ホーム > 資産管理 > 退職金に確定申告は必要?した方がよいケースや申告書の書き方を解説!
(画像=insta-photos/stock.adobe.com)

退職金に確定申告は必要?した方がよいケースや申告書の書き方を解説!

退職金を受け取った後も、再就職先が年末調整してくれる場合、基本的には確定申告する必要はありません。しかし、いくつかのケースにおいては、確定申告した方が得する場合もあるでしょう。退職金の確定申告をすべきケースや、確定申告書の書き方などを解説します。

退職金と税金について

退職金にかかる税金

退職金は、総額と勤続年数により、税金がかかる「退職所得」として扱われる金額が変わります。老後の生活に必要なものであるという理由から、他の所得に比べ、税金面で優遇されていることが特徴です。勤続年数と総額によっては、全額控除となり税金がかからないこともあります。

控除額を超えて退職金が支払われた場合、退職所得として計算される部分には、所得税と住民税がかかります。ちなみに、解雇された場合に受け取る解雇予告手当や、会社が倒産した際に国から受け取れる未払い賃金なども、退職所得に含まれる所得です。

退職金の所得税は分離課税の対象となる所得であり、他の所得とは合算せず、独立して税金を計算します。計算式で用いる税率や控除額は、給料などの所得税を計算する場合と同じです。また、住民税は退職金に10%を掛けて算出します。

解雇予告手当てとは

前節で軽く触れている解雇予告手当てに関して詳細を記載してください。

解雇予告手当とは、解雇日の30日以上前に解雇予告をせず従業員を解雇する場合、支払いが義務付けられている手当のことです。労働基準法第20条第1項に、

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

と記載されているように、使用者(企業)が労働者を解雇するには、少なくとも30日以上前に解雇予告をしなければなりません。解雇予告をせずに解雇する場合は、解雇までの残日数に応じた金額を支払う必要があります。

未払い賃金とは

前節で軽く触れている未払い賃金に関して詳細を記載してください。

未払い賃金とは、あらかじめ労働契約や就業規則で定められていたにも関わらず、支払われていない賃金のことです。あらかじめ労働契約や就業規則で定められていたにも関わらず、所定の支払日に賃金を支払わなかった場合は、労働基準法第11条や第24条に違反します。

未払賃金の対象となる賃金には、定期賃金や退職金、一時金(賞与・ボーナス)、休業手当、割増賃金、年次有給休暇の賃金などがあります。倒産によって賃金が支払われないまま退職した労働者に対しては、未払賃金の一部を立て替える「未払賃金立替払制度」という制度が用意されています。

受け取り方によって課税方法が異なる

退職金の受け取り方には、退職時に一括で受け取る方法と、年金として分割で受け取る方法の2パターンがあります。一時金として受け取った場合は、前述したように退職所得として扱われますが、分割で受け取った場合の分類は雑所得となります。

雑所得は総合課税の対象であるため、給与所得など他の収入と合算し、総額に応じて税率が決まります。つまり、年金として退職金を受け取る場合は、公的年金の受給額や退職金の運用状況、扶養家族の有無や各種控除の適用状況など、退職後のさまざまな要素により税金が変動することになるのです。

そのため、一時金と分割のどちらが税金面でお得かという問いに対しては、分割で受け取る場合の状況により異なるという回答になります。一時金と分割で受け取り方法を悩む場合は、税額を比較するのではなく、退職金の運用方法に適した方を選ぶとよいでしょう。

基本的には確定申告の必要なし

退職金の受け取り方が一時金であれ年金であれ、基本的には確定申告する必要はありません。一括で受け取る場合、通常は勤務先から退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を記入するよう指示されます。この書類を提出すれば、退職金から所得税と住民税が源泉徴収されるため、確定申告は不要です。

年金で受け取る場合も、公的年金や退職金など「公的年金等に係る雑所得」に該当する所得の合計が年間400万円以下で、かつ「公的年金等に係る雑所得以外」に該当する所得の合計が年間20万円以下である場合は、同様の理由で確定申告する必要はありません。

