「キャリアアップのために」「現状を打破するために」「新たな挑戦のために」、早期退職をしたいと思っている人は少なくないでしょう。
「早期退職後に再就職して収入が上がった」という成功談は、よく聞きます。しかし「思うように再就職できず収入が下がった」「無職期間が長引いて貯蓄が底をついた」という失敗談も、同じくらいあるのです。
「こんなはずじゃなかった」と後悔する前に、早期退職で失敗する人と成功する人の違いを見ておきましょう。
目次
早期退職プログラムは、定年を迎える前に自分の意志で退職を選択できる制度です。
企業によって制度の呼び方が異なり、「早期退職者(優遇)制度」や「(早期)希望退職制度」などと呼ばれることもあります。
早期退職は、臨時募集と恒常的な制度の2種類に大別できます。
-早期退職者の臨時募集
臨時募集は事業縮小に伴う人員削減、アウトソーシング導入のための人員整理などを目的に行われます。業績が悪化しているときに行われるケースが多いですが、業績が好調でも行われることがあります。
-恒常的な早期退職者制度
恒常的な制度は、一定の年齢や勤続年数を超えた者が自分の都合で退職を選択できる制度です。
厚生労働省による「高年齢者雇用安定法」により、雇用者には「定年年齢の引き上げ」や「定年後の継続雇用」など、65歳までの雇用確保に向けた取り組みが義務付けられました。恒常的な早期退職者制度を設けることで、「定年前に新しい挑戦をしたい労働者の意向とのバランスを取る」という見方もできます。
一般的に、退職金に割増金が上乗せされます。厚生労働省の「労働条件総合調査」では、定年退職による平均退職金額は1,605万円、早期退職による平均退職金額は2,087万円と大きな開きがあります。
恒常的な早期退職者制度では、再就職支援など労働者の選択を応援する優遇措置を設けているところもあります。
早期退職者制度は、40代後半から50代以上、勤続年数25年以上など、ある程度長く勤めた労働者を対象とするものが多いです。
そのため、これまでに転職経験がないという人が多く、以下のような失敗に陥りやすいといえます。
「割増退職金があれば、住宅ローンを完済できる」と、再就職の準備どころか退職後のビジョンもないまま退職してしまうケースです。
ローンは完済できても退職金は底をつき、無職期間の生活費すらままならないということになりかねません。
割増退職金や成功者の体験談など、「都合の良い条件」だけを見て安易に決断するのは危険です。何よりも、退職後の自分はどうしたいのか、そのために何をすべきなのか、深く検討することが大切です。
「自分のスキルやキャリアがあれば再就職できるだろう」と、転職準備や情報収集を怠ったまま退職してしまうケースです。
社内の評価と市場価値は異なります。社内評価が高くても、市場価値が低い場合は転職活動が難しくなります。企業が何を求めているのか、しっかり情報を収集して自分の価値を見極めることが大切です。
取引先や同業他社の「うちに来てほしい」といった社交辞令を真に受けて、「辞めたらすぐに声がかかる」と勘違いしてしまうケースもあるでしょう。少なくとも本当に取引先や同業他社に再就職できるのか、また待遇なども確認してから退職しましょう。
「夢がある」「今より上を目指す」「新しい職種に挑戦する」などと言い訳をしながら、ずるずると無職期間が長引いてしまう人もいます。収入がないまま支出がかさみ、早々に退職金を使い果たすケースです。
上を目指すことは悪いことではありませんが、「いつまでに結果を出す」といったタイムリミットや「この条件を満たせば成功とする」といった定義を決めておかないと、いつまでも上を見続けてしまいます。
まずは、何ヵ月分の生活費があるのか、子どもの教育費など今後の出費の予定はどうなっているのかなど、ライフプランの確認と計算を行いましょう。また、家族ともしっかり話し合うことが大切です。
自己評価が市場価値よりも高い人も、失敗しやすいタイプです。
同期や部下などに早期退職成功者がいる場合は「あいつができるなら、自分にもできるはずだ」と思い込み、「自分があいつより下のはずがない」と条件の良い再就職先を探し続けることになります。
過去の人間関係に基づくしがらみやプライドに囚われていては、どこに再就職しても不満を感じることになるでしょう。客観的に自己分析を行い、自分の市場価値を高める方向に目を向けることが大切です。
世間的な評価が高い大企業を退職した場合や、前職で大きな成果を残した場合などは、その成功をいつまでも引きずってしまい、新しい環境になじめないことがあります。
引き抜きや経験者優遇などでポストを用意されていたとしても、再就職先では「新しく来た人」であり、最初はその会社のやりかたを教えてもらう立場です。「自分は成功者だ」と上から目線でいると、そのうち居場所がなくなってしまうでしょう。
過去は過去として切り離し、新しい環境を楽しむくらいの余裕を持ってはじめて「次の成功」につながるのではないでしょうか。
実績を評価されて再就職した場合などは、「自分のやり方」が認められたと感じるものです。しかし過去にこだわりすぎると、次第に評価が下がるでしょう。
同業種であっても、前職で有効な手段がそのまま転職先でも通用するとは限りません。「これが自分のやり方だ」とかたくなに押し通せば、職場の人間関係にも支障が出るでしょう。
「自分のやり方の、どの部分が転職先に認められたのか」を客観的に分析しましょう。新しい職場に合わせて、自分のやり方をアップデートすることが大切です。
退職は、その後の人生に大きな影響を与えます。誰にも相談することなく自分一人の考えで決めるよりも、第三者からの評価やアドバイスが大いに役立つでしょう。
最終的な決断の前には、家族に伝えて理解と同意を得ることも大切です。
-適切な相談相手とは
相談相手によっては偏った判断で思わぬ方向へ誘導されたり、転職活動の妨げになったりする場合もあります。親身になって、客観的かつ建設的なアドバイスをしてくれる相談相手を探しましょう。
・OB・OGなど
早期退職経験者に話を聞ける場合は、成功の理由や苦労したこと、転職活動の具体的な事例などが参考になるでしょう。
・厚生労働省「おしごとアドバイザー」
キャリアコンサルタント有資格者に、メールや電話で相談できる無料の窓口です。メール受付は24時間、電話は平日・土日祝日ともに21時まで対応しているため、忙しい人でも相談できるでしょう。
公的機関なので、特定の就職先を執拗に斡旋されるといった心配もありません。
・ハローワーク
ハローワークでも、無料で転職の相談ができます。求人検索や職業訓練の申し込みもでき、キャリアアップや他業種への転職に向けたサポートも受けられます。全国各地域の窓口は平日夕方まで、土曜日は月1~2回程度の開庁ですが、一度登録するとオンラインの情報検索も利用できます。
成功をつかむためには、どうすればよいのでしょうか。
綿密な情報収集を行い、退職後のビジョンやプランニングを明確に描くこと、そのために必要な努力を怠らないことが重要です。また、客観的な自己分析を行い、自分のスキルやキャリアを確認し、市場価値を高めるためのアップデートも行いましょう。
そして何よりも、変化を恐れない柔軟性を持つことが大切なのではないでしょうか。
以前は、早期退職は自ら安定を手放す「賭け」でした。しかし、昨今は「早期退職はチャンス」という見方もあります。
ただし世代的に家族がいる可能性が高く、教育費が多くかかるタイミングであることは軽視できません。失敗を避けるために、慎重に検討することをおすすめします。
Wealth Roadを読んで投資のヒントを得ながら、資産運用することで経済的なゆとりを目指すこともよいでしょう。
いつ早期退職に直面しても対応できるように、日頃から情報収集を行いましょう。常に自分自身の市場価値を高める努力を怠らないことも大切です。