昨今の日本では、年収300万円を下回る収入で貯金がほぼゼロでも、その現実に危機感を持つこともなく好きなことをして幸せに暮らす貧困に無自覚な層=「まったり貧困予備軍」が増えているようです。このまま将来への備えがないと老後貧困に繋がるのではと問題視されています。
一方で、同じ年収300万円でも「まったり貧困予備軍」になることなく、現状打破しようと収入を上げる努力をしたり将来に向けて計画的に備えたりする層=「まったり裕福予備軍」がいます。
「まったり貧困予備軍」と「まったり裕福予備軍」、この両者の違いは何でしょうか?行動や意識の違い、そして将来に必要な備えについて考察します。
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日本では、低価格で質の高いモノやサービスが手に入り、お金をたくさん使わなくても問題なく暮らしていくことができます。100円均一商品やプチプラの衣料品や化粧品などを利用している人も多いのではないでしょうか。サブスクリプションや住居・車のシェアリングなど、安く利用できるサービスも豊富にあり、うまく活用すれば「低予算の生活」をすることが可能です。
これらの家計にやさしい消費アイテムは、できればうまく利用したいもの。しかし、「低予算の生活」の現状に満足し、将来への努力をしないでいる人が増えるとすれば問題かもしれません。
総務省が公表している「労働力調査(2019年度)」によると、雇用されて働く人の約38%は非正規社員です。一方、国税庁の「民間給与実態統計調査(2018年度)」を見ると、正規社員の平均年収約504万円に対し非正規社員の場合は約179万円と収入が低いことが分かります。
前述したように年収300万円でも問題なく暮らしていくことは可能です。しかし、現在は幸せに暮らせている人でも老後の収入がなくなった場合に、満足な生活ができるかといえば「難しい」可能性のほうが大きいでしょう。
厚生年金は、2016年から加入要件が緩和され、週30時間以上の労働から週20時間以上などの条件を満たせば非正規でも加入できることになりました。しかし、もちろん要件を満たさなければ厚生年金には加入できず、自分で国民年金保険料を負担しなくてはなりません。仮に国民年金を40年間納付し続けた場合でも、将来もらえる年金額は年間78万1,700円(2020年4月現在)です。きちんと保険料を納めていなければ年金額はさらに減ります。
国民年金を満額受給できたとしても月に換算すると約6万5,000円のため、決して年金だけでは生活できるとはいえず、老後貧困に陥る可能性があります。
「まったり貧困予備軍」の人には、収支のバランスを考えずにお金を使う傾向があるかもしれません。例えば、リボ払いを利用すれば収入以上の買い物ができるため、多用してしまっている人も多いのではないでしょうか。これは買い物ができている現状に満足し、代金以上の無駄なお金を払って現実を見えなくなっていることが考えられます。
一方、「まったり裕福予備軍」の人が低価格の商品やサービスを利用するのは、効率的な節約のためといった傾向があります。生活コストをカットした分は、将来への蓄えとして積み立てます。長期投資を基本としているため、コツコツと複利効果を得られたり節税できる金融商品を選んだりするなど金融リテラシーも高めです。
「まったり裕福予備軍」の人は、冷静に現実を客観視して収入を上げるための努力も怠りません。同じ年収300万円であっても現状の満足のために、とりわけ努力をしないのが「まったり貧困予備軍」ならば将来の満足のために今の努力を惜しまないのが「まったり裕福予備軍」といえます。思考や行動の違いを知り自分がどちらに当てはまるか確認してみましょう。
年収300万円でも将来的に困らないようさまざまな対策を取っていくことが重要なのです。現状の生活に満足し「まったり貧困予備軍」に陥っている場合は、できるだけ早くその事実に気づき、対策を取っていくべきでしょう。
もしも自分が「まったり貧困予備軍」であることに気づくことができたなら、改善の余地は充分あります。今から準備していけば老後に本当の貧困状態になることを避けられるでしょう。そのためには現状を可視化することが大切です。毎月の収支を洗い出したり無駄な支出がないかチェックしたりすることから始めてみてはいかがでしょうか。
例えば、サブスクリプションで払っているけれどもあまり見ていない動画配信や、安いからと使わないのに買っている生活グッズの「ムダ」に気づくかもしれません。リボ払いをしているならこれ以上は利用せず少しずつでも繰上返済しながら利息分を節約することも方法の一つです。こうしてコストカットできたお金を積み立て、将来への準備をしていきましょう。
また、日本年金機構の「ねんきんネット」をチェックして、将来もらえる年金見込額をシミュレーションしてみるのもおすすめです。今のままではわずかな年金しかもらえないことが数字で理解できれば、スキルアップに努めたり、収入を増やす戦略を立てたりすることもできるかもしれません。大切なのは将来に向けた準備のためにすぐに行動を起こすことです。
年収300万円でも将来が不安となる「まったり貧困予備軍」ではなく「まったり裕福予備軍」な人を目指してみましょう。