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目次
議事要旨が示すFRBのインフレ懸念
ウォルマートの決算報告から経済と消費の不透明感が浮き彫りに
米国の調査は、消費者心理の低下とインフレ期待の上昇を示唆
コスト削減に向けたDOGEのアプローチが、経済への影響に懸念をもたらす
ドイツ総選挙の結果は、欧州株にとって前向きな誘因となる可能性
注目すべき金融用語
今後の展望
注目の日程
先週は、各企業の決算説明会で不確実性に対する認識が示されたこと、米政府のコスト削減をめぐる疑問、米国の消費者調査の結果が悲観的な内容であったこと、欧州株にとって前向きな誘因となりうるドイツ総選挙の結果など、投資家にとって注目すべき様々な動きがありました。
予想通り、1月のFOMC議事要旨は、FRB関係者が、インフレに更なる改善が見られるまで金利を据え置く用意があると考えていることを示しました。パウエルFRB議長は1月の記者会見で、「様子を見る」とのメッセージを次のように発していました: 「(FOMC)出席者は、完全雇用に近い経済が維持された場合、FF金利の目標レンジを追加調整する前にインフレの更なる改善を確認したい、と指摘した1。」
トランプ政権の政策から、インフレの再燃が重大なリスクと捉えられていることは議事要旨から明らかです:「参加者からは全体的に、インフレ見通しの上振れリスクについて指摘があった。とりわけ、貿易政策と移民政策の変更が与え得る影響について言及した。」2
議事要旨の主要なポイントは、先週複数のFOMCメンバーによっても改めて言及されました:
ウォルマートが第4四半期の決算を発表しましたが、利益が予想を大幅に上回ったにもかかわらず、投資家は今後の見通しに落胆させられました。
ウォルマートの結果は悲観的ではありませんでしたが、現実的でした。ウォルマートの最高財務責任者(CFO)は、政策(主に関税)をめぐって今年は多くの不確実性があり、消費者の財布の紐は依然として固いことを認めつつ、次のように述べました:「今が不透明な時期だということを認めねばならない。そして、ここで無理をしてはいけないと考えている。まだ1年の大半が残っているのだから5。」
ウォルマートは、今後の見通しが「比較的安定したマクロ経済環境を想定している」と明らかにしつつも、「消費者の行動、世界経済及び地政学的状況に依然として不確実性が残っている」ことを認めました。6 これは既に神経質になっていた市場に不安を与え、売りを誘うのに十分な材料となりました(ブルームバーグによると、2月20日から2月24日まで、S&P 500指数は2.62%下落し、ナスダック総合指数は3.84%下落した)。
最新のミシガン大学消費者調査では、米国の消費者心理が低下し、消費者インフレ期待が上昇していることが示されるという、二つの面で最悪の結果となりました。
消費者からは、今後1年間の様々な経済要因について懸念が示されました:
これらの結果は、今後スタグフレーション的な環境になる可能性が増すことを示唆していますが、私はそうしたシナリオが実現する可能性は依然として低いと考えています。
私は先週、あるコンファレンスで講演する機会がありましたが、その後で、多くの米国の個人投資家とお話しすることができました。政府効率化省(DOGE)とその連邦政府支出削減への取り組みについては、もっと前向きな意見があるだろうと思っていました。DOGEチームが成し遂げたと思われる進歩の大きさに興奮する人も確かにいましたが、深刻な懸念の声が聞かれたことには驚きました。それは、以下の2つの観点からのものでした。
最初の質問に関しては、現在進行しつつある解雇のスピードと規模から判断すると、(米国の失業率の3か月移動平均が過去12か月間の最低値を0.5%以上上回った場合、米国は不況の初期段階にあるとみなすという景気後退指標の)「サーム・ルール」がトリガーされ得るとみられます。
パウエル議長が前回のFOMC後の記者会見で、採用率が低いため、解雇が大幅に増加すれば失業率が急速に上昇するだろうと述べたことを思い出してください。解雇と政府支出の大幅な減少があいまって深刻な経済的逆風を生じさせ、不況に陥らせる可能性さえあることに対し、実際に懸念が高まっています。
