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GameStop株の乱高下とFRBのインフレへの視線

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市場で投機的な動きが見られる中、FRBはインフレ懸念を一掃

〔要旨〕

政策金利は長期的に低位に維持される見込み:パウエルFRB議長の早急な金融引き締めを否定する発言に、市場は安堵

低利回り環境の継続:投資家は高配当株式を検討すべき時期と考える

GameStop株の乱高下:個人投資家の投機的な行動に注目が集まる

パウエル議長はインフレ懸念を一掃
パウエル議長は、①春先の一時的なインフレ率の上昇は静観する、②「問題となる」レベルのインフレが発生する可能性は非常に低い—と強調

高配当株式を検討する時期か?
①企業利益とキャッシュフローの改善、②配当実施企業の規律の高さ、③高配当銘柄の株価のボラティリティの低さ—などから、投資家は高配当株式を検討する時期にある

個人投資家の投機的な行動によりGameStop株が急騰
金融市場の一部において投機的な行動の高まりが見られる

株式市場の混乱は続くのか?
投資家は、投機的行動に目を奪われず、ファンダメンタルズ動向に集中すべき

パウエル議長は、資産買い入れの縮小開始の議論は時期尚早との考えを示す

前週、米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれ、私の予想通り、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、資産買い入れの縮小(テーパリング)の開始を議論するのは時期尚早だとの考えを示しました。会合後の記者会見で、パウエル議長は、景気回復の鈍化が続いているとの懸念を示し、経済を支えるため手段について多すぎるよりも少なすぎる方が問題だと強調しました(その前の週、米国財務長官のイエレン氏も同様の懸念を示していました)。また、FRBが直ちに金融政策を引き締めに転じることはない、とも言及しています。今後しばらくの間、インカムを生み出す資産クラスの利回り環境は低水準であることを想定しておくべきでしょう。

パウエル議長はインフレ懸念を一掃

FRBは、春先にインフレ率が上昇したとしても、それは一時的と想定

パウエル議長は、今後のインフレ率について、比較対象となる前年数値が非常に低いため上昇する見込みであるものの、FRBはその上昇は一時的なものと想定しており、静観する考えだと述べています。実際の彼の発言は、「2020年3月と4月のインフレ率が非常に低水準だったことの反動から、1年後のインフレ率はある程度上昇するだろう。」「…ただし、その上昇は一時的なものだ。」というものです。

FRBはインフレの上昇に対し即座に行動を起こさない見込み

また、パウエル議長は、ワクチンが広く供給され、景気がより堅調に回復したとしても、FRBはインフレの上昇に対して即座に行動を起こさないことを強調しました。「経済活動が完全に再開すると、人々がパンデミックの収束を歓迎し、支出が急速に増える可能性がある。そして、支出の急増はインフレに対し上昇圧力を与えるだろう。」「繰り返しになるが、この物価上昇は一時的かつ、過度に大きなものではないと見込まれる。私たちがとるべき道は、辛抱強くなることだ。」とパウエル議長は述べています。

2021年中の政策金利は現状が維持される見込み

パウエル議長はさらに踏み込んで、インフレが大幅かつ持続的に上昇する懸念についても、その懸念の熱を鎮めるような発言をしました。インフレ動向は時間とともに進行するが、「急速に変化することはない」とし、長年にわたりディスインフレ圧力が存在したため、「問題となる」レベルのインフレが発生する可能性は非常に低いと強調しています。高水準のインフレを引き起こす要因として、まず挙げられるものは、単位労働コストの上昇です。しかし、労働市場にはまだかなりの緩みがあり、労働コストの上昇はすぐには起こらないことが想定されます。まとめると、私は、政策金利は少なくとも2021年中は現在の水準が維持されると予想します。米10年国債の利回りは1月初めに大幅に上昇しましたが、その後わずかに低下し、1月29日時点で1.07%と、依然として比較的低水準にあります 1

高配当株式を検討する時期か?

