働く会社によっても収入は異なりますが、職業や職種、仕事内容が違えば年収に大きな差が出るものです。大学卒業までは同じ進路をたどっていたはずなのに、「就職後には年収額が全然違う」という経験をしている人もいるのではないでしょうか。しかし、「職種が違うからお金持ちになれない」とあきらめてしまうのは早計です。
現在のままで、今からでも収入アップを目指すことは不可能ではありません。そこで今回は、職業による収入の高低を見るとともに収入アップを目指す方法について説明します。
目次
医師や弁護士、航空機のパイロットなど一般的に高収入といわれている職業は、はたして本当に高収入なのでしょうか。厚生労働省が毎年公表している「賃金構造基本統計調査」を参考に年収が高いのはどのような職業か見てみましょう。
*数字は上記調査から下記の数字をもとに算出しています。
支給される現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額
高年収の職業トップ10(男女別・平均年収)
順位 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
職業 | 年収 | 職業 | 年収 | |
1位 | 航空機操縦士 | 約1,708万円 | 航空機操縦士 | 約1,213万円 |
2位 | 医師 | 約1,227万円 | 大学教授 | 約1,030万円 |
3位 | 大学教授 | 約1,117万円 | 医師 | 約1,016万円 |
4位 | 大学准教授 | 約893万円 | 大学准教授 | 約817万円 |
5位 | 記者 | 約837万円 | 弁護士 | 約727万円 |
6位 | 公認会計士、税理士 | 約767万円 | 記者 | 約670万円 |
7位 | 不動産鑑定士 | 約755万円 | 大学講師 | 約663万円 |
8位 | 大学講師 | 約750万円 | 高等学校教員 | 約634万円 |
9位 | 高等学校教員 | 約743万円 | 一級建築士 | 約608万円 |
10位 | 弁護士 | 約730万円 | 自然科学系研究者 | 約601万円 |
(出典:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査/職種」をもとに筆者作表)
男女間で年収額に違いはありますが、高年収としてランキングされている職種は男女ともにほぼ同じです。多くの人がイメージするような航空機のパイロットや医師、弁護士はもちろん大学教授や記者、高等学校教員、一級建築士などがランキングしています。高収入を期待できる職業を選ぶためには、このようなランキングを参考にするのも一つの方法です。
上記の調査結果はあくまで平均年収であり、勤務先や役職などによって実際の収入は変わります。また、年収はわずか1年間の収入であるため、お金持ちになるまでの期間を考える際には以下の点も押さえる必要があります。
・その年収に達するまでの勤続年数
・年齢
・実労働時間など
例えば、男女ともに平均年収1位の航空機操縦士は、平均年齢が30代中盤(男性39.6歳・女性32歳)です。一方、大学教授の平均年齢は50代後半(男性57.7歳・女性57.6歳)であり、航空機操縦士とは大きな差があることが分かります。
このような違いによってもお金の貯まりやすさは変わってくるので、平均年収以外の要素も考える必要があるでしょう。
上記でランキングしている職業に就いていないと高収入は望めないのでしょうか。考察していくためにまずはランキング入りした職業に共通する能力が何かを考えてみましょう。主な共通点を挙げると「高度な専門知識や技術が必要」「免許や資格が必要」といったことになります。
専門知識や技術を身につけるにしても航空機操縦士や医師のように大学進学時から専攻を決めることが必要であったり、視力や集中力などの身体能力が必要であったりするものもあるでしょう。しかし、ある程度年齢を重ねてからでも学び続けることで資格を取り就業できる職業もあります。例えば、公認会計士や税理士、建築士など現在とは違っていても働きながら通学し資格を取得することは可能です。
高収入を得るためには「大企業に入ればいい」と考えていた人もいるかもしれません。しかし大企業に入ったとしても大切なのは「どんな部署のどんな職種に就くか」ということ。同じ会社でも専門的な知識を必要とする部署や職種では給料を高めに設定しているのが一般的です。
平均年収が高い職業には、専門的なスキルや経験が求められるなど、高収入を得られる理由があります。そもそも就くことが難しい職業もあるので、お金持ちを目指す場合は綿密なプランを考えなければなりません。
ここからは、お金持ちになれる職業に就くための手順を見ていきましょう。
まずは綿密なプランを立てるために、それぞれの業界・職業・役職の平均年収を調べることから始めましょう。
業界によっては、部長や課長などの役職で平均年収が大きく変わることもあります。実際にどれくらい変わるのか、以下では「令和3年賃金構造基本統計調査」のデータを紹介します。
