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米国、英国、欧州に吹く経済への逆風

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重い足取りは今後数カ月続く見込み

〔要旨〕

欧州:欧州経済には、軽微な景気後退のリスクが存在
英国:英国経済の下振れリスクは、ユーロ圏よりも高い
米国:米国の金融市場は、追加の財政刺激策の行方に注目

欧州は軽微な景気後退に直面するリスクが存在
足元、サービス業・製造業ともに景況感が悪化。ただし、2021年4-6月期後半には経済活動の回復を予想

英国の状況はユーロ圏よりも厳しい見込み
①新型ウイルスやブレグジットによる製造業の停滞、②ロックダウンの長期化の可能性—などから、英国経済の状況は厳しい

日本経済も悪化
新型ウイルスの影響がサービス業以外にも広がりつつある

米国で高まる財政刺激策への期待
イエレン氏が追加の財政刺激策の必要性を強く主張

重要なポイント
十分に分散されたポートフォリオの維持を前提に、テクノロジー株や一般消費財・サービス株にも注目

新型コロナウイルスが経済に悪影響を与える状況が続く
前週は、21日のS&P500種指数とナスダック総合指数の過去最高値更新や、欧米の株式市場におけるグロース株とディフェンシブ株からシクリカル株への資金移動の動きが見られた1週間でした。新型コロナウイルスの広がりは、各国の経済成長に引き続き影響を及ぼしており、金融市場は各国経済が直面している問題に反応しています。最近の経済指標は、それらの問題を示唆していると言えるでしょう。

欧州は軽微な景気後退に直面するリスクが存在

欧州ではサービス業・製造業ともに景況感が悪化

欧州経済は、軽微ながら二番底のリスクにさらされています。1月のユーロ圏購買担当者景気指数(PMI、総合)は47.5と、2020年12月の49.1から低下しました 1 。内訳をみると、サービス業のみならず、製造業PMIも7カ月ぶりの低水準まで落ち込みました。そして、景気の弱さは欧州全域に広がりました。

2021年1-3月期の欧州経済は、軽微ながら再び縮小する可能性が残る

経済封鎖の程度を示すオックスフォード・ストリンジェンシー・インデックスは、多くの欧州各国でパンデミックの開始以来の最高水準、もしくは、その近辺にあります。この厳しい封鎖により、2021年1-3月期の欧州経済は、軽微ながら、再び縮小する可能性を考えておくべきでしょう。そして、それに対応すべく、欧州中央銀行(ECB)による支援の継続と、各国における追加の財政支援が予想されています。

2021年4-6月期後半の経済活動の回復を予想

最終的には、欧州は現在の「2020年の第5四半期」とも言える困難な時期を乗り切り、状況は改善に向かうでしょう。2021年4-6月期後半には、ワクチンが広範に供給され、経済活動の回復が確認されると考えています。

英国の状況はユーロ圏よりも厳しい見込み

新型ウイルスや、ブレグジットによる供給の遅れ・コスト上昇などから、製造業が停滞

英国の状況は、2回目の景気後退リスク下にあるユーロ圏より深刻で、より大きなリスクにさらされています。1月の英国総合PMI(速報値)は40.6と、2020年12月の50.4から急激に低下しました 1 。IHSマークイットのクリス・ウィリアムソン氏は、同指数の低下について「サービス業は特に大きな打撃を受け、また、新型ウイルス、欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)に伴う供給の遅れやコスト上昇、輸出の減少などが原因で、製造業の伸びはほぼ停滞した。」と述べました 1

ジョンソン首相はロックダウンが今夏まで続く可能性を示唆

さらに、22日、英国のボリス・ジョンソン首相は、①英国の新型ウイルス変異株は伝染性が高く、毒性も強いとみられる、②都市封鎖(ロックダウン)が今夏まで続く可能性がある―ことを明らかにしました。ワクチンの普及に伴い、英国経済は大きく回復すると考えますが、短期的には圧力にさらされるとみています。

