コロナショックによって世界中の株価が急落する一方で、これを機に投資を始める人が急増し、大手ネット証券では記録的な新規口座開設数に達したそうです。なぜ、多くの人たちは急落局面を投資の好機と捉えたのでしょうか? 「恐怖指数」と呼ばれるインデックスがその答えを導いてくれそうです。
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そもそも「恐怖指数」とは?
「恐怖指数」とは、VIX指数(Volatility Index)の俗称です。VIX指数はシカゴオプション取引所がS&P500のオプション取引の値動きをもとに算出しているもので、投資家の間で米国市場の先行きに対する不安が高まると上昇傾向を示し、逆に楽観的になってくると下降傾向を示すという特性があります。
「恐怖指数」と呼ばれる所以は、株価の下落に対するヘッジ(リスク回避)を目的とする「プット(売る権利)の買い」がS&P500のオプション取引の過半を占めているからです。弱気になる投資家が増えるほどこうしたヘッジが増え、VIX指数の上昇に結びつきます。
VIX指数の算出がスタートしたのは1993年で、当初と今では計算方法が異なっていました。現在の算出法に基づいて1990年以降の推移を検証してみると、最も上昇したのは2008年9月のリーマンショック時で、2020年3月のコロナショックはそれに次ぐ水準、3番目に高かったのは1998年9月に発生したロシア危機の局面でした。
つまり、VIX指数が歴史的に高水準に達するのは、ほとんどの投資家がパニック的に「ヤバイ!」と思う「総悲観」の状況に至っている局面なのです。
もしも「恐怖指数」の歴史的上昇直後から積立投資を始めていたら?
しかしながら、終戦を迎えて間もない頃の日本株に投資し、莫大な利益を得たことで知られる伝説の投資家、ジョン・テンプルトン卿はこのような言葉を遺しています。
「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観とともに成熟し、陶酔の中で消えてゆく。悲観のときが最高の買いどきであり、楽観のときが最高の売りどきである」
もしも、この教えに従って日経平均に連動する投資信託にリーマンショック直後(2008年10月)から今日(2020年5月)まで、毎月1万円ずつ積立投資を行っていたと仮定するとどうなっていたでしょうか? 積立投資とは、定期的に定額ずつ資金を投じていくという方法です。
このケースでは投資額は総計で140万円となるのに対し、2020年5月28日における時価ベースの評価額は200万円超で、足元のコロナショックによるダメージを差し引いたうえでも、かなりのリターンが得られている計算になります。次に、その理由について探ってみましょう。
定額ずつ継続的に投資する「ドルコスト平均法」のメリットとは?
相場の変動に左右されることなく、毎月1万円ずつ日経平均に連動する投資信託を買い続けていくというのが先程のケースでした。すると、リーマンショック直後のように株価が安くなっている局面では多くの口数を買い付け、日経平均が2万4,000円台といった歴史的な高値をつけた局面では少なめの口数を買い付けています。
毎月1万円ずつ機械的に投資を続けていながらも、結果的には「安い頃に積極的に買い集める」という行動を取っているわけです。安い局面で多め、高い局面で少なめに買うことで平均の買い付け単価は平準化されていきます。こうした効果に期待する投資を「ドルコスト平均法」と呼んでいます。
先程はリーマンショックによる急落直後から積立投資を始めたケースでシミュレーションを行いましたが、その直前(2008年7月)から取り組んでいた場合も143万円の投資総額に対し、2020年5月28時点の評価額はやはり200万円を超えています。「ドルコスト平均法」の効果に期待を寄せる積立投資(定額買い付け)なら、スタートのタイミングをあまり気にしなくてもすみそうですし、特に「恐怖指数」が上昇している局面は好機であるとも捉えられます。
もちろん、これはあくまで過去の結果にすぎず、将来的にも同じことが言えると断定できるものではありません。「ドルコスト平均法」が有利になってくるのは、何らかのショックで大きく下げる局面が訪れても、その後に株価が回復していくというパターンです。
延々と下落が続いていくケースでは、まったく報われない結果となります。しかしながら、株価が再び上昇しないという状況は、経済の低迷がどこまでも続いていくことを意味しているとも言えるでしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大などによって低迷する局面はあったとしても、いずれは復興に向かうと思えるなら、それは株価が本格上昇に転じる可能性があると考えているのと同義だと言えそうです。
VIX指数できっかけをつかめば、あとはオートマチックで!
株価が急落して「総悲観」のムードになっている状況で投資を始めることには、相応の勇気が求められます。その点、少額ずつ投じていく積立投資ならハードルがかなり下がってくるでしょう。
恐怖指数=VIX指数が歴史的な高水準に達するという現象はほとんどの投資家が「総悲観」に至っている可能性を示唆しています。これをきっかけに投資をスタートし、その後はオートマチックに継続しながら、気長に株価の回復を待つというスタンスが望ましいでしょう。
*積立て投資とドルコスト平均法の試算は、実際の投資結果とは異なります。手数料・税金などは考慮していません。