「だまされるな」「やらないほうがいい」……。iDeCo(イデコ)を始めようと思ってインターネットで検索すると、デメリットを指摘するコメントが見つかることがあります。逆に「老後資金の形成に最適」と、メリットばかり強調するものもあります。これでは加入すべきかどうかを判断できず、困ってしまいます。
そこで、今回は主にデメリットについて徹底的に分析し、メリットと比較しながら分かりやすく解説します。
目次
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)は、自分で投資先を選んで運用しながら将来の年金を積み立てる制度です。iDeCoで積み立てた金額は、将来一時金や年金として受け取れます。
2019年の「老後2,000万円問題」で、国民年金・厚生年金だけではゆとりある老後生活を送れない可能性が指摘されました。このような将来の老後生活の不安から、iDeCoで年金の積立を始める人は増加傾向にあり、2021年8月時点で加入者数は214万人を突破しました。
iDeCoには、元本割れのリスクや手数料など、注意点があります。特に原則60歳まで資産を引き出せない点には不便を感じるかもしれませんが、iDeCoには次のようなメリットもあります。
<iDeCoのメリット>
・税金が安くなる
・年金制度間で資産を移管できる
・自営業者やフリーランスでも老後に備えられる
上記の中でも税金が安くなる点は魅力であり、「拠出時」「運用時」「給付時」の3つのタイミングで節税効果が得られます。節税と資産運用を両立できる制度なので、老後資金に不安を感じている方は前向きに利用を考えてみましょう。
次に、iDeCoの4つのデメリットを順番に検証していきます。
iDeCoで積み立てた金額は、原則として60歳になるまで引き出すことができません。
「子どもの教育資金が必要になったから」「冠婚葬祭で臨時支出があったから」といった理由で、自由に取り崩すことができないのです。また、積立の停止はできますが、すでに積み立てた分を解約して引き出すこともできません。
iDeCoを始める時は、今後のライフイベントで必要な金額は別途確保した上で、無理のない積立額を設定することが大切です。
-死亡時には、年齢にかかわらず死亡一時金が支払われる
積立の途中で加入者が死亡した場合、遺族は年金資産を死亡一時金として受給できます。請求手続きをしないと受給できないため、忘れずに手続きを行いましょう。また、死亡一時金はみなし相続財産として相続税の対象になるため、注意が必要です。
-高度障害や生活保護など要件を満たせば給付金・一時金を受け取れる
一定以上の障害状態になり、1年6ヵ月が経過すると障害給付金を受給できます。また、生活保護などいくつかの要件を満たすことで、脱退一時金を受け取れるケースもあります。しかし要件はかなり厳しいため、基本的に「60歳まで引き出せない」と考えておいたほうがよいでしょう。
-強制力があるからこそ積立を続けられる
iDeCoは一般的な投資とは違い、老後のための年金を積み立てる制度です。自由に現金化できると、つい別の用途で使ってしまい、本来の目的が果たせない恐れがあります。
積立投資は継続することでドルコスト平均法(※)によって平均購入単価が抑えられるので、複利効果が大きくなります。複利効果とは運用益を再投資することで、雪だるま式に資産が増えていくことです。
iDeCoには強制力があるからこそ、積立を継続できるという見方もできるでしょう。短期間で積み立てをやめず、少額でも長く続けるのが成功のコツです。
(※)定期的に金融商品などを購入することで、価格が高いときには購入量が少なくなり、価格が安いときには購入量が多くなる投資方法のこと。
国民年金や厚生年金などの公的年金は、加入者から集めた資金を国が運用する年金制度ですが、iDeCoは加入者自身が資金を運用する年金制度です。
将来受け取れる金額は、運用成果によって増えたり減ったりします。運用がうまくいけば多く受け取れますが、運用に失敗すれば受給額が積立額を下回ることもあります。
ただし、積立額が受給額を下回ることは、他の公的年金でもあり得ます。運用状況が見えるか見えないかの違いであり、その点でiDeCoは透明性の高い年金制度といえます。
-iDeCoでは運用商品を自分で選ぶ
iDeCoでは、運用商品を自分で選びます。iDeCoの運用商品は、国内外の株式や債券などを組み合わせたパッケージ商品である「投資信託(ファンド)」か、定期預金や保険などの「元本保証型商品」です。
