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自信過剰に警戒せよ

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市場で何が起きても対処できるように備えることが重要

〔要旨〕

●投資家の市場の見通しについての「自信過剰バイアス」が懸念される
●投資家は自らの市場の見通しを過信するべきではない
●バイアスにとらわれないためには、長期的な投資プランを立て、分散化を進めることが最良の方法

スリラー映画「ジョーズ」と投資家の自信過剰バイアス

前週にS&P500種指数が高値を更新したことで、投資家が自身のポートフォリオに対して危険な意思決定を行うのではないか、と懸念

今週の予定

①S&P国大会、②ジャクソンホール会合、③各国景況感指数の発表―など今後の経済を考える上で重要な発表が続く

子どものころに強烈な印象を与えた古典スリラー映画「ジョーズ」

私たち家族は、8月の真夏の最中、ニューイングランドの海に行ってバーベキューなどをして過ごします。毎年この時期になると、私は有名なスリラー映画「ジョーズ」を思い出します。私が幼い頃に本が出版され、その後すぐに映画が上映されたのですが、私は、いまだに海で泳ぎたくありません。子どものころ、夏休みでニューヨークからフロリダのビーチに向かうときに車の中でジョーズを読み、その怖さに震え上がり、家に帰ると言い張って親を困らせたものでした。

「ジョーズ」の撮影では、当初予定していた本物のホホジロザメのキャスティングを断念

私は、「ジョーズ」の製作ドキュメンタリー映画まで観に行きましたが、その内容は意外と興味深いものでした。最も衝撃的だったことは、映画のプロデューサー(有名な映画を数多く制作しました)は、「ジョーズ」の現実味を高めるために、当初、本物のホオジロザメを映画に使用する計画だったことです 1 。しかし、ホオジロザメを調教することはできません。監督の映画製作に対する自信やビジネス感覚をもってしても、この単純な事実をくつがえすことはできませんでした。そのため、映画監督は本物のホオジロザメの代わりに、サメの模型の作製を決定しました。あとは、よくご存じのとおりです。

株価の見通しで自信過剰バイアスが働くことを懸念

2019年8月に、私は「ジョーズ」を引用して「自信過剰バイアス」と呼ばれる行動ファイナンスの概念を説明しました。簡潔に述べると、「自信過剰バイアス」とは、状況をコントロールする自らの能力を過大に評価し、過剰な自信から、予想されるよりもはるかにリスクの高い決定を下すバイアスのことです。2019年の夏、世界の自由貿易が多くの異なる国々の間の繊細かつぜい弱な相互関係で成り立っているにもかかわらず、世界貿易の状況をコントロールしようとするトランプ政権の取り組みには「自信過剰バイアス」が見られました。現在は、株式市場に対する投資家の動向の中に「自信過剰バイアス」が見られると考えています。2020年3月以降、株式市場は堅調に推移していますが、特に前週にS&P500種指数が高値を更新したことで、投資家が将来の株価の見通しについて、誤った結論を導き出し、自身のポートフォリオに対して危険な意思決定を行うのではないか、と懸念しています。

投資家は自らが期待するどのようなシナリオに対しても過信すべきではない

現在は、新型ウイルスの脅威による株価修正が収束した、すなわち、市場が新型ウイルスの影響を克服し、堅調さを維持するという確信を私たちは持つことができません。その一方で、最近の市場の堅調さにより、間もなく株価が修正すると考えることに、強い自信を持つべきでもありません。金価格も同様で、大幅な上昇により上昇基調が続くと見込む投資家もいれば、急騰したため金価格が急落すると考える人もいます。要するに、投資家は自らが期待するどのようなシナリオに対しても過信してはいけないのです。

長期的な投資プランの作成が自信過剰バイアスを解消する最良の方法

自信過剰バイアスを解消する最良の方法は、長期的な投資プランを立てることであり、これには分散化が含まれます。分散化は、さまざまな資産クラスに幅広く投資するだけでなく、その資産クラス内での幅広い分散投資を意味します。長期的な投資目標をしっかり見据え、その過程での株価の上昇や下落に備えることで、投資環境が変わると考えた時でも、市場に振り回されず投資プランを変更することができるでしょう。

今週の予定

①共和党全国大会、②ジャクソンホール会合、③各国景況感指数の発表―など今後の経済を考える上で重要な発表が続く

8月の最終週に当たる今週は、多くのイベントが予定されています。

●米国では、共和党全国大会(RNC)とカンザスシティー連邦準備銀行主催の年次シンポジウム(ジャクソンホール会合)が開催されます。RNCについては、現政党の慣例を考えると、劇的な政策が発表されることはないでしょう。一方、各国の中央銀行総裁が出席し、主要なトピックが議論され、重要な金融政策決定の基礎が築かれる可能性もあることから、ジャクソンホール会合は注目されます。特に、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、FRBが実施した金融政策の枠組みについての講演を予定しています。私はパウエル議長が新しいインフレ目標政策を発表するか、少なくともそれについて関する説明を行うのではないかと考えています。また、世界各国の中央銀行が貿易政策に対してどのような金融政策をとるかについて議論することもできます。これは、現在の貿易摩擦の状況を考えると、重要であると考えます。

●ユーロ圏の消費者信頼感や景況感指数、米国ミシガン大学の消費者信頼感指数など、多くの重要な景況感指数が発表されます。世界中で新型ウイルスの急速な感染拡大が続いており、これらの企業や消費者の景況感は、この秋の経済の行方を決定する重要な要素となるでしょう。

1.出所:mentalfloss.com、“How Malfunctioning Sharks Transformed the Movie Business”、2015年6月20日。

 

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

 

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