2つ目の質問に関しては、DOGEによる節約分の20%を米国民に支払うことを政府が検討しているという話については、財政赤字の観点から確かに懸念されます。この節約分は、DOGEが目標の2兆ドルの節約を達成した場合、国民一人当たり最大5,000ドルにもなり得ます。財政赤字に最大限影響を与えるには、DOGEの節約分は今後実施されるとみられる減税を賄い、連邦予算の均衡を促進する方向に活用されねばならないはずです。
また、内国歳入庁(IRS)に関する質問もありました:政府がIRSの職員を大量に解雇した場合、予算均衡に必要な歳入をどうやって確保することになるのか?というものです。また原子力科学者や、鳥インフルエンザ対策に携わる保健関係者などの解雇と再雇用、及び航空管制官の適切な人員配置などについても不安の声が聞かれました。
連邦政府は肥大化しており、経費節減はたやすく実行できると考える人が多い一方で、今のやり方に伴う不安定感を好ましく思わない人もいるようです。私はこの懸念が、ここ数日見られる市場の不安定さの少なくとも部分的な要因となっている可能性があると考えています。
先週末のドイツの総選挙は、特に米国が欧州との同盟を放棄しつつあるかのように見える状況下で、欧州にとって極めて重要なものでした。 フリードリヒ・メルツ氏率いる中道右派の「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」が明確に勝利したことは、市場にとっては望みうる中でおそらく最も好ましい結果となったと言えるでしょう。
CDU・CSUは傍流の政党ではなく、メルツ氏も傍流の指導者ではありません。 メルツ氏は広く尊敬を集めており、ビジネスに友好的である可能性が高く、またドイツの抱えるいくつかの大きな問題に対して常識的なアプローチを取ることが期待されています。彼がドイツにとって、まさに医師によって処方された薬のような役割を果たすことを願うばかりです。
極右政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」は2番目に多い得票数を獲得しましたが、多くの専門家が危惧していたほどの票数には届きませんでした。これにより「中道左派」と「中道右派」による大連立への道が拓けることとなり、少数政党に対する政治的な防壁としての役割を果たすことになるでしょう。
メルツ氏はドイツを率い、また米国から離れ新たな道を歩み始めた欧州を導く格式を備えているように思われます。以前にも欧州株の魅力について書いたことがありますが(2月13日発行)、今回の総選挙の結果は欧州株にとって、今年のまた新たな、大いに前向きな誘因となる可能性があります。
以前のレポートで、新年を迎えたところでいくつかの新しい金融用語をご紹介しました(1月15日発行)。今回新たにいくつか用語を追加し、古い用語を更新したいと思います。
マール・ア・ラーゴ合意。これは最近浮上したばかりの非公式な提案で、米国の財政状況を著しく改善する可能性があるものです。1985年のプラザ合意が、米国の通商環境の改善のため、実質的に米ドルの切り下げに合意したものだったことを思い出すかもしれません(つまりは自由市場の天秤に親指を乗せるようなものでした)。プラザ合意の精神に則り、新たなマール・ア・ラーゴ合意も米国の目標達成に寄与する可能性があります―今回は、外国の米国債権者の一部に対し、彼らの米国債保有分を超長期債(100年物で売買不可のゼロクーポン債とされる)に交換させることで、米国の債務構成を劇的に変化させ、債務返済負担を軽減することを企図しているとされます。これは熟考に値する興味深いアイデアではあるものの、外国投資家はこのような債務交換には非常に大きな不満を抱くでしょう。この計画には他にも、貿易赤字縮小のためにひそかに米ドルを弱くさせていく、といったものもありますが、最も独特で影響が大きいのは、この債務交換のアイデアです。
スタグフレーション。この用語は、長らく高インフレ、低成長またはゼロ成長、高失業率の時期を特徴づけるために使われてきました。今はスタグフレーションの環境には程遠いものの、直近のミシガン大学消費者調査の結果を受けて、この用語は再び注目を集めるべきでしょう。この調査結果は、他の直近のデータとともに、消費者がインフレの再燃と景気減速を懸念しており、スタグフレーションのリスクがゼロではないことを示唆しています。
