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「テックバブル」の再来ではない3つの理由

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パンデミック下で浮上したテーマがテクノロジー企業の長期的な成長を支える

〔要旨〕

●前週、テクノロジー株が急落したことで、世界の主要株価指数は下落
●「在宅」「電子商取引(eコマース)」「人工知能(AI)」「自動化」「金融

テクノロジー」などのテーマがテクノロジー企業の長期成長を支える見込み

1. 大きく異なる金利環境
FRBの緩和的なインフレ目標政策への転換など、現在の金融政策は緩和的

2. テクノーロジ企業の長期的な成長を支える主要なテーマ
環境の変化から生まれたテーマから恩恵を受けるテクノロジーセクター

3. 新型ウイルスとの闘いの進展
①新たな治療法の発見、②死亡率の低下—など、状況は進展

まとめ
テクノロジー株は長期的なテーマや緩和的な金融政策に支えられる見込み

①米追加景気対策の行方、②米大統領選への懸念、③バブルへの懸念―などから、テクノロジー株が大幅下落

前週の株式市場は荒れ模様であり、テクノロジー株が急落したことで、世界の主要株価指数は下落しました。このテクノロジー株の下落にはいくつかの要因がありました。まず、「米国の追加の景気対策が近いうちに実現するか疑問だ。」とマコーネル上院議員が発言したことです。次に、米国大統領選挙の投票当日の選挙結果で勝敗が明確にならない場合、選挙無効の申し立てがなされるのではないかとの懸念が高まったことです。さらに、テクノロジー株にバブルの兆しがあるとの声もあり、その結果、テクノロジー株が大きく下落、世界の株式市場にも影響を与えました。

今回の株価の下落は健全なプロセス

今回のテクノロジー株の下落を、2000年春のような「テックバブル」崩壊の始まりと考える投資家もいます。しかし、その見方は誤りだと私は考えます。もちろん、この株価急落は大きなもので、今後も続く可能性もあります。しかし、私は数週間前の本リポートで、株価の大幅上昇後の急落に備える必要があると警告していました。今回の下落は、ナスダック指数が2020年3月に付けた株価の底値から6カ月もたたないうちに60%以上上昇したことを考えると、市場の「調整」ではなく「消化」と考えられます 1 。つまり、これは大幅な株価上昇後の健全なプロセスであると考えています。

本稿では、テクノロジー株が新たなバブル崩壊とはならないと私が考える3つの理由を説明します。

1. 大きく異なる金利環境

FRBの緩和的なインフレ目標政策への転換などから、現在の金融政策は緩和的

まず、2020年の金利環境は2000年のそれとは大きく異なります。1999年の夏に米連邦準備理事会(FRB)が政策金利の引き上げを開始し、2000年3月のフェデラルファンド金利(FF金利)の実効レートは6.17% 2 でした。株価が下落し始めた後もFRBは政策金利を引き上げ、2000年6月までの実効レートは6.86% 2 に上昇しました。一方、2020年8月のFF金利の実効レートは0.10%でした。また、ジャクソンホール会合でのパウエル議長の講演から、FRBがさらに緩和的な「平均インフレ目標」政策へ移行したことが確認されました。すなわち、現在の金融政策は、テックバブルが崩壊した2000年時とは大きく異なります。

2. テクノロジー企業の長期的な成長を支える主要なテーマ

テクノロジーセクターは、新型ウイルスの大流行(パンデミック)という環境の変化における重要なテーマからの恩恵を受けており、それらのテーマの多くは今後も継続すると考えられます。

ソフトウエア、ストレージ、セキュリティー関連の企業や、住宅リフォーム、オンライン教育、デジタルヘルス関連の企業が「在宅」による恩恵を受ける

●「在宅」というテーマ:家で長い時間を過ごすことは、おそらく、パンデミックで出現した最も明確なテーマであり、自宅で働く、自宅で教育を受ける、そして自宅で運動をすることが含まれます。これは、2000年の米同時多発テロの発生で、多くの米国人が旅行を拒み、家で多くの時間を過ごした「巣ごもり」という概念をより大きくしたものと考えられます。今日、世界中の多くの人々が必要に応じて家を改築するなどしてお金を費やし、企業は従業員が自宅から効率的に働くことができるように、テクノロジーにより多くを投資しています。そのような動きを背景に、さまざまなテクノロジー企業、特にソフトウエア、ストレージ、セキュリティー関連の企業や、住宅リフォーム、オンライン教育、デジタルヘルス関連の企業が恩恵を受けています。私は、これらのビジネスはすべて、パンデミックの終息後も継続されると考えますが、その人気の度合いは様々になると考えています(子供たちが家庭で学習する難しさを考えると、オンライン教育の人気が継続するかは個人的に疑問です。)。

