コロナウイルスの感染状況

感染の制御に成功していた東南アジアをはじめ、ワクチン接種率の高い英国やイスラエルの国々で感染者数が増加。一方で、米国では接種率の低かった州で同数値の上昇が確認される

新型コロナウイルスの感染は世界中に広がり続けています。東南アジアでは、今まで感染の深刻な波にうまく対処してきましたが、マレーシア、タイ、インドネシア、さらにはシンガポールなど、多くの国でデルタ変異株の新規感染者数が劇的に増加しています。インドネシアでは特に状況が悪化しており、バリ島とジャワ島では深刻な医療用酸素不足が生じています。さらに、2ケタの陽性率を考えると、医療専門家は、インドネシアで新たな変異ウイルスが発生するのではないかと懸念しています。一方、英国、フランス、スペイン、イスラエルなど、ワクチン接種率の高い国々でも、新規感染者数が増加しています。米国では、広く報道されている通り、デルタ変異株に直面しており、ワクチンを接種していない人の間で入院者数が急増しています。

ただし、新型コロナウイルス関連のニュースのすべてが懸念される内容ではありません。南アフリカでは、今月初めに新規感染者数がピークに達した後、ついに低下し始めました。米国では、大統領府の当局者が、アーカンソー、フロリダ、ルイジアナ、ミズーリ、ネバダなど、新規感染者数が増加しているいくつかの州でワクチン接種が増えはじめたと報告しています。議員が大きな尽力をし、死に直面している入院中の若者が報道されたことで、ワクチン接種に消極的な一部の米国人によるワクチン接種が促されました。ただし、これまで見られたように、新型コロナウイルスに関するネガティブなトップニュースは、市場の混乱を招く恐れがあります。

• 疑問視されるワクチンの有効性

イスラエルではワクチンの感染予防効果が大きく低下しているが、重症化の予防効果は依然として高い

有効性の高いワクチンの開発は、2021年の景気回復と株式市場の力強い回復にとってきわめて重要な役割を果たしてきました。そのため、新型コロナウイルスに対するワクチンの有効性が低下した場合、市場が神経質になる深刻な状況を引き起こす恐れがあります。

イスラエルのニュースが懸念されています。イスラエルの国家健康統計によると、ファイザー社のワクチンについて、6月20日から7月17日までの感染予防効果が39%に過ぎなかったと報告されました 1 。期間が一部重複している6月6日から7月3日の感染予防効果が64%と推計されていることを考えると、これは驚くべきことです 1 。調査の症例数が比較的少なかったため、ワクチンの有効性を評価する上で調査が正確ではなかった可能性があることには留意する必要があります。一方で、この推計が正確であったとすれば、2021年1月から4月初旬にかけての同数値が95% 1 だったことを踏まえると、非常に懸念されます。ただし、ファイザー社のワクチンによる重症化の予防効果が90%以上であったことは安心材料でしょう 1
ワクチンの有効性が実際に大きく低下した場合、その理由として、ワクチンの効果の低下が考えられます。追加接種をただちに受けなければならないのは厄介ですが、少なくともそれは、有効率の低下に対する解決策があることを意味します。ワクチンの有効性をより理解するためには、多くの国でデータを精査する必要があります。現在、英国では素晴らしい実験が行われています。デルタ変異株により新規感染者数が増加したにもかかわらず、マスクの着用や社会的距離などの新型コロナウイルスに関連する制限が7月19日に解除されました。ワクチン接種が英国民をデルタ変異株からどれだけ保護しているかについての状況を注視したいと思います。

• 米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めへの懸念

今週のFOMCではテーパリングの発表はないと予想するものの、今後のFRBメンバーの発言に注目

次に、米連邦準備理事会(FRB)があります。今週、米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。一部のFRBウォッチャーは、このFOMC会議でテーパリング(資産購入額の漸減)が発表されると予想していますが、それには時期尚早でしょう(8月に開催されるジャクソン・ホールでテーパリングが発表される可能性が高いと思います)。私は、パウエルFRB議長が細心の注意を要する綱渡りをしていることに共感を覚えます。パウエル氏は、FRBが正常化のプロセスを開始する際に非常に忍耐強く思慮深くなることを保証しながら、市場をテーパリングに備えさせています。しかし、パウエルFRB議長の綱渡りは今回のFOMCだけではありません。「シャークウィーク」が1週間以上続くように、「FRB関係者の発言」は夏中続きます。これには正面から向き合いましょう。特に、金融政策の正常化の開始に近づくにつれて、FOMC参加者の発言は市場を揺さぶる可能性があるのです。

• 米国の債務上限の問題

イエレン米財務長官は債務上限の問題に対して懸念を示す

今夏、株式市場を急落させる恐れのあるもう1つの問題は、差し迫る債務上限です。6月下旬、イエレン米財務長官は、債務上限の問題について警告しましたが、それはこの問題が米財務省の新規の国債発行と債務返済に影響を及ぼすためです。債務上限の引き上げには議会の承認が必要になりますが、それを可決することは、米国議会のかなりの分野において政治的な危険を伴うものであり、民主党と共和党の駆け引きがさらに激しさを増すことになります。7月31日に正式な期限を迎えますが、最近の経験に基づけば、政府は通常、「特別措置」を使って秋まで機能を続けることができます。ただし、合意に至るまでに時間がかかるほど、市場の変動性が高まる可能性があります。

もちろん、株式市場の急落のきっかけがどこからともなく出現したり、影に潜んでいたりするように見えることもあることから、今回取り上げたケース以外にも株価の急落をもたらすケースが存在するでしょう。

株価の急落に備えよ

今後の株式市場でボラティリティが高まる場面が予想されるものの、株式市場は現在を上回る水準で2021年を終えると見込む

まとめると、さらなる株価の急落への備えを怠らないでください。ただし、それは、株式市場が2021年の残りの期間において軟調に推移するという意味ではありません。堅調なファンダメンタルズと緩和的な金融および財政政策を考えると、株式市場は現在よりも高い水準で年を終えると予想していますが、途中で市場がしゃっくりをする可能性は十分にあります。そこで、次の株価の急落の前に、このシンプルでお馴染みのアドバイスを手元に置いておいてください:「落ち着いて、ポートフォリオの分散を保ちましょう。そして、現金を保有しているなら、株式購入の機会を探ってください。」。

1.出所:ニューヨーク・タイムズ、“Israeli data suggests possible waning in effectiveness of Pfizer vaccine”、July 23, 2021年7月23日

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

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