加入者がどの商品にいくら投資するかを決めれば、実際の運用は専門家が行ってくれます。
-リスクとリターンは表裏一体
リスクというと、ネガティブなイメージを持つ方が多いでしょう。しかし投資におけるリスクとは、運用によって期待できる「効果の幅」のことです。
リスクが大きいというのは、大きく損をする可能性もありますが、大きく得をする可能性もあるということです。逆にリスクが小さいというのは、大きく損をする可能性が低い代わりに、大きく得をする可能性も低いということです。
リスクとリターンは、表裏一体の関係にあるのです。
iDeCoでは、自分で運用商品を選べます。リスクを抑えて手堅く投資するか、リスクを取って大きなリターンを狙うかはあなた次第です。
-「元本保証商品」も扱っているが注意が必要
「元本保証型商品」はその名のとおり、運用成果が積立額を下回ることがない運用商品のことです。しかし、資産が大きく増えることは期待できません。
次項で詳しく説明しますが、iDeCoでは各種手数料がかかります。運用商品をすべて「元本保証型商品」にすると、運用ではマイナスが出ませんがプラスもほとんどないため、手数料の分だけ資産が目減りする可能性があります。
そのため、元本保証型商品を選ぶ時は投資信託も組み合わせながら、バランス良く運用商品を決めることが大切です。
運営管理機関(加入先金融機関) | 事務委託先金融機関 | 国民年金基金連合会 |
---|---|---|
口座管理手数料・移換手数料 (金融機関によって異なる) 信託報酬などの運用手数料 (運用商品によって異なる) | 管理手数料 66円/月 給付手数料 440円/回 還付手数料 440円/回 | 加入・移換時手数料 2,829円 (加入・移換時) 収納時手数料 105円/回 還付手数料 1,048円/回 |
iDeCoを始める際に申し込んだ金融機関が、自分の「運営管理機関」になります。その他に2つの機関が関わり、それぞれに上記の手数料を支払わなければなりません。
-口座管理手数料は、加入する金融機関によって異なる
証券会社や銀行、信用金庫、生命保険会社など、さまざまな金融機関がiDeCoを取り扱っています。取り扱う運用商品や毎月の口座管理手数料は、金融機関によって異なります。
口座管理手数料は、店舗の賃料や人件費がかからないネット証券では格安または無料のところが多く、実店舗を持ち万全のサポート体制を誇る大手証券会社などでは高めに設定されています。ただし、安いからという理由で選ぶのではなく、自分にとって価値があるかどうかで判断しましょう。
-いくつかの手数料は節約できる
事務委託先金融機関と国民年金基金連合会に支払う手数料の金額は決まっています。
「還付手数料」は、iDeCo加入資格のない月の積立金を返す際の手数料です。国民年金保険料を滞納している人は、iDeCoの加入資格がありません。加入後に国民年金保険料の未納月があると、その分は後日返金されます。つまり国民年金をきちんと支払っていれば、還付手数料を節約できるのです。
-信託報酬が低い運用商品もある
運用商品に投資信託を選んだ場合は運用を専門家に一任することになるため、信託報酬という手数料が発生します。信託報酬は、投資信託を保有している間は継続的にかかる手数料です。
信託報酬は運用商品によって異なり、信託報酬が低い運用商品も数多くあります。iDeCoでは投資期間が長くなるため、信託報酬が低い運用商品を選ぶとよいでしょう。
-運用成果で手数料をまかなえることも多い
投資である以上、運用が必ずうまくいくとは限りません。しかし、長期的に見ると世界的に経済は成長しているため経済成長とともに基準価額も上昇すれば、運用成果で手数料を賄える可能性は高いといえます。手数料がかかるのは事実ですが、手数料を気にしすぎる必要はないでしょう。
iDeCoを始めるには金融機関で口座を開設する必要があり、マイナンバーが分かる書類や本人確認書類などが必要です。
会社員・公務員なら、勤務先が記入する「事業主の証明書」も必要です。iDeCoは国が推進している制度であり、iDeCoへの加入が勤務先からのマイナスイメージにつながる可能性は低いものの、勤務先に伝わることに抵抗がある方もいるでしょう。
-初年度以外は年末調整時の書類提出のみ
手続きが大変なのは基本的に加入するタイミングだけです。一度加入したら、それ以降はハガキで送られてくる「掛金控除証明書」を勤務先に提出し、年末調整を受けるだけで手続きが終わります。