退職金の確定申告をした方がよいケース

「退職所得の受給に関する申告書」を出していない

前項で解説したように、退職時には勤務先から「退職所得の受給に関する申告書」の記入と提出を指示されるでしょう。この書類を提出し忘れたまま退職金を受け取った場合は、一律20.42%が源泉徴収されるため、税金を払い過ぎている状態です。確定申告により、本来支払えばよい税金との差額を、還付金として受け取れます。

なお、同年内に複数の会社から退職金の支給を受ける場合は、全ての勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなければなりません。この際、既に支払われている退職金があれば、「退職所得の源泉徴収票」を添付しての提出が必要です。また、複数の会社へ同時に申告書を提出する場合は、それぞれに提出の順位を記載する必要があります。

退職した同年内に再就職していない

通常、毎月の給与から源泉徴収される税金は多めに引かれているため、年末調整で差額が戻ってきます。年末調整は、在籍している会社が行ってくれる業務であり、退職金を受け取った後、元の職場が年末調整をしてくれることはありません。

会社を年度内に退職し、基礎控除や配偶者控除を給与所得から控除しきれなかった分は、退職所得から引くことが可能です。しかし、再就職していなければ年末調整が行われないため、自分で確定申告をしなければ、税金が還付される機会を逃すことになりかねません。特に、年度の初めに退職している場合は、確定申告で退職所得の再計算を行うことで、還付される可能性が高まります。

再就職後の収入が激減した

前項で解説したように、退職後に前の会社の給与から控除しきれなかった分は、退職所得から控除できます。したがって、再就職した後も収入が少ない場合には、引き続き給与所得から控除しきれない分が残る可能性が高いため、確定申告をした方がよいでしょう。

また、再就職先にパートやアルバイトのような雇用形態で雇われた場合も、年末調整が行われない可能性があるため注意が必要です。いずれにしても、再就職先で年末調整をしてもらえる場合は、収入の増減にかかわらず確定申告する必要はありません。ただし、再就職先から前職の源泉徴収票を求められるため、提出できるよう準備しておきましょう。

不動産投資などの副業で赤字がある

近年は柔軟な働き方が推奨されていることもあり、不動産や株などに投資し利益を得ているサラリーマンも少なくありません。これらの副業で赤字が出た場合、確定申告により退職所得と相殺して赤字を減らせる可能性があります。

不動産所得・利子所得・配当所得・事業所得・給与所得・雑所得は、それぞれの所得を「損益通算」により相殺できる種類の所得です。いずれかの所得に赤字が発生している場合に、確定申告で損益通算することで、赤字を減らせます。

ただし、損益通算には順序があり、退職所得が損益通算できる順番は他の所得より後ろです。税法上、細かいルールが設定されているため、所得の種類が多い場合は専門家に相談しましょう。

退職金の確定申告を行う方法

必要なもの

退職金の確定申告を行う際に必要な書類は、確定申告書・源泉徴収票・控除証明書・社会保険料の納付書です。確定申告書は、国税庁のホームページからダウンロードできます。源泉徴収票は、年末調整後に会社から発行される書類です。一般的には、退職した際にその時点までの源泉徴収票も渡されますが、もらえなかった場合は元勤務先へ連絡し、発行してもらいましょう。

控除証明書は、生命保険料控除や地震保険料控除、寄付金控除の適用を受ける場合に必要です。国民健康保険など、自分で納めた社会保険料の納付書や、夫婦の国民年金保険料の納付書も、きちんと準備しましょう。

申告書の書き方

退職所得がある場合は、確定申告書の様式Bに加え、申告書第三表を提出する必要があります。申告書第三表は、分離課税の対象となる所得がある場合に、提出を求められる書類です。分離課税の対象となる所得には、退職所得以外に、山林所得・配当所得・譲渡所得などがあります。これらの所得は、総合課税の対象となる所得とは異なり、他の所得と合算せずに計算しなければなりません。

申告書第三表には、「収入金額」「所得金額」「税金の計算」「退職所得に関する事項」を記入する項目があります。これらのほとんどが、源泉徴収票から転記する項目です。国税庁が作成している記入例を参考にしながら、ミスのないように書き込んでいきましょう。

