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(写真=Yuri Shebalius/Shutterstock.com)

仮想通貨から暗号資産へ!資金決済法改正で何が変わる?

2019年5月31日、資金決済法などを改正する法律が成立しました。(施行は1年以内)今まで「仮想通貨」と呼ばれていたものは、「暗号資産」に変わります。他にどのような改正内容があるのでしょうか。

顧客保護に向けた業者への規制

顧客保護のため、業者に対する新たな規制が加えられました。特に効果が大きいと考えられるのは、コールドウォレットによる保管を義務付けたこと。顧客がハッキングの被害に遭うことを未然に防ぐための規制です。取引所から顧客の暗号資産が流出する被害は今まで何件も発生しています。2018年1月にコインチェックで起きた事件は、約580億円という被害額の大きさや最大手の取引所が対象になったことなどにより、大きく注目されました。

特に問題視されたのが、常時インターネットにつながるホットウォレットで顧客の資産を管理していたことです。ネット環境から切り離されたコールドウォレットであれば、ハッキングのリスクは大きく減ります。例外的にホットウォレットで管理する場合には、流出したときの補償に備えて同じ量の暗号資産を保有するよう取引所に義務付けられました。

業者に対する規制は他にもいくつかあります。まず取引所による過大な広告や射幸心をあおるような宣伝は禁止されました。また暗号資産の売買はせずに管理のみを行うカストディ業者には、利用者に対する本人確認や自社と顧客の暗号資産を区別する分別管理が義務付けられます。いわゆるウォレットアプリを提供するような業者です。

顧客にとっては、業者への資産管理に関する規制により、安心できる取引環境が整いつつあるといえます。

金融商品取引法の改正

資金決済法とともに、金融商品取引法も改正されます。特に注目度が高いのはICOへの規制です。ICOはイニシャル・コイン・オファリングの略で、IPO(新規株式公開)になぞらえて名付けられました。既存の暗号資産およびトークンと呼ばれる新しい暗号資産の一種を交換する資金調達の手段です。今までICOには明確な規制がなく、詐欺の温床となっていました。

実在しないプロジェクトのでっちあげや、資金を集めたまま連絡がつかなくなるなどの詐欺が横行したのです。改正では、配当のような形で投資家に収益が発生するICOに金融商品取引法が適用されることが明確になりました。これにより株式と同様の情報開示や勧誘に関する規制が整備されます。また今まで規制の対象外だった証拠金取引も、FX(外国為替証拠金取引)と同様に扱われます。

証拠金取引は一定の倍率で計算された証拠金を預けることで手持ち資金の何倍もの規模の取引を可能にするものです。グレーゾーンだった暗号資産と金融商品取引法の関係に一定の線引きがなされたことになります。法体系の整備が進むことで暗号資産への信頼性が高まれば、市場の拡大につながるのではないでしょうか。

その他の規制

その他にもいくつかの規制が生まれました。仮装売買やウワサを流すことなどによる価格操縦は禁止されます。暗号資産の中には一般的にあまり知られず取引量の少ないものもあり、資金を多く持たない個人にも価格操作ができてしまうことがあったのです。このような不公正な取引を行う人には、課徴金や刑事罰が課される可能性があります。

取引所が取り扱う仮想通貨の種類を変えるとき、かつては事後届出でよかったのですが、改正後は事前届出になります。届出という名称には簡単そうな響きがありますが、実質的には厳しい審査です。透明性の低いタイプの暗号資産による資金洗浄(マネーロンダリング)などの悪事を防ぐための措置となります。今回の改正による最も分かりやすい変化は、仮想通貨から暗号資産への名称変更かもしれません。

変更の理由は、「諸外国でcrypto-assets(暗号資産)と呼ばれているから」「仮想通貨は日本円などの法定通貨と混同されやすいから」というものです。名称変更により、どのような影響があるのかは未知数といえるでしょう。旧名称である仮想通貨の「仮想」には、実体のない怪しげな印象を少なからず与えます。「通貨」という言葉は性質の一部を表しているに過ぎません。

新しい名称は、より実態に近いものです。暗号資産のイメージ向上につながれば、市場を支える一因になる可能性もあります。

暗号資産(仮想通貨)の取引環境は改善に向かっている

資金決済法と金融商品取引法の改正は、規制の厳格化や不公正な取引の抑止などによって投資家の保護を図るものです。2018年1月以降、価格の低迷が続く暗号資産ですが、市場の整備によりイメージが回復すれば、また上向く可能性もでてくるのではないでしょうか。

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