伝統的な資産からインカムを得るためには、高配当株式を検討する時期にある

冒頭で述べたように、当面の間、インカムを生み出すさまざまな資産クラスの利回りは低水準な環境に陥るでしょう。そのため、私は、投資家が伝統的な資産からインカムを得るためには、高配当株式を検討する時期にあると考えます。理由としては、以下があげられます。

・企業利益とキャッシュフローが改善したため、昨年のような大幅な減配は、今年は発生しないと考えます。現状、配当の増加も確認されています。

・配当は、現金支払いのコミットメントであり、企業をより規律づける特徴があります。つまり、企業は自らの事業の選別により厳しい視線を向けます。それは企業の株主資本利益率(ROE)を高める効果があります。

・高配当の株式は、配当を支払わない株式よりもボラティリティが大幅に低い傾向があります 2 。これは、困難な環境下において、投資家は配当という収入が得られる見込みのある株式を売却する可能性が低いためです。

個人投資家の投機的な行動によりGameStop株が急騰

超緩和的な金融政策の影響から、市場における投機的な行動が見られる

伝統的な資産における利回りの低さは、超緩和的な金融政策の影響であり、これは必要悪とも言えるでしょう。そして、超緩和的な金融政策のもう1つの影響は、市場における投機的な行動が高まることであり、前週はGameStop株に投資家の視線が集中しました。

一部の銘柄への個人投資家の人気が高まる

何が起こったのでしょうか?GameStopは、「オールドエコノミー」なビジネスモデル(ショッピングモール内にあるビデオゲームストアの運営)を展開しており、その経営は困難に直面しています。しかし、1年以上の間、少数ながら熱心な投資家グループはGameStopの株式とそのコールオプションを購入し、またソーシャルメディアサイトでの議論を盛り上げ、GameStop株への個人投資家の人気が高まっていました。同様のことは、AMC、Blackberryなど、現在、その経営が逆風に直面している銘柄にも起こっていました。

個人投資家の投機的な買い上げとヘッジファンドの損切りより、GameStop株価は高騰

その後、この投資家たちは、多くのヘッジファンドがGameStop株を空売りしていることに気づきました。ヘッジファンドが、株価の下落を見越したポジションを取っていたということです(空売りは、ヘッジファンドが利益を上げるための一般的な戦術で、反対に株価が上がると損失を被ります)。個人投資家はソーシャルメディアにGameStopの名を広め、GameStop株を買い上げ、ヘッジファンドを「ショートポジションの解消」へ陥れる行動を取りました。この結果、ヘッジファンドは、ショートポジションの損失がさらに拡大する前に損切りすることを余儀なくされ、これは同社の株価のさらなる高騰を招きました。

株式市場におけるボラティリティも急上昇

個人投資家による買い上げの行動により、GameStop株の時価総額は、2020年夏時点の10億米ドル未満から、現在220億米ドル以上に上昇しました 3 。そして、GameStopやその他の銘柄の株価のボラティリティの高まりは大きな物議を醸し、一部の証券会社は個人投資家の取引制限に動いています。前週の株式市場全体におけるボラティリティの高まりは、これらの銘柄への投機的な行動によるものが一因だとみなされました。

株式市場の混乱は続くのか?

超緩和的な金融政策が、市場のバブル発生や投機行動の高まりなどの意図しない結果を引き起こすことがある

今回の一連の投機的な行動により、株式市場がバブルの様相を見せたり、より不安定な動きとなることが懸念されています。急激な価格上昇は、厳しい経営環境下にある一握りの株だけではなく、ビットコインなどの暗号資産にも見られています。私たちは、非常に緩和的な金融政策は、金融市場の一角において、バブルや投機行動の高まりなどの意図しない結果を引き起こす可能性があることを認識する必要があると思います。それは過去も発生しており、今後も起こりうることなのです。

投資家はいかなるときも、自らの投資目標を見失うべきではない

ただし、私たちが目を向けるべきなのは、あくまで株式市場のファンダメンタルズであり、それは堅調に推移しています。これまでのところ、決算発表は良好で、S&P500種指数の採用銘柄のうち、82%が一株当たり利益で、76%が売り上げで市場予想を上回ったと報告されています 4 。そして、ワクチン接種は多くの国で始まっています。一時的な景気の腰折れの可能性もありますが、ワクチンが広範に供給されれば、力強い景気回復が期待されるでしょう。投資家は、時に金融市場全体のボラティリティの高まりが起きたとしても、金融市場のごく一部で起きていることに目を奪われて、自らの投資目標を見失うことは避けなければならないと、私は考えています。

1.出所:ブルームバーグL.P.、2021年1月29日。
2.出所:Ned Davis Research, Inc。
3.出所:ブルームバーグL.P.、2021年1月29日。
4.出所:Factset Earnings Insight、2021年1月29日。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

 

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