役職 | 男性の平均年収 | 女性の平均年収 |
---|---|---|
部長級 | 585.8万円 | 497.2万円 |
課長級 | 484.6万円 | 422.1万円 |
係長級 | 376.7万円 | 334.7万円 |
役職なし | 296.2万円 | 248.9万円 |
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査/役職別」をもとに筆者作表)
上記の通り、部長級と役職なしとでは平均年収に250万円~300万円ほどの差があります。また、勤め先によって役職に就けるまでの期間も異なるので、昇進スピードを踏まえて業界・職業の傾向を調べておきましょう。
お金持ちになれる職業が見つかっても、必ずその仕事に就けるわけではありません。人には得意不得意があるため、自分に適性があるのかも調べておきましょう。
適正のある仕事を見極めるには、自分が得意なこと・苦手なことを明確にする必要があります。自己分析用のフレームワークやサービスなどを活用しながら、客観的に自分のスキルを分析しましょう。
お金持ちになれる職業に就くには、キャリアアップを目指す十分な時間が必要です。転職活動や新たなスキル・資格を取得する際にも、勉強や情報収集の時間を確保しなければなりません。
希望する年収や仕事内容にもよりますが、転職活動期間の平均は3~6ヵ月程度といわれています。難しい資格を取得する場合は、数年単位の勉強が必要になることもあるでしょう。
必要な時間はプランによって変わるので、「資格の勉強」や「転職活動」などの項目に分けて、それぞれのスケジュールを細かく考えてみてください。
年収が高い職業は、負担のかかる業務や責任が多い傾向にあります。人によっては大きなストレスを抱えるため、メンタルを強くするための努力も欠かせません。
仕事面でのメンタルを鍛える手段としては、以下のような方法があります。
メンタルを強くするには、努力によって自信をつけることが重要です。また、どのような労働環境でもある程度のストレスは蓄積するので、自分に合ったストレス解消法も探しておきましょう。
高収入を目指すなら、海外に目を向ける方法も選択肢の一つです。外国は物価が異なるため、同じ仕事でも国によっては年収アップを狙えることがあります。
特に2022年3月からは急激な円安が進んだ影響で、海外への出稼ぎが注目されています。中でも欧米は賃金水準が高いため、年収が2~3倍になるケースも見られます。
ただし、海外は言語や文化が異なるので、コミュニケーションスキルを習得することは必須です。現地の情報をしっかりと収集した上で、慎重に今後のプランを考えましょう。
MBA(Master of Business Administration)は、経営学の大学院修士課程を修了すると授与される修士号です。日本では「経営学修士」と呼ばれており、取得するとさまざまな企業から重宝される可能性があります。
キャリアインキュベーション株式会社の「ポストMBAキャリアに関する調査」によると、MBAを取得した人のうち57.1%が、初回の転職で300万円以上の年収アップを実現しています。また、40歳時点では80%以上が年収1,000万円を超えているため、MBAはお金持ちに近づける学位でしょう。
なお、MBAを取得するには、所定のビジネススクールなどに通って単位を取得する必要があります。数年単位の時間がかかるので、転職までのプランは慎重に考えましょう。
稼げる職業に就けばそれだけで高収入を期待できるものです。しかし、ハイレベルな職業の人たちでも新型コロナの影響で休業を余儀なくされ、収入が低減した人も少なくありません。専門知識や技術は平常時なら尊重されても異常事態の時には活用できる場面も減ってしまうもの。予測できない時代では、専門性や特殊能力だけに頼らず、幅広い分野で活用できる能力を身につけておくことも必要かもしれません。
例えば、情報収集力や分析力は、あらゆる情報をチェックしながら社会の動向を察することに役立ちそうです。また、マーケティング力や営業力は、社会の状況に合わせつつ自分を売り込むためにも役立ちます。
「数の力」という言葉もありますが、一つの会社の収入が少なくても複数の収入源があれば総じて高収入も期待できます。副業をするのもいいですが投資などの労働外収入を得ることも考えてみましょう。実はランキングで見たような職業は、広い視野と情報力も必要とされるものばかり。これらの人にお金持ちが多いのは、年収が高い以外にも投資などで別の収入を得ているのかもしれません。
上手な投資判断をするためには、広い視野と情報力が必要ですから、それに長けている人であれば、社会の変化にとらわれず投資もうまくできそうです。そのために必要なのは「職業」ではなく「能力」です。そう考えると現在の仕事にとらわれず収入アップを目指せそうですね。情報収集力や分析力を身につけてお金持ちへの道を歩んでみてはいかがでしょうか。