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米国経済への楽観

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2021年の力強い景気回復を示唆する7つの理由

〔要旨〕

消費できることを心待ちにする人々:企業や一般世帯は、ワクチンが十分に供給されたのちの消費への意欲を深めている

多くの人々が十分な資金を保有:パンデミック下で米国の家計資産は増加し、経済活動の再開後への十分な資金を保有

米国経済の見通しは非常に明るい:リスクは存在するものの、その程度は低いと見込む

力強い米景気回復を示唆する7つの理由
①経済危機の性質とその解決策、②ワクチンに関する進展、③家計貯蓄の増加、④米景気刺激策第5弾の成立、⑤力強い雇用の回復、⑥消費者心理の改善、⑦ペントアップ需要(繰り越し需要)—が、米景気の力強い回復を支えると見込む

株価上昇の継続を予想
①米国企業の利益予想の上方修正、②緩和的な金融政策―が株価の上昇を支えると見込む

結論
ワクチンの普及、政府と中央銀行の行動により、米国経済への明るい見通しを維持

「K字型」景気回復の中にいる米国
私の日課は、町の様々な店舗を回り、米国経済の状況を観察することです。前週末、地元の自動車販売店で、50年以上その業界で働いている自動車のセールスマンと話をしました。彼は、とても奇妙な経済状況を目にしている、と話してくれました。自動車の販売台数が増加している(その日、4台販売していました)一方で、多くの人が店をのぞいて求人情報を確認しているというのです(彼らは6カ月または9カ月間失業中のようです)。これは、今、私たちが「K字型」景気回復の中にいること、すなわち、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大(パンデミック)の中で、家計の見通しが改善した人もいれば、悪化した人もいることを表しています。しかし、以前も述べた通り、私は米国の景気回復について非常にポジティブに考えており、その回復は経済全体として、よりしっかりとしたものになると考えています。本稿では、その理由を説明します。

2021年の力強い景気回復を示唆する7つの理由

1. 経済危機の性質とその解決策

ワクチンの普及こそが景気回復を大きく加速させるためのカギ
過去に経験した危機、特に2000年代後半の世界金融危機後の景気回復は、企業や一般世帯が時間をかけて自信を取り戻し、支出を再開することに依存していました。一方で、今回の危機は過去のものとは大きく異なります。経済的な封鎖を余儀なくされた人々は、その多くが、経済活動の再開によって消費を楽しめる生活を心待ちにしています。不況期でよく見られるような、自信の欠如は見られません。企業や一般世帯はワクチンが広く行き渡ることを待ちわびており、ワクチンの普及こそが景気回復を大きく加速するためのカギになると、私は考えています。

2. ワクチンに関する進展

米国は今夏に集団免疫を獲得する可能性も
米国のワクチンの供給には、目を見張る進展があります。前週、バイデン政権は、米国内の全成人に対するワクチン接種のスケジュールを、再度前倒しにしました。これは、米国が今夏に集団免疫を獲得できる可能性があることを示唆しています。

3. 家計貯蓄の増加

多くの米国人が消費に回す資金を十分に保有している見込み
前週、米連邦準備理事会(FRB)は、2020年末の家計金融資産が130兆米ドルを超える水準となり、2019年と比べて12兆米ドル増加したと公表しました 1 。言い換えれば、パンデミック下で家計の資産は10%増え、「K字型」景気回復による恩恵を受けた多くの米国人の家計は、危機を通じて改善したということです。これにより、米国の経済活動が再開したときに、消費に回る資金は十分にあると考えられます。

4. 米景気刺激策第5弾の成立

景気刺激策第5弾は2021年後半の景気回復をより強固なものにするだろう
前週、米国の景気刺激策第5弾が成立しました。これは、「K字型」景気回復の下で苦しんでいる多くの米国人、すなわち、パンデミックから最も悪影響を受けた人々を支援するはずです。そして、今回の1.9兆米ドルの景気刺激策は、2021年後半の景気回復をより強固なものにすると見込まれます。

5. 力強い雇用の回復

旅行・レジャー業や中小企業は新規雇用を増加
景気刺激策は一時的な効果をもたらしますが、景気回復を継続させるためには、「K字型」景気回復の恩恵を受けていない人々が雇用されることが必要でしょう。現在、企業は経済活動の本格的な再開に先んじて、新規雇用を増やし始めているようです。2月の雇用統計では非農業部門雇用者数が37万9,000人増加しましたが、その多くは旅行やレジャーなどのパンデミックの打撃を受けた業種からのものでした 2 。また、全米自営業者連盟によると、中小企業経営者の約18%が今後3カ月以内に新規雇用を増やすことを計画しています 3 。

6. 消費者心理の改善

消費者心理はパンデミック開始前の水準に戻り、特に期待指数の上昇が顕著
3月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は83.0に上昇し、パンデミックが始まった2020年3月以来の高水準を記録しました4。調査責任者のカーティン氏は、「ワクチン接種者数の増加やバイデン政権の追加経済対策への期待から、消費者信頼感指数は3月初めに1年ぶりの高水準を記録した」と述べました。特に、経済再開への消費者の大きな期待から、期待指数の上昇が顕著になりました。

7. ペントアップ需要(繰り越し需要)

