『№1ストラテジストが教える 米国株投資の儲け方と発想法』より一部抜粋
(本記事は、菊地 正俊氏 著書『№1ストラテジストが教える 米国株投資の儲け方と発想法』=日本実業出版社、2021年1月26日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
※本記事は、ご参考として書籍をご紹介しているものであり、
証券会社は個人投資家向けに米国株の個別銘柄、ETF、投信などの営業を強化しています。
最大手の野村証券では米国株の700銘柄程度の注文を受けています。売買手数料は約定代金が20万円までの場合、オンライン注文であれば2389円、電話注文の場合2986円です。
オンライン証券最大手のSBI証券は米国株式投資サービスで、「①手数料が魅力〜業界最安水準の最低0ドル、②米国貸株サービス〜保有株式を貸し出すことで金利収入が得られる、③米国株式逆指値注文〜株価下落時のリスクを抑える、④外貨入出金サービス〜住信SBIネット銀行からSBI証券への外貨入出金は無料」を売りにしています。また、米国株式決算速報ニュースをSECで公表された米国企業の臨時報告書に基づいて作成し、発表後30分程度でニュースを配信するとしています。
マネックス証券は取引できる米国株銘柄数が2020年7月時点で3674銘柄と、SBI証券の3597銘柄や楽天証券の2941銘柄を上回り、主要ネット証券で1位だと謳っています。売買手数料も約定金額が1.11ドル以下は無料、約定金額が4444ドル以上は20ドルとお手頃な手数料だとしています。日本語で米国株投資情報の提供や米国株月次オンラインセミナーなども行なっています。
楽天証券のWebには米国株式や米国ETFの売買代金ランキング上位20が掲載されており、日本の個人投資家にどのような米国株が人気かわかります。たとえば2020年11月22〜28日の売買代金のトップ3はテスラ、ヘルスケアのグッド・アール・エックス、モデルナでした。ETFの売買代金のトップ3はバンガードS&P500ETF、バンガード・トータル・ストック・マーケットETF、インベスコQQQトラストでした。
投資できる個人投資家に税制優遇することで株式や投信を通じての資産形成を促進する「一般NISA」は2014年1月にスタートし、新規投資額は年120万円を上限に、投資可能期間は2014〜2023年になっています。
2018年1月にスタートした「つみたてNISA」は新規投資で年40万円を上限に、投資可能期間は2018〜2037年です。
一般NISAは個別の米国株も投資対象になりますが、「つみたてNISA」は①販売手数料がゼロ(ノーロード)、②信託報酬が一定水準以下(国内株式インデックス投信の場合0.5%以下)、③信託期間が無期限または20年以上などの条件を満たす投信に限られます。
インデックス投信は158本、インデックス以外のアクティブ投信は18本になっていますが、このなかには米国株を対象としたものもあります。
インデックス投信となると、残念ながらTOPIXや日経平均より、S&P500のパフォーマンスが良いことは個人投資家でも知っています。そのため、日銀のETF購入を除くと日本株投信の残高が伸び悩む一方、日本における米国株投信の残高は2020年10月末に11兆円と3年前比で倍増しました。米国株は長期的に右肩上がりなので、積立投資に向いているといえます。
S&P500を対象とする「つみたてNISA」用投信は各運用会社から8本出ています。楽天投信投資顧問が約3400の米国株を投資対象にする「全米株式インデックス・ファンド」を出していますが、これはバンガードのトータル・ストック・マーケットETFへ投資する投信です。
ナスダックを対象にしたインデックスファンドがないのは、ナスダック指数はボラティリティが高いうえ、ナスダックを対象にした手数料が高い投信もあるので、「つみたてNISA」用にナスダック投信を用意する必要がないとの考えがあるようです。米国株アクティブ投信ではフィデリティの「米国優良株・ファンド」が「つみたてNISA」用の唯一の投信です。
米国株投信を通じて米国株へ投資みずほ証券の福家尚文副社長は、2020年6月29日発売の週刊東洋経済におけるモーニングスターの朝倉智也社長との対談で、「大半の日本人は『日本に住んで、日本の企業で働いて、日本円で報酬を得て、日本円で貯蓄する』行動様式を取ってきた。
しかし、世界に占める日本の比率が、人口やGDPをはじめとしてどんどん小さくなっている事実に目を向ける必要がある。今後50年、その縮小スピードはますます速くなる。中長期的に安定的なリターンを実現するには、長期・分散・継続の投資で一定のリスクを取ることが不可欠だ。日本の家計の豊かさの増進に貢献したい想いから『グローバル・エクイティ戦略』を打ち出した」と述べました。
2016年9月に、世界株式の分散投資で日本の家計に投資の成功体験を積み上げるために、「グローバル・ハイクオリティ成長株式ファンド(愛称:未来の世界)」を設定しました。
設定はアセットマネジメントOneが行ないましたが、実際の運用はモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントが行なっています。
この投信はグローバル版に加えて、新興国、先進国、年2回決算型、ESG版が設定されて、合計運用資産は2兆円近くに達しました。
「グローバル・ハイクオリティ成長株式ファンド」は、持続可能な競争優位性を有し、高い利益成長が期待される企業のうち、市場価格が理論価格より割安と判断される銘柄を厳選してポートフォリオを構築します。
銘柄選択は定量スクリーニング、情報ネットワーク(企業経営者、業界専門家等との面談)、パターン認識(成功企業のビジネスモデルを地域・国・業界等異なる企業に当てはめる)、ディスラプティブ・チェンジ分析(新しい価値が既存の価値にどのようなインパクトを与え、長期的かつ巨大な変化になるのかを大局的に見極める)に基づいて行ないます。
日本の個人投資家は日本株から、米国株投信や外国株投信へシフトしています。2020年10月末の純資産は日本株アクティブ投信が前年同月比4兆円減の43兆円になった一方、米国株投信は同約3兆円増の11兆円となりました。
日本で純資産が大きいグローバル株式投信も日本株の比重が極めて小さく、11月末時点で純資産が約1兆円と最大になっている「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(愛称:グロイン)」は、日本の高配当利回り株にも投資できるのに、66%が北米、29%が欧州になっており、日本株はほとんど投資していません。組入上位銘柄は、ネクストラ・エナジーやドミニオン・エナジーなど米国の電力会社です。
純資産が急増しているアセットマネジメントOneの「グローバル・ハイクオリティ成長株式ファンド」は64%を米国、15%を中国株に投資し、日本株比重は2%に過ぎません。
9月末時点の組入上位銘柄は1位がアマゾン、2位がマスターカード、3位がズームでした。
純資産が約6000億円の三井住友トラスト・アセットマネジメントの「次世代通信関連世界株式戦略ファンド(愛称:THE 5G)」の国別組入比率は米国株の65%に対して、日本株は8%です。
純資産が約5700億円の日興アセットマネジメントの「グローバル・プロスペクティブ・ファンド」は、破壊的イノベーションを起こしうる企業に投資する投信ですが、日本にそうした企業がないと思われたのか、日本株の組入比率は0.8%に過ぎず、米国株が84%組み入れられ、組入1位はテスラになっています。
同じ日興アセットマネジメントの「グローバル・ロボティクス株式ファンド」は、日本が強みを持つロボティクス領域に投資するため、米国株の45%に対して、日本株も30%組み入れられています。
日本の個人投資家が日本株投信を利食う一方、米国株投信や外国株投信への投資を増やしていることが、日米株の相対パフォーマンス格差に寄与しているといえます。
菊地 正俊(きくち まさとし)
みずほ証券エクイティ調査部チーフ株式ストラテジスト。1986年東京大学農学部卒業後、大和証券入社、大和総研、2000年にメリルリンチ日本証券を経て、2012年より現職。1991年米国コーネル大学よりMBA。日本証券アナリスト協会検定会員、CFA協会認定証券アナリスト。日経ヴェリタス・ストラテジストランキング2017~2020年1位。
著書に『アクティビストの衝撃』(中央経済社)、『相場を大きく動かす「株価指数」の読み方・儲け方』『日本株を動かす外国人投資家の儲け方と発想法』(日本実業出版社)、『良い株主 悪い株主』『外国人投資家が日本株を買う条件』『株式投資 低成長時代のニューノーマル』(日本経済新聞出版社)、『なぜ、いま日本株長期投資なのか』(きんざい)、『日本企業を強くするM&A戦略』『外国人投資家の視点』(PHP研究所)、『お金の流れはここまで変わった』『外国人投資家』(洋泉社)、『外国人投資家が買う会社・売る会社』『TOB・会社分割によるM&A戦略』『企業価値評価革命』(東洋経済新報社)、訳書に『資本主義のコスト』(洋泉社)、『資本コストを活かす経営』(東洋経済新報社)がある。