-給与天引きで支払うと年末調整の手間が省ける
勤務先によっては、iDeCoの積立金を「事業主払い(給与天引き)」にすることもできます。所得控除を受けてるためには年末調整(または確定申告)が必要ですが、給与天引きの場合は勤務先で調整が行われるため、別途手続きは不要です。
勤務先によっては、福利厚生の一環として企業型DC(企業型確定拠出年金)が用意されています。企業型DCで、企業が掛金を拠出し、本人が運用商品を選んで運用しながら年金を積み立てます。従業員にとって非常にメリットの多い制度といえるでしょう。
企業型DCとiDeCoは、要件を満たせば併用できます。しかし、現実的には要件を満たすのが難しく、勤務先に企業型DCがあることで従業員がiDeCoに加入できないという問題が発生していました。
-2022年10月から企業型DCとの併用要件が緩和
2022年10月からは企業型DCとiDeCoの併用要件が緩和されます。今後は企業型DCの事業主掛金が少なくても、上限額の範囲内であればiDeCoに加入し、自分で年金を積み立てられるようになります。
iDeCoでは、無制限に掛金を拠出できるわけではありません。掛金は、月々5,000円から1,000円単位で選ぶことができ、自身の加入資格によって上限額が異なります。加入資格ごとの拠出限度額は以下の通りです。
自営業者:月額6万8,000円(年額81万6,000円)
会社員(会社に企業年金なし):月額2万3,000円(年額27万6,000円)
会社員(企業型DCに加入している):月額2万円(年額24万円)
会社員(DBと企業型DCに加入している):月額1万2,000円(年額14万4,000円)
会社員(DBのみに加入している):月額1万2,000円(年額14万4,000円)
公務員など:月額1万2,000円(年額14万4,000円)
専業主婦(夫):月額2万3,000円(年額27万6,000円)
上限額は属性によって大きく異なり、例えば自営業者の上限額は公務員の5倍以上です。他の年金制度が充実している会社員や公務員はiDeCoの拠出限度額が少ないため、単純にどの属性が有利とはいえませんが、拠出限度額の違いは把握しておきましょう。
税金の優遇がある以上、拠出限度額があるのはやむを得ないことと考えられます。無制限に拠出できてしまえば税収が大きく減り、国家の維持に支障をきたす可能性があります。拠出限度額を知った上で生活水準なども考慮しながら、無理のない金額で積み立てを続けましょう。
なお2018年1月からは、加入者が1年に1回以上、任意に決めた月にまとめて掛金を拠出できるようになりました。そのため、上記では「月額」と表現していますが、必ずしも毎月拠出しなければならないわけではありません。
iDeCoはデメリットしかないと言われていましたが、実際にはメリットがあります。そのメリットは資産形成への効果が期待できるものばかりです。ここからは、メリットを確認することで、加入すべきかどうかが見えてくるはずです。
iDeCoには3つの税金の優遇があります。それぞれのメリットを確認しましょう。
・所得税・住民税を節税できる
iDeCoでは、掛金の全額を所得から控除できます。所得税や住民税は、所得に税率をかけて計算するため、掛金を控除した分だけ所得税・住民税を節税できます。
民間の生命保険料などは、支払った保険料の全額が控除されるわけではありません。所定の計算をした上で、保険料の一部が控除されます。
それに対してiDeCoでは掛金の全額が控除されるため、節税効果が非常に大きいといえます。
例えばiDeCoで毎月2万円を積み立て、所得税率20%住民税率10%とすると、1年で7万2,000円も節税できます。30年積み立てを継続すれば、累計で216万円もの節税効果を得られるのです。
・運用益に税金がかからない
通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかります。10万円の利益を出しても、約2万円が税金として引かれてしまうのです。しかしiDeCoでは、加入期間中は運用利益に税金がかかりません。
・受け取る時も2種類の優遇がある
iDeCoでは、受給時にも税制優遇があります。年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」の対象となり、それぞれ税金が軽減されます。