ペントアップ需要への消費行動が年後半に見込まれる
繰り返しになりますが、使われるのを待っている多くのお金が存在しています。フリートウィーク(米国海軍の伝統行事で、軍艦が主要都市に1週間滞在する)中にニューヨークに滞在したことのある人であれば、長期にわたる船上での任務の後でニューヨークを心行くまで楽しむ船員たちのことを、つまり、消費を我慢した後の繰り越し需要がどのようなものであるかを、ご存じだと思います。私たちは今、パンデミックによるペントアップ需要を抱えています。ファイナンシャル・アドバイザーをしている長年の友人とその顧客である富裕層との話題は、ワクチン接種後にレストランに行き、ショッピングモールで買い物をし、飛行機に乗って旅行するなど、再び人生を楽しむことができる日々とのことです。そして、そのために多くの資金が準備されています。私は、このような消費行動が2021年の後半を通して続くのではないか、と予想しています。

力強い景気回復を支える要素

消費への準備や意欲、十分な資金など、強固な景気回復を支える要素が存在

米国には、力強い景気回復を後押しするすべての要素が存在しています。米国人は消費する準備ができており、それを望み、そしてお金を費やすことができます。ただし、前向きな経済見通しの中にも、リスクは存在しています。新型コロナウイルスの感染者数の急増により経済再開が遅れるリスクや、現在のワクチンの有効性が明らかでない変異株ウイルスの発生により、景気回復の道筋が大きく崩れるリスクです。ただし、私は、そのリスクは低いものと考えています。

株価の上昇は続くのだろうか?

①米国企業の利益予想の上方修正、②緩和的な金融政策―が株価の上昇を支えると見込む

米国株式は、パンデミック後の急落後から力強い上昇を見せていますが、私は株価の上昇は続くと予想しています。なぜ私が持続的な明るい見通しを持っているのか、その理由を以下に示します。

・3月12日現在、S&P500種指数構成銘柄の対前年比の増益率予想は、2020年末の+15.5%(推定値)から+22.1%に上昇しています 5 。これは2018年7-9月期以降で最大の増益率となります。また、暦年ベースでの2021年の増益率も、昨年末時点の+22.6%から+24.3%へと上昇しています。

・FRBの金融政策は引き続き緩和的です。パウエルFRB議長や米連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーは、「忍耐強く緩和的」な姿勢を維持し、インフレの大幅な上昇を「一時的」と見込んでいるため、年内の利上げはないとの発言を繰り返しています。今週、FOMCが開催されますが、パウエル議長は2021年の利上げを改めて否定し、市場関係者に安心感を与えるだろうと予想しています。

私の米国の株式市場への明るい見通しには、リスクが存在することも確かです。それは、株価バリュエーションと長期金利です。

S&P500種指数のバリュエーションは過去平均を上回っている一方で、2021年の利益予想には上方修正が見られる

現在のS&P500種指数のバリュエーションは過去の平均を上回っています。株価収益率(PER)の21.9倍は、過去5年間の平均である17.7倍および過去10年間の平均である15.8倍よりも高い水準です 5 。ただし、2020年末の同22.5倍よりは低下しており、これは、2021年の増益予想の高まりが株価の上昇を上回っていることを示しています。2020年末から、S&P500種指数(プライスリターン)が4.9%上昇している一方で、1株当たり利益予想が7.7%高まっていることは、重要な点でしょう 5 。さらに、バリュエーション水準は、株価の短期的なパフォーマンスにほとんど影響を与えないこともお知らせしておきます。

米国金利の上昇による株価の下落は、投資環境の変化を消化する短期的なものとなろう

米10年国債利回りの上昇は、好景気下では、常に起こりうることです。そして、米10年国債利回りが2%の水準に達した場合、株価への影響を懸念する声があります。私は、力強い経済成長を予想しており、長期金利が2%に上昇する可能性は十分にあると考えますが、それは経済環境の変化を消化するための、短期的な株価の下落をもたらすだけであると考えます。そして、以前にも述べたように、FRBが長期金利を引き下げるための介入を行う可能性もあるでしょう。前週、欧州中央銀行(ECB)は資産購入額を増やすと発表しました(ただし、これはイールドカーブ・コントロール政策ではありません)。今週のFOMC後の記者会見では、米国のイールドカーブ・コントロールやツイスト・オペレーションの可能性について、パウエルFRB議長から何らかの発言があるかもしれません。

結論

ワクチンの普及、政府と中央銀行の行動により、米国経済への明るい見通しを維持

本稿で示した楽観的な見通しは、私の単なる思い付きではないと考えます。①新型コロナウイルスのワクチン開発・供給のための大規模な科学と物流面の取り組み、②複数回にわたる景気刺激策を提供した政府の行動、③忍耐強く緩和的であり続けるという中央銀行の取り組み—を踏まえた上での見解です。パンデミックが始まって以降、私は危機に対処するためのさまざまなアプローチを提唱してきましたが、私たちがそれらの恩恵を享受できる日は近いと考えています。

1.出所:米連邦準備理事会、” Household net worth defined by total assets minus liabilities”。
2.出所:米国労働省労働統計局、2021年3月5日。
3.出所:全米自営業者連盟、2021年2月雇用リポート。
4.出所:ミシガン大学、2021年3月12日。
5.出所:ファクトセット・リサーチ・システムズ、2021年3月12日。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジス

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