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米連邦準備理事会による早期利上げの示唆に市場は動揺

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〔要旨〕

市場にとって厳しい週に:米連邦準備理事会(FRB)が政策金利引き上げの時期を前倒しするというFOMC参加者の見通しが公表され、市場は動揺

しかし、必ずしも「ドットプロット」通りに利上げが実施されるわけではない:ドットプロットは拘束力のある契約ではない

市場にとって厳しい週に

株式市場や債券市場で動揺が見られたものの、その程度は限定的なものだった

必ずしも「ドットプロット」通りに利上げが実施されるわけではない

ドットプロットは、FOMC参加者の個々の見通しを示したものにすぎず、拘束力のある契約や確定した計画ではない

今後予想されることは?

不確実性が存在する中、多くの資産クラスにまたがって十分に資産を分散させながらも、幅広い株式への適切なエクスポージャーを維持することが重要

先週は、市場にとって厳しいものでした。米連邦準備理事会(FRB)が、債券購入額の削減(テーパリング)の見通しに言及したことに加え、政策金利引き上げの時期を2023年に前倒ししたうえ同年に想定される引き上げ回数を2回としたことで、投資家は動揺しているようです。そこで、本稿では、現在何が起こっているのか、そして、次に予想されることは何かについての考えを共有したいと思います。

市場にとって厳しい週に

株式市場や債券市場で動揺が見られたものの、その程度は限定的なものだった

メディア報道の見出しをみると、6月第3週は株式市場にとって2020年10月以来の最悪の週だったという記事が踊っています。しかし、これを整理してみましょう。米国の株式市場では、ほぼ1年の間、大きな売り局面がありませんでした。第3週は、ダウ工業株30種平均が2020年10月以来の急落を見せ、VIX指数は大幅に上昇しました。ただし、ダウ工業株30種平均の週間の下落率は3.45%にとどまり、S&P500種指数についてはわずか1.91%でした 1 。言い換えれば、この下落は2021年で最も大きい下落であったのかもしれませんが、それほど大したことはありませんでした。そして、世界の株式市場の急落はさらに限定的でした。

動揺したのは株式市場だけではありませんでした。先週、FRBの発表を受け、米10年国債利回りはジェット・コースターのように動きました。まず、水曜日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の発表とその後の声明とより、米10年国債利回りは1.6%近くに上昇しました 1 。しかし、その後、金曜日にはセントルイス地区連銀のブラード総裁による発言により下押し圧力が生じ、利回りは低下しました。ブラード総裁の発言は、早ければ2022年終盤の利上げを予想するというものでした 2 。同総裁の発言を受け、その日の午後、米10年国債利回りは一時1.44%を下回りました 1 。投資家は、FRBによる金融引き締め開始により、景気回復が鈍化すると予想し始めたことから、米国債を買う動きが強まり、利回りが低下したとみられます。

「ドットプロット」は投資家に懸念をもたらしたが、必ずしもこの通りに利上げが実施されるわけではない

ドットプロットは、FOMC参加者の個々の見通しを示したものにすぎず、拘束力のある契約や確定した計画ではない

FRBが市場にそのような影響を及ぼしていることは驚きではありません。FRBは、世界金融危機時に大規模な金融緩和政策を提供して以降、株式市場で大きな役割を果たしてきました。FRBは2008年以前と比較してはるかに積極的な役割を果たしてきたため、市場の動きは積極的な中央銀行が持つ影響の一部にすぎません。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が始まって以降、FRBは民間との密接な対話にますます焦点を合わせています。ただし、特に金融引き締めに関する場合は、完璧なコミュニケーションや問題のないコミュニケーションはあり得ません。先週、投資家を動揺させたようにみえたのは、事前に十分に伝えられていたテーパリングではなく、FF金利の金利予測分布図(ドットプロット)の変化でした(そして、ドットプロットは利上げの開始時期の前倒しを示唆していました)。2023年に2回の利上げが予想され、早ければ2022年後半の利上げ実施の可能性があるとの内容に、市場関係者は驚きと失望を覚えましたが、率直に言わせていただくとすれば、私は、市場の驚きに驚きました。現在の景気回復は世界金融危機後の回復よりもはるかに力強いことを考えると、利上げ開始の時期が早まる可能性は高いと言えるでしょう。

また、忘れてはならないのは、ドットプロットは、FOMC参加者の個々の見通しを示したものにすぎず、拘束力のある契約や確定した計画ではないということです。FRBから学んだことがあるとすれば、それは、近年、金融政策措置の適切な時期の評価において、より総合的に評価しているということです。厳重な目標達成は緩和され、より含みを持たせるようになりました。経済がより弱くなれば、FRBは2023年には利上げを実施しないかもしれないし、状況が許せば2022年にも利上げを開始するかもしれません。

今後予想されることは?

多くの資産クラスにまたがって十分に資産を分散させながらも、幅広い株式への適切なエクスポージャーを維持することが重要

月曜日(21日)には、米国と欧州の株式市場が一部上昇していますが、これは前向きな展開であり、株式市場の回復力を示しています。しかし、この夏、世界の株式市場が大きく下落する可能性は確実に残っています。現在は不確実性が存在している時期です。株式市場は比較的長い期間、大きな下落局面を経験せずに推移してきました。そして、FRBが金融政策の正常化を開始しようとするにつれて、FRBからのすべての発言に対して反応が強まっています。しかし、株価の下落は多くの投資家が求めていたものではないでしょうか?2020年以降、株式市場へ参入する魅力的な機会はほとんどありませんでした。大きな売り局面は、その機会になるかもしれません。投資家が戦術的な投資機会を利用するかどうかにかかわらず、長期にわたって自身の投資方針を維持すること、すなわち、多くの資産クラスにまたがって十分に資産を分散させながらも、幅広い株式への適切なエクスポージャーを維持することが重要だと考えています。

1.出所:ブルームバーグL.P. 過去の実績は将来のリターンを保証するものではありません。インデックスは、投資家が直接投資できるものではありません。
2.出所:CNBC、“Fed’s Jim Bullard sees first interest rate hike coming as soon as 2022”、2021年6月18日

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

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