iDeCo加入者が転職によって企業年金に加入する場合や、企業年金加入者が転職・離職によってiDeCoに加入する場合、それまでの運用資産を新しい年金制度に引き継げます。移換には条件がありますが、条件を満たさない場合でも資産がなくなることはありません。
自営業者やフリーランスなどの個人事業主は、厚生年金に加入することができません。退職金もないため、自分で備えておかなければ老後に受け取れるお金は国民年金だけです。2022年の国民年金の月額は約6万5,000円で、これだけで生活するのは厳しいといわざるをえません。
このような状況を考慮して、個人事業主は掛金の上限が月額6万8,000と高く設定されています。iDeCoで所得税・住民税を節税しながら老後に備えることで、将来のゆとりある生活に近づけるでしょう。
ここまで、iDeCoのデメリットとメリットについて見てきました。どのような制度にも言えることですが、活用する人によってデメリットのほうが大きい場合もあれば、メリットのほうが大きい場合もあります。ここからは、「デメリットのほうが大きいと思われる人」について見ていきます。
専業主婦(夫)など収入が低い(ない)人は、「掛金が全額所得控除の対象となり、所得税や住民税を節税できる」というiDeCoの大きなメリットを活用できません。所得が低い(ない)人はそもそも納税額がほとんどなく、節税の余地があまりないからです。
前述の通り、iDeCoは60歳まで資金を引き出すことはできません。「今月は家計が厳しいから、今月だけ5万円を引き出そう」といったことはできないのです。そのため、家計がぎりぎりの人は、まずは生活防衛資金の貯金(手元資金の充実)を優先したほうがよいでしょう。iDeCoは上手に使えばメリットの多い制度ですが、極端に流動性が低いことを覚えておきましょう。
近い将来(60歳に到達する前に訪れる将来)大きなお金が必要で、まだ準備できていない人は、その準備を優先しましょう。iDeCoは60歳まで資金を引き出すことができないため、それまでに使う予定のあるお金を積み立てるのは得策ではありません。
「近々結婚して専業主婦(夫)になる予定」など、近い将来「収入が低い(ない)人」になる可能性がある人も注意が必要です。
近い将来独立する予定の人も、状況によってはiDeCoに不向きと言えます。独立すると収入が不安定になりやすく、思いがけない出費もあるものです。十分な貯蓄がある場合を除き、独立後の生活が軌道に乗ってからiDeCoへの加入を検討しても遅くはありません。
限られた収入の中からiDeCoに拠出するよりも、自己投資に回したほうがよい人もいるでしょう。自己投資によってスキルアップや資格取得ができれば、収入が上がるチャンスが増えます。自己投資をしたからといって必ず収入が上がるわけではありませんが、特に若い人は意識しておきたいポイントです。
それでは、「iDeCoを始めるとメリットが大きい人(iDeCoに向いている人)」は、どのような人なのでしょうか。なお、デメリットに該当しないことが前提です。
所得税は、所得が多くなるほど納税額も大きくなる「累進課税」の税金です。所得税率は5%から45%までと幅があり、所得が増えるほど高い税率が適用されます。したがって、高所得者は「積立金は全額所得控除の対象」というメリットを効率的に享受できます。
「投資期間」と「複利効果」は深く関係しており、投資期間が長くなるほど複利効果も大きくなります。複利効果を狙うなら、20代や30代など若いうちから長期投資に取り組むことが重要です。貯金や自己投資とのバランスを取りつつ、資産運用を進めましょう。
「老後の資産形成をしたいが良い方法が思いつかず、何もしていない」という人は、iDeCoを活用するとよいでしょう。そもそもiDeCoの目的は老後に向けた資産形成ですが、分かっていても行動に移せない人は少なくありません。他に良い選択肢が見つからないなら、できる限り早くiDeCoを始めることを検討してみましょう。
iDeCoは60歳まで資金を引き出すことができないため、ある意味で「60歳まで引き出せない貯金箱」とも言えます。うまく貯金ができない人は、この流動性の低さを逆手に取ってiDeCoに拠出し、強制的に無駄遣いができない環境を作るとよいでしょう。
「近い将来独立する予定がある人は、まずは独立後の生活に集中したほうがよい」と述べましたが、事業や生活が軌道に乗ったら早めにiDeCoへの加入を検討しましょう。
