退職金の確定申告は原則不要。退職後に確定申告すべき3つのケース

会社を辞める際にもらう退職金は、会社で年末調整などがされません。そのために「退職金は確定申告が必要なの?」と思う方もいることでしょう。「確定申告で税金の調整をしなくてよいのか」と考えるのももっともです。

退職金の確定申告は原則として不要です。ただし、退職後に確定申告することにより節税できるケースがあります。特に、投資などの副業で損失が出た場合には、退職金の確定申告をすることで損益通算が可能となります。

この記事では、退職後に確定申告すべき3つのケースをご紹介します。

退職金の確定申告は原則として不要

退職時には「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していると思います。この申告書を提出することにより、退職金はすでに大幅に割引された税率で所得税が源泉徴収されているため、退職金の確定申告は原則として不要です。通常は退職金を確定申告したからといって、年末調整の際などのように、払い過ぎた税金が戻ってくることはありません。

退職後に確定申告すべきケースは?

前述のとおり退職金の確定申告は原則として不要であるものの、退職後に確定申告すべき3つのケースがあります。それらを以下で見ていきましょう。

ケース1. 「退職所得の受給に関する申告書」を未提出

退職後に確定申告すべき第1のケースは、前述の「退職所得の受給に関する申告書」を未提出の場合です。この申告書を未提出だと、退職金に適用されるはずの税率割引が適用されないため、通常の所得税率20.42%で所得税が引かれてしまいます。そのために、確定申告することで、払い過ぎた所得税が戻ってきます。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出すると、退職金にたいする所得税がどのくらい節減できるのかを見てみましょう。

退職金には、まず「退職控除」が適用されます。退職控除は以下の額になります。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)

勤続年数が30年であれば、退職所得控除額は、

800万円+70万円×(30年-20年)

で計算され、「1,500万円」と非常に大きな額になります。

次に、この退職所得控除が差し引かれたあとの退職金の額に、1/2をかけた額に対して5%~45%の税率で所得税がかけられます。

このように、退職金は大きな額の控除が差し引かれたうえに、さらに1/2の額に対して計算されるので、通常より大幅に割り引かれた所得税となります。「退職所得の受給に関する申告書」を未提出で、退職金から通常の税率で所得税が引かれた場合は、確定申告することで、本来割引になる分の金額が還付されます。

ケース2. 年度の途中で退職し再就職していない

会社を年度の途中で退職し、再就職していない場合には、確定申告することにより節税になることがあります。給与所得に関して、源泉徴収された所得税が本来支払うべき所得税より多過ぎる可能性があるからです。

たとえば月給(課税所得)25万円だった人が、1月末日で退職したとしましょう。この場合、2月~12月はもう仕事をしていないので、年間の所得は「25万円」です。ところが、源泉徴収される場合のこの1月分の所得税は、年間の課税所得を「25万円×12ヵ月=300万円」として計算されたものになるのです。

年間の所得額が25万円と300万円では非常に大きな開きがあります。したがって、源泉徴収された所得税も払い過ぎの可能性が高くなります。

年度内に再就職し、再就職先の会社が年末調整をしてくれるのであれば、正しい額の所得税が計算され、払い過ぎた分の税金は還付されます。しかし、再就職しない場合は年末調整もできません。そこで、確定申告することにより、払い過ぎた税金を取り戻すことができます。

通常、源泉徴収は基礎控除や配偶者控除を考慮して行われます。ところが、年度途中で退職した場合には、給与の支給額が少なくなっているために、これらの控除が差し引きされないケースもあります。その場合には確定申告をして、給与から差し引ききれなかった控除分を退職金から差し引けば、退職金にかかる所得税が安くなることもあります。

ケース3. 副業などで赤字がある

投資などの副業で損失を出して赤字になった場合には、確定申告をすると節税になるケースがあります。投資などでの損失は、退職金と損益通算できる場合があるからです。

損益通算とは、黒字から赤字を差し引いたうえで所得税の計算をすることです。黒字額だけから所得税を計算した場合より税額が低くなり、節税の効果があります。

損益通算により税金を払い過ぎていたことになれば、退職金から源泉徴収されていた所得税が還付されます。

退職金の確定申告を必要に応じて行い節税しよう

退職金の確定申告は原則として不要なものの、申告すると所得税が安くなる3つのケースをご紹介しました。必要に応じて確定申告を行って、節税を心がけましょう。

ただし、退職金の確定申告は通常は行わないものであるために、計算がやや複雑になったり、会計の専門知識を要したりするケースもあります。自分だけではわからない場合には、税理士などと相談するのも良いでしょう。

※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。

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