IoTからIoAへ、ビジネスの未来はどう変わるのか

人とロボットが、それぞれの能力を活用しあえるネットワーク環境を構築する「IoA(能力のインターネット)」。IoT(モノのインターネット)に続く技術として、2024年には市場規模が2,069億ドルに達すると予想されています。

IoAがビジネスの未来におよぼす影響は、既存のビジネスモデルを一転させる、破壊的なスケールとなるかも知れません。

IoAとは?IoTやIoHとの違い

IoA、IoT、IoHといった言葉が続々と生まれている近年、何かをインターネットと接続していることは分かるけれど、「何を具体的に接続しているのかはわからない」という人も多いのではないでしょうか。IoAのコンセプトを理解するために、IoTとIoHの違いを簡単にご説明しましょう。

  • IoT(Internet of Things)モノ=デジタル・デバイスとインターネットを接続することにより、それぞれのモノから情報を取得し、その情報に基づきデバイスの操作やモニタリング、分析などを行う
  • IoH(Internet of Human)デジタル・デバイス経由で人間とインターネットを接続することにより、人間の動きや体の機能に関する情報を取得し、モニタリングや分析を行う
  • IoA( Internet of Abilities)AI(人工知能)やVR(仮想現実)、AR(拡張現実)といった先端テクノロジーと人間、インターネットを高次元で接続することにより、人間の能力を拡張する

「スーパーヒューマン」を創造するIoA

以上の説明から分かるように、IoAはIoTやIoHをさらに進化させたテクノロジーです。

「高次元」とは、デバイスを介したモニタリングや分析にとどまらず、人間と最先端テクノロジーを複雑に融合させ、人間に本来備わっている知的能力・身体能力・認知能力を拡張・強化することを指します。

人間と機械が一体化し、それぞれの能力を拡張させるという意味で、「ヒューマン・オーグメンテーション(human augmentation)」と称されることもあります。将来的には、人間×機械という組み合わせだけではなく、人間×人間という組み合わせが実現する可能性も、十分に考えられます。

まるでSF映画の世界のようですが、IoAは通常の人間の能力を超えた「スーパーヒューマン」を創造する、究極のテクノロジーといえるでしょう。

実用化に向け、開発が加速 AI×ウェアラブルデバイスが追い風に

現時点においては、特にヘルスケアの効率化や軍隊の強化を目的とする活用が進んでいますが、AIと連結可能なウェアラブルデバイスの登場などが追い風となり、今後、広範囲にわわたるビジネス領域で、急速に開発および普及が加速することが予想されます。

市場調査会社MarketsandMarketsは、IoA市場が2019年には709億ドル(約7兆7288億円)に達し、2024年までに2069億ドル(約22兆5558億円)に成長すると見込んでいます。

「脳と機械の対話」や「脳へのダウンロード」が可能になる?

すでに実用化されている事例と、今後開発がさらに加速すると予想されているアイデアを、いくつかご紹介しましょう。

重労働の安全性と効率性を向上するロボティックスーツ

IoAを活用した作業用スーツは、肉体労働者が重いものを持ち上げる際、筋肉を傷めないようコントロールできるほか、より多くの重量を安全に持ち上げることを可能にします。そのため、肉体労働者の体への負担や作業場での事故が軽減されるだけではなく、作業の効率化が期待できます。

「脳と機械の対話」を可能にする、ブレインマシーン・インターフェイス(BCI)

BCIは、外部デバイスやインプラントで脳と機械を接続し、脳波や脳活動を利用することにより、ユーザーが頭で思い浮かべたこと(言葉や画像など)をコンピューターに伝えるテクノロジーです。

実用化にはまだほど遠い段階ですが、将来的にはキーボードやコンピューターの操作が不要になるため、人間とコンピューターがより自然に融合された形で、作業を進めることが可能になるかも知れません。

新たな知識やスキルを脳にダウンロード?

すでに、マイクロチップを体内に移植し、キャッシュレス決済やカギ代わりに利用するという手法が現実化しています。

一部の科学者は、先端のIoAテクノロジーがこうした潮流を先取りし、人間の脳に埋め込まれたメモリチップに、新しい知識やスキルをダウンロードできる可能性を想定しています。

実現化に至った場合、社内研修やスキルトレーニングなどに費やす時間やコストが大幅に縮小されるほか、常に最新の知識とスキルを備えた「スーパーワーカー」の存在により、業務効率が著しく向上すると期待されます。

このように、IoAは人間の想像をはるかに超えたソリューションとビジネスモデルを創造し、人間と機械が密接して共存する未知の世界を構築していくことでしょう。

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