給与所得の他に退職所得がある方の記載例 国税庁

還付金の届け出は過去5年間までさかのぼれる

源泉徴収された所得税額や予定納税した所得税額が、年間所得金額から税額を計算した所得税額より多い場合は、払い過ぎた分を還付申告により還付してもらえます。還付申告書は、確定申告期間とは関係なく、納税した翌年1月1日から5年間提出可能です。退職所得の場合も同様に、税金を納め過ぎている場合は、過去5年間までさかのぼって申請できます。

退職金とふるさと納税について

ふるさと納税とは

自分が選んだ自治体に寄付できる仕組みがふるさと納税です。寄付した金額のうち、2,000円を超えた額については、確定申告することで税金の還付や控除を受けられます。また、寄付に対するお礼品として、各自治体の特産品や宿泊券なども受け取れる制度です。つまり、税金の還付額や控除限度額の範囲内で寄付すれば、実質2,000円でお気に入りの地域の特産品などをもらえる、お得な仕組みだといえます。

寄付金控除を申請できるのは、「確定申告」と「ワンストップ特例制度」2種類の方法です。もともと確定申告や住民税申告の必要がないサラリーマンで、年間の寄付先が5自治体以内の場合は、使い勝手の良いワンストップ特例制度で申請しましょう。

退職金により控除上限が増える可能性あり

ふるさと納税で納税できる金額自体に上限はありませんが、ふるさと納税することで適用できる還付や控除の金額には上限があります。還付・控除の上限額は、ふるさと納税を行った年の所得金額で計算されるため、退職金を受け取っている場合は、ふるさと納税の還付・控除の上限が増える可能性もあるでしょう。

ふるさと納税のホームページでは、上限額の詳細なシミュレーションを行えます。寄付金控除が最大限に適用される控除上限額は、年収・家族構成・住んでいる地域などにより異なるため、以下URLのシミュレーションを活用し、自己負担2,000円で効率的な納税を行いましょう。

控除上限額(限度額)シミュレーショントップ | ふるさと納税サイト「さとふる」

退職時のその他の手続き

ここからは、退職時に雇用主と労働者が行うべき手続きについて見ていきます。

雇用主の手続き

まず、労働者から「退職所得の受給に関する申告書」を受け取ります。税務署や市区町村から求められたときに提示する必要があるため、しっかり保管しておきましょう。

次に、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を管轄の市区町村に提出します。提出期限は、異動が発生した月の翌月10日までです。

退職所得を計算し、住民税の納付が必要な場合は、市町村が定める納入書により納税する必要があります。納付期限は、住民税を差し引いた月の翌月10日までです。

なお、個人住民税は原則として前年中の所得に対して、その翌年に課税する(前年所得課税主義)ことになっていますが、退職所得についてはその性質を考慮し、他の所得と分離して退職所得の発生した年に課税する(現年分離課税主義)ことになっています。

退職金に源泉所得税が発生する場合は、普段使用している源泉所得税の納付書(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書)に記載し、原則として翌月10日までに納めなければなりません。

労働者の手続き

労働者は、確定申告以外に煩雑な手続きは不要です。前述のとおり、退職金の受け取り方が一時金であれ年金であれ、基本的には確定申告をする必要はありません。上記の「退職金の確定申告をしたほうがよいケース」を参考にして、確定申告を行ったほうがよいか判断しましょう。

税金を払い過ぎているなら確定申告を

退職金をもらう場合、所得税と住民税がかかります。一括と分割のどちらで受け取るかにより、課税方法が異なるため、退職金の運用方法に合わせた受け取り方法を選ぶのがよいでしょう。

基本的に、退職金の確定申告は不要です。しかし、退職後に再就職していない人や、副業で赤字がある人などは、確定申告することで得をする可能性があります。自分の状況に合わせて判断し、税金を払い過ぎているようならしっかりと還付してもらえるように手続きしましょう。

※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。

本サイトの記事は(株)ZUUが情報収集し作成したものです。記事の内容・情報に関しては作成時点のもので、変更の可能性があります。また、一部、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供している記事を掲載している場合があります。 本サイトは特定の商品、株式、投資信託、そのほかの金融商品やサービスなどの勧誘や売買の推奨等を目的としたものではありません。本サイトに掲載されている情報のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はご自身の判断でなさるようお願いいたします。 当サイトご利用にあたっては、下記サイトポリシーをご確認いただけますようお願いいたします。