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目次
- 1 連邦議会では次なる景気刺激策の交渉を準備し、州知事たちは経済活動の再開に踏み出すもよう
- 2 財政政策の現状と今後を解説
- 3 質問:現在の経済危機と世界金融危機との、米国政府の対応の違いは?
- 4 質問:これまでに実施された政策では、中小企業に割り当てられたはずの資金を上場企業が受け取っているなど、様々な問題が生じている。これらの問題解決への進展は見られているか?
- 5 質問:4月23日に可決され、トランプ大統領が署名した4,840億米ドル規模の景気刺激策は、予想された政策か?
- 6 質問:次に予想される米国政府の動きはどのようなものか?共和党と民主党間における最大の論争のポイントは?
- 7 質問:州での経済封鎖が段階を踏んで解除されようとしている中、各知事の発言に注目が集まっている。州レベルの動きについては、どのように考えているか?
連邦議会では次なる景気刺激策の交渉を準備し、州知事たちは経済活動の再開に踏み出すもよう
〔要旨〕
✔︎財政政策の現状と今後を解説
●質問:現在の経済危機と世界金融危機との、米国政府の対応の違いは?
●質問:これまでに実施された政策では、中小企業に割り当てられたはずの資金を上場企業が受け取っているなど、様々な問題が生じている。これらの問題解決への進展は見られているか?
●質問:4月23日に可決され、トランプ大統領が署名した4,840億米ドル規模の景気刺激策は、予想された政策か?
●質問:次に予想される米国政府の動きはどのようなものか?共和党と民主党間における最大の論争のポイントは?
●質問:州での経済封鎖が段階を踏んで解除されようとしている中、各知事の発言に注目が集まっている。州レベルの動きについては、どのように考えているか?
財政政策の現状と今後を解説
ここ数カ月、私は新型コロナウイルスに対する政策を、医療、金融、そして財政面から解説してきました。米国経済が今後、急速に回復していくためには、この3つの政策のすべてが適切かつ効果的に働く必要があります。米連邦準備理事会(FRB)は既に米国経済と市場をサポートするための金融緩和を提供していますが、財政刺激策についてはまだ道半ばの状態です。本稿では、当社のUS Government Affairsの責任者であるアンディ・ブロッカーの見解をお伝えします。同氏は、財政政策の観点から現在や先々の状況を分析しています。
質問:現在の経済危機と世界金融危機との、米国政府の対応の違いは?
新型コロナウイルスへの経済対策規模は並外れたものに
アンディ・ブロッカー(AB):本年3月と4月には、早さと大きさの点で、米国政府による経済への並外れた介入が見られました。財務省、FRBおよびその他の金融規制当局の対応策の多くは、2007-2008年の金融危機時に生まれたものですが、現在はこれらが過去にはないスピードで実行されています。
新型コロナウイルス危機への経済対策として、2020年3月には18件、4月には7件の米国政府による政策対応が行われました 1 。一方で、世界金融危機時で講じられた政策対応は最初の1カ月が2件、2カ月目はゼロ件、最も多かったのは11カ月目で10件でした 1 。
現在は、FRBによるいくつかの緊急措置と、議会による4つの経済対策が発表されています。以下は、その政策をまとめたものです。
■第1弾:83億米ドル規模
•国内公衆衛生機関への援助
•米国国際開発庁(USAID)の世界的な対応への支援
•メディケアの遠隔医療の拡大への援助
■第2弾:1,920億米ドル規模
•労働者の有給休暇、雇用主の税額控除への支援
•失業手当、SNAP(補充的栄養支援プログラム)、メディケイドへの対応
■第3弾:2.2兆米ドルのコロナウイルス支援・救済・経済保障法(CARES法)
•企業の流動性支援
•個人の経済的援助
•失業手当と税制上の優遇措置
•病院と医療システムへの支援と医療資材の確保
•米国政府機関、州・地方政府への追加資金の提供
■第3.5弾:4,480億米ドル規模
•中小企業の追加的流動性支援
•病院やウイルス検査のための追加資金
質問:これまでに実施された政策では、中小企業に割り当てられたはずの資金を上場企業が受け取っているなど、様々な問題が生じている。これらの問題解決への進展は見られているか?
CARES法に基づいて設立した3,490億米ドル規模の賃金保護プログラム(PPP。その後3,100億米ドルが追加される)は、中小企業向けの従業者向け賃金支援を目的としていました。しかし、何社かの上場企業がPPPから資金を受け取っていたことが明らかとなり、問題となっています(ホテルやレストランの上場企業は、従業員500人以下の複数の子会社を通じてPPPの申請することができました)。
PPPプログラムの利用には、他のファイナンス手法の利用の検討が求められることに
いくつかの上場企業は資金をプログラムに返納しました。そして4月23日、財務省はプログラムの指針を改め、プログラムの利用企業は他のファイナンス手法の利用可能性を検討することが求められました。これにより、資本市場にアクセスできる上場企業は、PPPの利用が難しくなります。
質問:4月23日に可決され、トランプ大統領が署名した4,840億米ドル規模の景気刺激策は、予想された政策か?