ソブリン・ウェルス・ファンド。これもまた古い用語ですが、新たに注目を集めつつあります。ソブリン・ウェルス・ファンドとは、国が所有する投資ファンドであり、その国にとって「基金」のような役割を果たします。天然資源が豊富な多くの国では、その資源を使い、得られた富をソブリン・ウェルス・ファンドに投資します。これは、天然資源を金融資産に置き換える方法とみなされています。トランプ政権は、米国のソブリン・ウェルス・ファンドの創設計画を発表しました(最大の疑問は、そのファンドの資金源をどこから調達するかということです。関税収入や公有地の売却収入が、資金源の候補として取りざたされています)。これは米国では主流とは言えない考え方ですが、私は枠にとらわれない思考が好きですし、それが更なる独創的な考え方につながっていくことを期待しています。例えば、公的年金基金(ソーシャル・セキュリティ・ファンド)の一部を株式に投資することは、間違いなく年金制度のより長期の持続に役立ち、米国民の年金収入を改善する可能性があるでしょう。
今週は多くの重要なデータの発表が控えていますが、金曜日に発表される米国個人消費支出(PCE)のデータが最も重要となるでしょう。コアPCEはFRBが好むインフレ指標です。このことから、目下慎重なアプローチを取っており、行動を起こす前にディスインフレの更なる進展を見極めたいと考えているFRBにとっては、特に注目のデータとなるでしょう。
公表日 | 指標等 | 内容 |
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2月24日 | ドイツIfo景況感指数 | ドイツの今後6カ月間の景況感の見通しを測定 |
2月24日 | ユーロ圏CPI | インフレの動向を追跡 |
2月24日 | 韓国銀行金融政策決定 | 金利の道筋に関する最新の決定を発表 |
2月25日 | ドイツ国内総生産 | 地域の経済活動を測定 |
2月25日 | 米国S&Pケース・シラー住宅価格 指数 | 住宅市場の健全性を示す |
2月25日 | 米国コンファレンス・ボード 消費者信頼感指数 | 消費者のインフレ、株価、金利に対する態度と 期待を詳述 |
2月26日 | 日銀基調的なインフレ率を捕捉 するための指標 | インフレの動向を追跡 |
2月26日 | 日本景気先行指数 | 今後の日本経済の方向性に関する示唆を与える |
2月26日 | 米国新築住宅販売件数 | 住宅市場の健全性を示す |
2月26日 | オーストラリア民間新規設備投資 | 民間企業の新規設備投資のインフレ調整後の 総額を追跡 |
2月27日 | ドイツ失業率 | 労働市場の健全性を示す |
2月27日 | ユーロ圏経済・消費者信頼感指数 | 異なる国の景気循環の比較を可能にする |
2月27日 | ユーロ圏消費者信頼感指数 | ユーロ圏の消費者心理を追跡 |
2月27日 | ユーロ圏消費者インフレ期待 | ユーロ圏の消費者のインフレ期待を追跡 |
2月27日 | メキシコ失業率 | 労働市場の健全性を示す |
2月27日 | ブラジル失業率 | 労働市場の健全性を示す |
2月27日 | 欧州中央銀行金融政策決定会合 議事要旨 | 中央銀行の意思決定プロセスについて更なる 示唆を与える |
2月27日 | 米国耐久財受注 | 現在の産業活動を測定 |
2月27日 | 米国国内総生産 | 地域の経済活動を測定 |
2月27日 | 日本鉱工業生産 | 鉱工業セクターの経済の健全性を示す |
2月28日 | 英国ネーションワイド住宅価格 指数 | 住宅市場の健全性を示す |
2月28日 | ドイツ小売売上高 | 小売業の健全性を示す |
2月28日 | フランス個人消費支出 | フランスの消費者のモノ・サービスの 購入額を追跡 |
2月28日 | ドイツ失業率 | 労働市場の健全性を示す |
2月28日 | インド国内総生産 | 地域の経済活動を測定 |
2月28日 | ドイツCPI | インフレの動向を追跡 |
2月28日 | 米国個人消費支出価格指数 | インフレの動向を追跡 |
2月28日 | 米国個人所得 | 賃金や給与、公的給付金などのあらゆる 収入を測定 |
2月28日 | 米国個人支出 | 米国の個人消費支出を追跡 |
2月28日 | カナダ国内総生産 | 地域の経済活動を測定 |
2月28日 | 中国製造業・サービス業PMI | 製造業とサービス業の経済の 健全性を示す |
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2025-022