パンデミック下で劇的に増加した「オンラインショッピング」

●「電子商取引(eコマース)」というテーマ:過去長期のトレンドであったオンライン・ショッピングは、パンデミック下において劇的に増加しました。家でクリックをすれば商品が玄関先まで届くことの安全性と便利さは、パンデミックの最中に不可欠なものでした。パンデミックの長期化に伴い、オンラインで販売される商品やサービスの種類は拡大していくと予想されます。パンデミックの終息後も、eコマースの小売業者は、パンデミック前よりも小売売上高全体ではるかに高いシェアを維持することが見込まれます。

生産性を劇的に向上させる可能性を持つ「AI」

●「人工知能(AI)」というテーマ:人工知能(AI)は強力な発明で、その需要はパンデミックにおいて一層拡大しています。例えば、AIを利用する画像診断などは、新型ウイルスの検出と治療においてますます有用になっています。また、AIは、この困難な環境下、多くの企業がより効率的かつ賢明にビジネスへ取り組むことに役立っています。自然言語処理(NLP)は人工知能の一分野であり、音声認識などを通じ、人間が使う言語とコンピューターの情報のやり取りを強化します。AIは生産性を劇的に向上させる可能性があるため、パンデミック後も継続する可能性が高いトレンドと考えています。

生産性の向上とコスト削減の観点より、さらに加速すると見込まれる「自動化」

●「自動化(ドローンとロボット)」というテーマ:ロボットやドローンにより、ウイルスを拡散することなく必要な作業を実行できる重要性が高まっています。例えば、組み立てラインでロボットによる作業が多ければ多いほど、新型ウイルスによる工場閉鎖というリスクは小さくなります。また、ドローンは商品配送のための開発が進んでおり、パンデミック下で企業が必要なサービスを提供できない可能性を低下させることができます。パンデミック収束後にも、生産性の向上とコスト削減の観点より、自動化はさらに加速する可能性があります。

キャッシュレス決済やブロックチェーンなど、大きな可能性を持つ「金融テクノロジー」

●「金融テクノロジー」というテーマ:パンデミックで加速したもう1つの傾向は、キャッシュレス決済です。新型ウイルスの感染拡大により、現金の手渡しがウイルスを拡散させる恐れがあるため、現金の使用が減少しています。それにより、多くのフィンテック企業が恩恵を受けており、パンデミックの終息後もこの流れが続くと思われます。私は、パンデミックにより注目されるフィンテック企業の1つは、ブロックチェーンであると考えます。ブロックチェーンはさまざまな業界で活用されており、物理的な接触なしで商取引を容易にすることができます。例えば、公有地の記録はブロックチェーンを介してデジタル処理することができるため、権利者を検索するための物理的な記録の必要がなくなります。これはパンデミック下で特に有用ですが、通常時であっても社会の効率性を上げる手段であり、今後も継続することが考えられます。また、トークン化と分散型台帳技術(DLT)への関心も高まっています。

3. 新型ウイルスとの闘いの進展

WHOが新型ウイルス重症患者へのステロイド薬の投与を推奨

私はワクチンが2020年11月より配布可能であるという楽観論には否定的な立場であり、効果的なワクチンは来年の夏までに配布されると考えています。一方で、新型ウイルスの重症患者に対する治療法は確実に進歩しています。世界保健機関(WHO)は前週、最近発表された臨床試験の証拠に基づく重要な発表をしました。WHOは、新型ウイルスの重症患者に対するステロイド薬の有効性を認識し、ステロイド薬の投与を推奨しました。

2020年春と比較して死亡率が大きく低下

現在、医師や病院はウイルスとの闘いから多くの知識を蓄積しており、既に死亡率の低下が見られています。事実、米国の北東部以外の地域の晩春から夏の死亡率は、2020年3月と4月の米国北東部の死亡率に比べて大きく低下しました。私は、新型ウイルスにおける死亡率の低下は、経済だけでなく株式市場全般にとってもプラスになると考えています。

まとめ

テクノロジー株は長期的なテーマや緩和的な金融政策に支えられる見込み

私は、テクノロジー株をポジティブに考えるための、重要な理由が存在していると考えています。それらは株価が下落する日数やボラティリティを減らすわけではありませんが、テクノロジー企業の長期的な見通しを考える背景となります。そして、世界中の中央銀行、特にFRBによる非常に緩和的な金融政策により、リスク資産は引き続き堅調に推移すると考えています。

1.出所:ブルームバーグL.P.、2020年3月23日-9月2日。
2.出所:Federal Reserve Economic Data。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

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