NISA貧乏にご用心 資産が増えても人生カサカサでは意味がない?

NISAで資産が増える一方で…

2024年からは「新NISA」がスタートし、年間の非課税投資上限額も大幅に引き上げられました。従来の制度では、つみたてNISAは年間40万円、一般NISAは年間120万円までが上限でしたが、新NISAでは年間360万円まで投資が可能になりました。

もし360万円を毎月均等に積み立てる場合、月30万円の積立投資ができるという計算になります。非課税枠が広がったことは、資産形成を進める上で大きなメリットと言えます。

しかし、新NISAが始まったことで見えてきた現実もあります。それは、上限が大きいからこそ、「積立額を増やしすぎて息苦しさを感じてしまう人」が一定数いるということです。

例えば、毎月の生活費を切り詰めて投資資金を捻出しているうちに、生活のゆとりが失われて精神的に苦しさを感じてしまう人もいます。

投資上限額が増えたことで、たしかに選択の幅は広がりました。しかしその一方で、自分のペースを超えて無理をしてしまう人が現れているのも現実です。

実際に、私自身も投資を始めた初期は「資産が増えていくのが楽しすぎて」、毎月の生活費を5万円ほどまで削り、限界の節約生活を送っていました。

当時は、コンビニやスーパーの見切り品や、会社から廃棄される非常用防災食品などを中心に食生活を組み立てていました。当時の自分は楽しいと感じていたものの、今振り返れば相当ひもじい生活だったと思います。

資産形成を心から楽しめている人にとっては、極端な節約も苦にならないかもしれません。しかし、そうでない人にとっては、無理な積み立て投資が自分の幸福感を下げてしまうことも十分に考えられます。

貯金はもったいない? 上昇相場の落とし穴

このように、今の生活の質を下げてまで無理をして投資を続けてしまう人が多い背景には、実際に投資を始めたことで「株式市場が上がれば資産が増えていく」という手応えを感じることがあります。その一方で「貯金では増えない」という感覚が強まり、投資へ過度に傾いてしまうケースもあるのです。

実際に、新NISAがスタートした2024年1月以降の相場環境は非常に良好でした。例えば、米国株式市場の主要指数であるS&P500は、2024年1月の約4,700ポイントから現在の約6,800ポイントへと上昇し、この2年間でおよそ44.6%という高いリターンを記録しています。

本来、長期インデックス投資の平均リターンは年3〜7%程度とされる中で、この2年間は非常に好調な期間でした。通常であれば下落相場や調整局面も存在するはずですが、たまたま新NISA制度の開始時期と好調な相場が重なったことで、「株式投資は増えるものだ」「貯金はもったいない」という考え方に偏ってしまい、無理な投資を行う人が増えたのかもしれません。

しかし、2025年2月〜4月にかけて起きた「関税ショック」(トランプ氏の関税政策発表による下落)は、こうした風潮を一度見つめ直すきっかけを与えたと言えるでしょう。

株式相場は常に上昇するわけではなく、急落もあり得ます。投資は決して万能ではなく、資産形成においてもリスクと向き合う必要があります。その前提を踏まえたうえで、自分がどれだけ投資に回すべきなのかを慎重に考えていただきたいと思います。

特に現在、生活を切り詰めてまで投資をしている方は、その投資が逆に資産を減らす可能性もあるという事実を、頭の片隅に置いておいてほしいところです。

資産を増やすことがどれほど重要か

私自身も資産形成の初期は、生活費をかなり切り詰めて投資を続けていました。その反面で、20代の頃に旅行などで大きなお金を使うという経験はあまりできませんでした。

もしもう一度人生を歩むのであれば、月の生活費を5万円に抑えて15万円を投資に回すような極端なやり方ではなく、生活費として10万円ほど使い、残りの10万円を投資に回す……そんなバランスを取った選択をしていたと思います。若い時期こそ、旅行などの経験にお金を使う価値も大きいと感じるからです。

投資とは、今使えるお金を将来の自分のために先送りする行為にほかなりません。将来の備えが増えるほど安心感は得られます。その一方で「今この瞬間の経験」を犠牲にしすぎることが、本当に人生全体のプラスになるかどうかは慎重に考える必要があります。

資産形成は、あくまで幸福に生きるためのツールです。しかし、NISAによって積立投資を過剰に行っている人の中には、資産形成そのものが目的化し、本来の人生の幸せよりも優先されてしまっているケースもあるかもしれません。

もし、今NISAを続ける中で「生活を切り詰めすぎて苦しい」「少しひもじい」と感じているのであれば、無理をして投資を続けるのではなく、いったん投資から距離を置くことも大切です。その具体的な方法として、思い切って証券口座のアプリをスマートフォンから削除し、頻繁に資産額を確認しないようにするという方法もあります。

資産形成はあくまで手段であり、目的は「幸福な人生を送ること」です。どうか資産形成を通じて、皆さんがより豊かで満たされた人生を過ごしていけることを心より願っています。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。
※本稿は著者の見解に基づくものであり、Wealth Roadの運営会社の見解を示すものではありません。


ぽんちよ【投資&お金の勉強YouTuber】
20代の投資家。経済的自由とセミリタイアを目標に、日本株や米国株、つみたてNISA、iDeCoなど、幅広い金融商品へ投資を行っている。特に「高配当株を権利確定前に売却する」という独自の手法を実践。投資の源泉は、家計簿を駆使した徹底的な節約と、YouTube、ブログ、せどりといった副業への挑戦。現在は地方でのびのびと働きながら、自身の経験を元に投資初心者向けの解説や、お金、副業に関する情報を発信している。

Recent Posts

  • マーケットビュー

株式分散投資のきっかけが到来したか?

※インベスコ・アセット・マネジ…

3日 ago
  • マーケットビュー

日銀が政策金利を0.75%に引き上げ

※インベスコ・アセット・マネジ…

4日 ago
  • お金の使い方

50代からの投資で絶対にしてはいけない2つのこと

近年、新NISAなどの制度拡充…

1週間 ago
  • 投資の未来

プロの目線で読み解く2026年マーケットの勝ち筋!

インベスコ・アセット・マネジメ…

1週間 ago
  • マーケットビュー

株式分散投資のきっかけが到来したか?

※インベスコ・アセット・マネジ…

1週間 ago
  • お金の使い方

老後不安の9割は解消できる!? 知れば怖くない収入と支出

今回は、老後不安を解消するため…

2週間 ago