日本経済も悪化

新型ウイルスの影響がサービス業以外にも広がりつつある

1月の日本の購買担当者景気指数も、同国経済が逆風に直面していることを示しています。21日、日本銀行は、日本経済へのリスクが高まっており、新型ウイルスの影響がサービス業以外にも広がりつつある、と警告しました。日本は多くの西側諸国と比べて新型ウイルスをうまく管理しているものの、ワクチンの供給はまだ実施されていません。現在は臨床試験中であり、2月下旬からワクチン供給が開始される見込みです。

米国で高まる財政刺激策への期待

イエレン氏が追加の財政刺激策の必要性を強く主張

米国でも新型ウイルスによる深刻な経済的圧力が続いています。そして、米国の金融市場では、追加の財政刺激策の可能性に注目が集まっています。バイデン新政権の下、財務長官に指名されたジャネット・イエレン氏は、前週、追加の財政刺激策の必要性を強く主張しました。イエレン氏は国家債務の水準上昇に対する懸念を示しましたが、非常に低い現在の金利環境下における資金調達のメリットも強調しました。ただし、週を通じて、バイデン大統領が提案した1.9兆米ドルの財政出動の議会通過への懸念はくすぶり続けました。

米国の株価トレンドは日によって異なる

金融市場では、追加の財政出動とより力強い景気回復への期待が高まった日には、シクリカル株のアウトパフォームが見られました。一方で、財政出動への期待が薄れる、あるいは経済指標が失望的な内容となった日には、長期のグロース株、特にテクノロジー株のアウトパフォームが見られました。

重要なポイント

景気の腰折れリスクが存在する環境ではテクノロジー株の投資妙味が高い

私は、米国株式市場では、変動の大きい、シーソーのような株価動向が短期的に続くと予想しています。2021年後半には力強い経済回復が確認されるとの考えに変わりはないですが、以前に示した通り、景気は一時的に腰折れするリスクがあります。直近のテクノロジー株はディフェンシブな性質を引き続き示しており、景気悪化の可能性が高いと予想されるこの先数カ月において、投資妙味が高いと考えます。テクノロジー株のバリュエーションは既に高まっていますが、長期金利の低さはテクノロジー株のサポート要因となるでしょう。投資家は、過去も、超低金利下での高バリュエーションを許容してきました。

景気回復期待が高まる環境では、一般消費財・サービスセクターに注目

シーソーの反対側は、シクリカル株のアウトパフォームです。私は特に、一般消費財・サービスセクターに注目しています。世界経済が力強く回復することで、雇用の創出や回復が促され、消費者の支出が増えると考えます。また、多くの国の消費者は、パンデミック下で支出を抑制していたため、貯蓄は大きく積み上がっています。ワクチンが広く供給され、以前の「日常」に近い状況に戻れば、消費者の支出はかなり速いスピードで回復すると予想されます。

十分に分散されたポートフォリオの維持を前提に、テクノロジー株や一般消費関連株にも注目

私は、多くの国での金融や財政の景気刺激策の効果により、株価の上昇傾向は続くと予想しています。ただし、それは2021年に株式の下落局面が見られない、という意味ではありません。今週開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米連邦準備理事会(FRB)は、一時的なインフレの上ぶれを容認する姿勢を維持するでしょうが、米10年国債利回りの上昇(急激な利回りの上昇は、株価の急落を招く恐れがあります)またはインフレ率の上昇に対する懸念によって、株価の下落が起こる可能性があります。これ以外に、新型ウイルス変異株の感染者数の増加や、ワクチンの流通の停滞なども、株価の下落要因となるでしょう。そして、株価の下落がいつ起きるかはわからないものの、私は、それは短期的なものとみています。いずれにせよ、株式、債券、オルタナティブ資産への幅広い分散投資が非常に重要と考えます。

幅広い分散投資を前提に、株式資産におけるテクノロジーと一般消費財・サービスセクターの両者をオーバーウェイトすることも考えられるでしょう。テクノロジーセクターはディフェンシブ、一般消費財・サービスセクターは景気回復という異なる役割を、ポートフォリオで果たしてくれるでしょう。

1.出所:IHS Markit、2021年1月22日。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

 

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