「地方は生活費が安い」というのは、よく聞く言葉です。もしこれが事実で、生活費が浮いた分だけ投資への入金力を高めることができれば、より資産形成は加速するのでは? と考える方もおられるかもしれません。
確かに、収入を落とさずに地方移住できれば、資産形成が加速すると思います。
今回は、実際に大阪から高知県へ移住した私の実体験を交えつつ、地方の生活費事情なども踏まえて本当に可能なのかを解説します。
まず事実として理解しておきたいことは、実は「地方=生活費が安い」とは言えないということです。
これは、総務省の「消費者物価地域差指数」を見ると分かりやすいです。
この図から、東京都や神奈川県が突出して消費者物価指数が高いことがわかります。これらの地域に住んでいる方からすると、地方移住すれば生活費が安くなるというのは間違いではありません。
しかし、他の都市部を見てみると、例えば大阪府は上から17番目ですし愛知県は33番目と下から数えた方が早いほどです。当然、同じ都道府県内でも地域によって差はあると思いますが、一律に「都市部は生活費が高くて地方は安い」とは言い切れないということがわかります。
私のように大阪から高知県へ移住した人間のケースですと、家賃は高知県の方が安いのですが、生活費について安いと思ったことはありません。上図でも消費者物価地域差指数は大阪府より高知県の方が高いというデータが出ています。
例えば、光熱費において、都市ガスからプロパンガスに変わったことで高くなりました。また、大阪では不要だった車の保有コストなども発生し、トータルではあまり変わっていないというのが正直なところです。
つまり、「地方=生活費が安い」というのは東京都の人の感覚では間違いありませんが、それ以外の方は実態を比較しなければ、移住してから意外と生活費が安くならなかったという可能性があります。
ここまで見てきた通り、移住をすれば必ず生活費が安くなるということはありません。
もし、移住先での就職を考えている場合、年収が下がる可能性が高いです。移住で生活費が下がったとしても収入も一緒に下がってしまうならば、入金力は上がりません。
移住で生活費を抑えながら入金力アップを実現できるのは、次のようなケースのみだと言えます。
こう考えると該当する人は案外少ないのかもしれませんが、該当する方にとっては資産形成のスピードを加速させつつ生活の質を上げられる可能性があります。
では、次に地方移住がQOL(生活の質)を高めるのか? について考えてみましょう。
心理学や社会調査の世界でも、人間の幸福度を下げやすい代表的な要素として「通勤時間」と「騒音」がよく挙げられます。
・通勤時間について
通勤時間が長くなるほど、ストレスや「自分の時間がない」という感覚が強くなりやすいと言われています。通勤が30分を超えるあたりから、満足度が目に見えて下がるという報告もあります。地方への移住は、この通勤ストレスを大幅に軽減できる可能性があります。
・騒音問題について
常に車や電車の音、人の声などにさらされていると、気づかないうちに疲れがたまり、幸福度も下がりやすいとされています。一方で、地方に移住すると、思っている以上に静かな環境で暮らせることが多く、日常的な騒音からかなり解放されます。
一言に地方と言っても、「ザ・田舎」と思えるような場所もあれば比較的都市機能のある中心部も存在します。
個人的には、地方の良いところは中心部から少し離れると自然豊かな環境が残っていることだと思います。そのため、中心地から車で30分程度の距離にある場所あたりが、スイートスポットと考えています。
一方で、今、東京にお住まいの方が地方移住した場合、娯楽の少なさでかえって生活の満足度が下がるかもしれません。外食一つとっても選択肢が少なくなりますし、娯楽そのものが少ないのが実情です。
どちらかというと、以下の条件に当てはまる人以外は、地方移住によってかえってQOLを下げる可能性もあります。
都会的な生活スタイルを維持しながら「田舎暮らし」を消費したいと思っている人にとっては、地方移住はかえって生活の質を下げることになります。ご自身が人生のクオリティを何で判断しているのかが、移住を良いものにするかどうかを左右します。
「地方は生活費が安い」「田舎暮らしはのんびり過ごせてQOLが上がる」というのは、どちらも半分正解で半分間違いです。
特に田舎になるほど贈与経済が残っており、昔ながらの人間社会が色濃くなります。都会では考えることのなかった人付き合いの負担も増えるのが事実です。
しかし、それらを負担に感じず、自然を感じることが好きな人で、かつリモートワーク中心の方にとっては、入金力を高め、QOLを上げる素晴らしい選択になると思います。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。
※本稿は著者の見解に基づくものであり、Wealth Roadの運営会社の見解を示すものではありません。