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好調を維持する米国株式市場

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要旨

好調の米株市場を支える3つの要因

グローバル株式市場は米国株式がけん引する形で好調を維持しています。コロナウイルス危機によって経済活動がまだ停滞しているにもかかわらず株価の堅調が続いている背景としては、①各国当局による金融・財政両面での積極的な対応、➁ワクチンの開発・普及への期待、➂米国の主要州において新規感染者数が過去1カ月間にピークアウトしている点—が挙げられます。

年内は横ばい圏を予想。アップサイドリスクに留意

今後については、これまでの株価上昇ペースがかなり速かっただけに、今後年内は横ばい圏で推移する公算が大きいと考えられます。アップサイドリスクとしては、ワクチン関連のニュースが相場を押し上げるリスクが重要です。ダウンサイドリスクとしては、①副作用などでワクチンの実際の効果が期待外れという認識が広がるリスク、➁米国大統領選挙戦をリードするバイデン候補が想定よりも左派的な経済政策を実施するとの観測が強まるリスク、③米中関係がさらに悪化するリスク―が挙げられます。リスクバランスとしては、当面はアップサイドのリスクがダウンサイドのリスクを上回るとみられます。

好調の米株市場を支える3つの要因

株式市場がグローバルに好調を維持しています。今週号では、世界の株価をけん引している米国株式市場の好調の背景と、今後の展開について考えてみたいと思います。米国を代表する株価指数であるS&P500種株価指数は、8月18日に年初来の高値をつけ、コロナ危機によって暴落した分を完全に取り戻しました。ナスダック総合指数は、8月24日時点で今年2月19日につけたコロナ前高値を15.9%上回る水準を記録しています。

コロナウイルス危機によって経済活動がまだ停滞しているにもかかわらず株価の堅調が続いている背景としては、3つのポイントが重要であると考えられます。第一は、各国当局による金融・財政両面での積極的な対応です。特にFRB(米連邦準備理事会)が果たしている役割は金融市場の安定に極めて大きな役割を果たしていると判断できます。財政政策面では、トランプ政権と議会民主党は、失業保険の追加給付金の交付を延長する法案を巡って交渉を続けており、数週間以内に合意が成立するとみられます。交渉の妥結は容易にはいかないものの、市場では最終的には合意が締結されるとの期待感が存在しています。

第二は、ワクチンの開発・普及への期待です。WHO(世界保健機関)によると、8月20日段階で治験段階にあるワクチンは30種類あり、そのうち6種類のワクチンが治験の最終段階にあります。米国では、来年前半中にはワクチンの普及によって経済活動が加速するのではという期待感が強まっています。グーグルが集計する人々のモビリティ・データ(スマホなどの移動データを基に人の移動量を示す)によると、米国では7月初旬以降、改善の動きがストップしています。この点は、8月以降の民間消費が停滞することを示唆していますが、足元の株式市場ではワクチンの普及によって経済活動が活発化する見通しが株価に織り込まれていると言えるでしょう。

第三が、米国において、新規感染者数が過去1カ月間にピークアウトしている点です。これまで感染の拡大ペースが速かった州の多くで感染拡大ペースが鈍化しており、一時は人口100万人あたり一日500人以上の新規患者が確認されていたフロリダ州やアリゾナ州では現在の感染ペースがピークの数分の一まで低下しています(図表1)。これらの州の集中治療室の使用率は、直近で横ばいないしは低下傾向にあります(図表2)ので、ひとまずは短期的に医療崩壊が生じて景気が腰折れするリスクは低下したと考えられます。

今後は横ばい圏を予想。アップサイドリスクに留意

今後については、これまでの株価上昇ペースがかなり速かっただけに、今後年内は横ばい圏で推移する公算が大きいと考えられます。リスクについては、当面はアップサイドのリスクがダウンサイドのリスクを上回るとみられます。アップサイドリスクとしては、ワクチン関連のニュースが相場を押し上げる可能性が重要です。アメリカでは早ければ10月中にも一部メーカーのワクチンが承認される可能性がありますので、そのニュースとともに、株価の上昇に弾みがつく可能性があります。このアップサイドリスクが顕在化する場合は、相場のけん引役が、これまでの株価上昇をけん引してきたグロース株からバリュー株へといったん転換する公算が大きいとみられます。これまでは、コロナ危機によるバリュー株に対する悪影響が強く意識される中で、コロナ危機の中でも業績が堅調で将来性も見込めるテック銘柄を含むグロース株に対する投資家の選好が高まってきました(図表3)。しかし、ワクチンが普及するという見通しは、コロナ危機のなかで業績悪化に直面する企業が多いバリュー株への注目度を高めることになるでしょう。もっとも、ワクチンによる経済の正常化効果が一通り相場に反映された後は、再びグロース株に焦点があたる可能性が高いとみられます。

一方、ダウンサイドリスクとしては、①副作用などでワクチンの実際の効果が期待外れという認識が広がるリスク、➁米国大統領選挙戦をリードするバイデン候補が想定よりも左派的な経済政策を実施するとの観測が強まるリスク、③米中関係がさらに悪化するリスク―に注意が必要です。米中関係については、トランプ政権が選挙を強く意識して新たな対中強硬策を実施する可能性があり、注意が必要です。

木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト

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