最新の景気刺激策の内容は①PPPへの3,100億米ドルの追加、②病院と医療提供者へ750億米ドル―など
賃金保護プログラム(PPP)の財源がすぐに枯渇したため、次なるパッケージが必要なのは明らかでした。共和党は当初、このプログラムに約2,500億米ドルの割り当てを要請していましたが、その後、追加の政策も組み込まれました。議会で最終的に承認された法案には、①PPPへの3,100億米ドルの追加、②病院と医療提供者へ750億米ドル、③中小企業向け緊急補助金として600億米ドル、④コロナウイルス検査資金250億米ドル―などが含まれています。
今後の論点が注目される州・自治体への財政援助
この政策パッケージにおいて議論が分かれ承認されなかったものが、州・自治体への財政援助です。外出制限措置による税収の大きな減少から、州・自治体は差し迫った財政危機に直面しており、この支援を上院民主党は強く推奨しました。ただし、共和党は、その資金が財政規律を乱したり、年金プログラムの資金不足を補うことになるのではないかと懸念し、州や地方への資金提供に抵抗しました。このポイントは、次の経済対策を決める議論においても、両党の応戦の的となると予想されます。
質問:次に予想される米国政府の動きはどのようなものか?共和党と民主党間における最大の論争のポイントは?
経済対策第4弾の議論がすでに開始
政府内では、第3.5弾の景気刺激策が通過した直後から、第4弾に関する話し合いが始まっています。下院と上院共に5月4日に再開される予定であり、議論はすぐに始まります。
両党の意見の相違や未曾有の財政赤字の可能性を懸念
足元までは、危機に直面している米国経済への迅速な援助のため、超党派でかなりの協力が見られましたが、今回は各党の特定の問題に対しての主張が強くぶつかり合うかもしれません。民主党が提起している議題には、①州・地方自治体への資金援助、②食料支援プログラムへの資金提供、③労働者の安全に関する規制、④ 11月の大統領選挙に先立つ郵送投票システムや米国郵便公社への資金援助、⑤米国民への追加の現金給付―などが含まれます。一方、共和党からは、中小企業へのより多くの援助やインフラ支出の強化が提言されていますが、今までの数兆米ドルに上る財政出動から財政赤字の拡大について懸念もされています。
質問:州での経済封鎖が段階を踏んで解除されようとしている中、各知事の発言に注目が集まっている。州レベルの動きについては、どのように考えているか?
知事は、都市封鎖、自宅待機、社会的距離などの対応を実施しながら経済機能を維持させるという、2つの相反した目標への未知の対応に直面
現在、米国の50人の知事全員が、難局に立つ医療システムを支えるための予算と、人工呼吸器やフェイスガードなどの物資を求めています。また、国家安定基金は、各地域の医療需要の高まりによる危機対応を支援しています。しかし、新型コロナウイルスによるダメージは、他の災害とは多くの点で異なっています。その感染力の強さ、米国全土への拡大、そして経済のあらゆる面への大きな打撃は言うまでもありません。また、知事たちは、都市封鎖、自宅待機そして社会的距離などの対応を実施しながら経済機能を維持させるという、2つの相反した目標への未知の対応に直面しています。
ジョージア州では一部経済活動が再開
ジョージア州のケンプ知事は、4月24日からの一部の経済活動の再開を発表し、その動向に注目が集まっています。24日時点で、美容院、理髪店、マッサージ、ネイルサロン、ボーリング場、ジムなどが、社会的距離と衛生に関する州のガイドラインにのっとり、営業を許可されています。27日からは、レストランや劇場などの営業が再開されます。
全国ネットのニュースを視聴する米国成人の8割が公務員のコロナ対応に満足している一方、ニュースをソーシャルメディアサイトに頼る場合は満足度が6割との結果に
また、2020年には11の州で知事選挙が予定されており、この危機への対処いかんで知事たちの再選可能性は大きく左右されるでしょう。そのため、有権者がメディアを通して知事のリーダーシップをどのように受け取っているかに注目が集まっています。米国のシンクタンクによる研究では、様々なニュースの米国人への影響が調査されていますが、これによると、異なるニュースソースが新型コロナウイルスに対する地方政府の対応への印象にどのように影響するか、興味深い結果を発表しています。例えば、選挙のニュースとして全国ネットのニュース(CBSやNBC)を視聴する米国の成人の81%は、州および地方自治体の公務員がコロナウイルスの発生に適切に対応していることを、少なくともある程度は確信している、と答えました。しかし、選挙のニュースをソーシャルメディアサイトに依存している人々は、そのようなポジティブな確信を持っていません。同シンクタンクは、ソーシャルメディアに頼っている米国成人の60%が、州や地方自治体の選挙当局者の反応に満足していることを明らかにしましたが、これは全国ネットのニュースを見ている人に比べて21%も低い数値です。
各メディアの報道が11月の選挙結果に与える影響に注目
米国国民はしばらくの間、家にとどまらなくてはなりません。有権者が情報を得る各メディアが、コロナウイルスに対する知事たちの対応をどのように報道するかは、今年11月の国と地方の選挙結果に大きく影響することでしょう。
1.出所:Cogent Strategies。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2020-063