自営業者やフリーランスなどの個人事業主は厚生年金に加入できず、退職金もありません。そのため、老後の公的年金支給額が少なくなりがちです。iDeCoや小規模企業共済(個人事業主等が退職金を積み立てられる制度)などを活用し、老後資金を準備しましょう。
前述で解説したように、iDeCoには罠とも言えるデメリットがあります。その中でも、以下では利用者が引っかかりやすい罠をまとめました運用の計画を立てる前に、一つずつ確認していきましょう。
iDeCoの積立は自由に中断できますが、事務委託先金融機関に支払う事務委託手数料は毎月かかります。原則60歳までは解約できない仕組みなので、中断のタイミングによっては負担が大きくなってしまいます。
以下の表では、引き出し可能となる60歳までにかかる事務委託手数料の総額をまとめました。こちらの手数料は月66円で計算していますが、金融機関によって数百円かかることもあります。また、運営管理機関に支払う口座管理手数料が中断時でもかかることもあります。
積立を中断する年齢 | 事務委託手数料 の総額 |
---|---|
25歳 (60歳まで残り35年) | 27,720円 |
30歳 (60歳まで残り30年) | 23,760円 |
35歳 (60歳まで残り25年) | 19,800円 |
40歳 (60歳まで残り20年) | 15,840円 |
45歳 (60歳まで残り15年) | 11,880円 |
50歳 (60歳まで残り10年) | 7,920円 |
55歳 (60歳まで残り5年) | 3,960円 |
(※事務委託先金融機関に支払う事務委託手数料は1ヵ月あたり66円。)
年齢が若いときに積み立てを中断した場合、事務委託手数料の増加によって運用益がマイナスになる可能性があります。
企業型DCの加入者が勤務先から退職・転職をした場合、自動的に確定拠出年金の口座が切り替わることはありません。退職・転職の翌月から6ヵ月以内に所定の手続きを済ませないと、これまで積み立てた資産は国民年金基金連合会の仮預かり口座に移されます。
このケースにおいても、前述の事務委託手数料(1ヵ月あたり66円)は毎月発生します。つまり、資産が運用されない状態で目減りしていくため、放置期間が長いほど加入者は損をしてしまいます。
このように放置された企業型DCの資産は、国民年金基金連合会によると2021年度末で2,500億円を超えています。珍しい話ではないので、退職・転職をする際には移管手続きについても確認しておきましょう。
定期預金や保険などの元本保証型の商品は、中途解約をしても元本割れのリスクがほとんどありません。しかし、事務委託手数料も含めた全体の運用成績で見ると、手数料だけで元本割れを起こすこともあります。
仮に年間の積立金額を100万円、保証利率を0.02%として、事務委託手数料も含めた運用成績を見てみましょう。
積立年数 | 運用資産 | 受け取れる利息 | 資産額-事務委託手数料 (毎月66円) |
---|---|---|---|
1年目 | 1,000,000円 | 200円 | 999,408円 |
2年目 | 999,408円 | 199円 | 998,815円 |
3年目 | 998,815円 | 199円 | 999,014円 |
(※利息は年1回、決まったタイミングで受け取れるものとして計算。)
(※小数点以下は切り捨てて計算。)
上記のように、毎月の事務委託手数料がリターンを上回ると、元本保証型でも資産は減ってしまいます。元本保証型はローリスクである代わりにローリターンなので、手数料とのバランスを見ながら積立金額や運用商品を考えましょう。
確定拠出年金(iDeCoや企業型DC)の仕組みは見直されることがあるので、制度変更はこまめにチェックする必要があります。
例えば、2022年5月からは加入可能年齢が引き上げられ、iDeCoは65歳未満まで、企業型DCは70歳未満まで加入できるようになりました。また、2022年には年金の受給開始年齢や、iDeCoと企業型DCを併用する条件も変更されています。
国の方針によっては今後も見直される可能性があるので、厚生労働省や国民年金基金連合会の公式サイトは定期的にチェックしておきましょう。
よく知ればデメリットを許容できたり、メリットだと思っていたことにも難点があったりするものです。自分にとっての優先順位をはっきりさせることが、自分に合う制度かどうかを判断する際に役立ちます。情報を見極めて、iDeCoを賢く利用したいものです。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。