前回の連載では投資信託を買う際に「最低限知っておきたいこと」についてお伝えしました。今回は一歩踏み込んで、30代の代表的なライフプランと必要金額を提示し、必要な準備と資産運用方法についてお届けします。
目次
30代はライフイベントラッシュ 主なイベントと必要金額は?
30代は一般的にライフイベントが満載な年代です。もちろん個人によって状況は異なりますが、結婚、や引っ越し、出産、子育て、マイホームなど、ライフスタイルが大きく変化しやすいイベントを控えているためお金が掛かることが多い時期となります。主なイベントの必要な資金を確認しましょう。
結婚式:約462万円
「ゼクシィ結婚トレンド調査2019」によると、結婚式はトータルで約462万円がかかるのが平均です。一番大きな出費は結婚式や披露宴の355万円です。他の項目としては、結納に約23万円、婚約指輪に約36万円、結婚指輪に約24万円、結婚式・披露宴・2次会などに355万円、新婚旅行に61万円などです。(注:各項目はそれぞれの平均額であり、各項目の合計はトータルとは一致しない)
結婚の一連のイベントは想定以上の出費となるのではないでしょうか?ただ、披露宴などではお祝いもいただけることでしょう。その平均は約224万円。結婚式・披露宴に掛かる費用とお祝いの差額は平均で約131万円です。
約78%の人は親や親族から援助を受けており、平均の援助額は約188万円です。結婚は両家のイベントでもありますので、両家が折半することが多いようです。2人だけの結婚式などお金をかけなくても心に残る結婚式を挙げることはできます。世間平均にする必要はないので、何が大事かを考える機会でもありそうです。
新婚生活、引っ越し:約100万円
新婚生活で新しい家に引っ越すことも多いでしょう。賃貸物件の場合、敷金・礼金、引越し費用などが必要となります。当然、新しい家具や家電も必要です。
引っ越しは単身で約5万円程度ですが、夫婦それぞれで約10万円。賃貸に必要な礼金・敷金に加え、1ヶ月分の前家賃、仲買手数料など全部を含めると一般的には賃料の4.5倍〜5倍が必要です。たとえば、家賃10万円の場合には45〜50万円が初期費用として必要なわけです。
リクルートブライダル総研「新婚生活実態調査2018」によると、新婚時の新生活に使った費用は平均で約52万円のようです。家具やインテリアに約28万円、家電製品に約33万円です。
新生活にはおよそ100万円程度掛かるとみておくのがよさそうです。もちろん、会社の補助がある場合や実家住まいになることもあるでしょうから、自分のライフスタイルにあわせて試算してみてください。
出産、育児:40万円〜50万円
出産にかかる費用は基本的には健康保険が適用されません。事前の検診や出産などには平均で40万〜50万円掛かります。自己負担にはなりますが、それを補助する公的支援制度が用意されています。メインは「出産育児一時金」です。健康保険に加入していれば、子供1人につき一律42万円の受給資格が得られます。検診についても、自治体が無料券や補助券を配布して負担軽減していますので確認してみるといいでしょう。
母親が出産後も同じ職場で働くなら、「出産手当金」と「育児休業給付金」も受給できます。加入条件があるため確認しましょう。
共働きの場合、将来的に保育園に通わせることも考えておかなくてはならいないでしょう。自治体によっても制度は異なります。子供の年齢や認可保育園か認可外保育園か、世帯の所得によっても変わります。幼児教育・保育の無償化によって、家計の負担は大きく減りましたが、自治体によっても制度が異なることがあるので現状を調べましょう。
マイホーム
現在は金利が低いため、結婚してすぐにマイホームの購入を検討する世帯もいるでしょう。30歳までに35年の住宅ローンを組めば定年の65歳までに完済できます。35年ローンの期間的余裕をもたせることでボーナスを貯金しやすいことなどのメリットがあるからです。
晩婚の場合、マイホーム購入は資金計画を立てた上で慎重になりましょう。ライフイベントによる必要費用との兼ね合いを考えながら計画してみてください。
ライフイベントの出費に対する対策
30代の独身で仮に現在パートナーがいなくとも、いつパートナーができて、いつライフイベントがやってくるかわかりません。ライフイベントに備えるのが30代です。
この連載を読んでいる方なら投資に対する意識が高く、投資信託の基本的な知識も備わっているでしょう。投資はできれば2本立てで考えてください。1本は老後の長期資産形成のための投資、もう1本がライフイベントに備える投資です。
老後の長期資産形成は「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を中心に考えてみるのがよいでしょう。iDeCoは、老後に備え投資信託を長期で積み立てる投資優遇税制です。積立時の掛金全額を所得控除でき、運用益は非課税という大きな税制控除を受けられます。さらに安い時に口数をより多く買えるドルコスト平均法を実践しやすく資産形成に向いた制度です。ただ、基本的には加入から60歳までは解約できません。大きなライフイベントの出費の準備には向きません。
その点、「NISA(少額投資非課税制度)」がイベント費用としては最適です。税制控除効果は「iDeCo」には敵いませんが、「値上がり益」「配当・分配金などの運用益」に対して非課税です。税率は現在20.315%のため税効果は十分に高いといえるでしょう。NISA制度には「一般NISA」と「つみたてNISA」があり、併用はできずどちらか片方を選択することになります。
一般NISAでは年間120万円までの投資による収益が、最長5年間非課税になる制度で株式、REIT(不動産投資信託)、ETF(上場投資信託)など証券市場に上場している商品にも投資が出来ます。つみたてNISAの非課税投資枠は年40万円まで、最長20年間非課税になる制度で、金融庁が認可した長期投資にふさわしい投資信託とETFが投資対象となります。
ある程度まとまった余裕資金がある人や自分で投資商品を選んだり株式にも投資をしたりしたい人は「一般NISA」、投資する商品の選び方がよく分からないけど投資はしたいという人は「つみたてNISA」を選択するといいでしょう。
「iDeCo」と「NISA」の詳細についてはこの連載の第6回「中長期的な投資スタンスからあらためて確認する「NISA」と「iDeCo」」で詳しく紹介しています。
ライフイベント運用にはどのような注意点があるか?
ライフイベントは待ってくれません。ライフイベントの費用を投資で準備する場合、株価が大きく下落したタイミングでライフイベントのために資産を取り崩すのは長期投資の視点から考えると非効率になります。具体的に必要な資金の時期と金額が決まっているときは、増やすことよりも守ることが大切です。いくら金利が低くても、投資にまわさず貯金しておくというのも戦略のひとつです。
資産運用は2本立てで
30代は何かとライフイベントが多く、出費がかさむ時期です。30代の代表的なライフプランと必要金額と、必要な準備と資産運用方法について解説しました。資産形成は、短期と長期の両方の視点を持ちながら、「一般NIS
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません