つみたてNISA(積立NISA)は、初心者が投資を始めやすい制度です。そんなつみたてNISAには元本割れのリスクがあるのでしょうか。投資を始めてから後悔することがないよう、つみたてNISAの仕組みやリスクを正しく理解しておきましょう。
目次
つみたてNISA(積立NISA)の仕組み
つみたてNISAは、国が2018年から推進している税制優遇制度のひとつです。
通常は投資で利益が出ると、利益に対して20.315%の税金がかかります。しかし、つみたてNISAなら要件を満たせば税金がかかりません。つみたてNISAでは、最大「毎年40万円×20年間=合計800万円」を非課税で運用できます。
つみたてNISA(積立NISA)の5つのデメリット
まずは、つみたてNISAの5つのデメリットについて見ていきましょう。
デメリット1.元本割れのリスクがある
つみたてNISAでは、国が定める基準に適合した投資信託の中から自分で商品を選んで積み立てます。つみたてNISAの対象商品になっている投資信託は比較的リスクが低くなっていますが、投資である以上必ず利益が出るわけではありません。
投資を始めたタイミングや売却のタイミングによっては、元本割れのリスクがあります。ただし、リスクが高いということは大きいリターンを期待できることでもあるため、ご自身の許容できるリスクに応じて投資信託の銘柄を選ぶ必要があります。
デメリット2.投資できるのは投資信託のみ
NISAには一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAがあり、日本在住の成人が利用できるのは一般NISAとつみたてNISAです。
つみたてNISAの投資先は投資信託(ETFを含む)のみで、個別株に投資することはできません。一方で一般NISAでは投資信託だけでなく、国内外の株式やREIT(不動産投資信託)など様々な商品に投資できます。
株式を始め、多様な商品から投資先を選びたい人は、一般NISAがよいでしょう。しかし、株式は投資信託と比べてリスクが高いと言われています。その代わりに高いリターンが期待できるメリットがあります。ただし、一般NISAは対象銘柄や商品が多いため、投資初心者には選択肢が多すぎるとかえって混乱してしまう恐れがあります。
デメリット3.一括投資ができない
つみたてNISAは、投資信託などを一定の金額でコツコツと積み立てることができる制度です。そのため、まとまった金額を一括で投資したい人には向いていません。
一般NISAなら一括投資も積立投資もできるため、一括投資をしたいなら一般NISAを選びましょう。しかし一括投資では、価格が高い時に一括投資をすると価格が上がりにくく、含み損を抱えてしまう恐れがあります。積立投資なら購入時期の分散によって平均購入価格の水準を下げることで、収益が出やすくなります。
デメリット4.iDeCoと違って所得税・住民税の節税効果はない
投資に関連する税制優遇制度には、NISA以外にiDeCo(イデコ)があります。iDeCoは、自分で商品を選んで運用しながら年金を積み立てる制度です。iDeCoでは掛金の全額が所得から控除されるため、所得税・住民税の節税効果を期待できます。
つみたてNISAでは、積み立てた金額が所得から控除されることはありません。本来利益にかかる20.315%の税金がかからないだけで、所得税・住民税の節税にはならない点を押さえておきましょう。
ただし、iDeCoでは積み立てた金額を原則60歳になるまで引き出せないため注意が必要です。老後の備えが目的で節税を重視するならiDeCo、いつでも引き出せるという自由度を重視するならつみたてNISAを選ぶとよいでしょう。
デメリット5.損益通算や繰越控除ができない
通常の投資では、損失が出た場合に利益と相殺できる「損益通算」ができます。また、その年の利益と相殺できなくても、3年にわたって翌年以降の利益と相殺できる「繰越控除」もあります。
つみたてNISAでは、損益通算や繰越控除ができません。そもそも利益に対して税金がかからないため、損失が出た場合に他の利益との相殺が認められていないと考えられます。
つみたてNISA(積立NISA)の5つのメリット
次に、つみたてNISAの5つのメリットをお伝えします。
メリット1.本来課税される資金を投資に回せる
通常の投資では、10万円の利益が出ても約2万円の税金が差し引かれ、手元には8万円しか残りません。つみたてNISAなら利益に対して税金が差し引かれることはなく、10万円がそのまま手元に残ります。手元に残った資金を投資に回した場合は、通常の投資よりも効率的な資産形成ができます。
メリット2.分散投資でリスクを軽減できる
投資信託は、投資家から集めた資金を専門家が国内外の株式や債券等に投資し、運用する金融商品です。投資信託の購入を通じて、間接的にさまざまな国・地域・商品・企業に分散して投資することになります。また、積立投資によって購入時間の分散も行えるので、つみたてNISAはリスクを抑えやすい制度と言えるでしょう。
メリット3.いつでも引き出せる
つみたてNISAは、専用口座に入っている資金をいつでも引き出せます。ただし、保有中の投資信託は売却する必要があるため、売却のタイミングによっては損する可能性があります。保有中の投資信託がある場合は、慎重に引き出すようにしましょう。
メリット4.購入タイミングで悩むことがない
積立投資では、最初に投資金額と購入頻度を決めれば、あとは自動的に積み立てられます。積立中の投資信託の基準価額が下がっても、前述の通りに積立投資なら平均購入単価を下げて収益を出せる水準を抑えやすくなるため、積立投資を続けても収益を期待できます。
もちろん保有中の投資信託が下がり続けないことが前提となります。積立前にはどの程度の下落までなら許容できるのか、積立後には基準価額の値動きがどうなるのかを予測しながら、今まで通りに積立投資を続けても問題ないのかを検討しましょう。
メリット5.少額から投資できる
つみたてNISAは、証券会社によって100円や1,000円といった少額でもスタートできます。まずは少額を投資し、値動きに慣れてから少しずつ投資額を増やしていけば、大きく損をするリスクを減らせます。
また、途中で積立投資を中断しない程度の金額で始めることで、積立投資を長期に渡って続けることができます。
つみたてNISA(積立NISA)で後悔しないための注意点
続いて、つみたてNISAを始めるときの3つの注意点を紹介します。
注意点1.金融機関は慎重に選ぼう
つみたてNISA対象銘柄の取り扱い数は、金融機関によって異なります。180本超と取り扱い数が豊富な金融機関もあれば、厳選した投資信託を10本程度しか取り扱っていない金融機関もあります。NISA口座はひとつの金融機関でしか開設できないため、慎重に金融機関を選びましょう。
注意点2.目論見書をよく確認する
投資信託の銘柄を選ぶときは、目論見書をよく確認しましょう。目論見書とは投資判断に必要な情報が記載された書類のことで、ネット証券ではPDFなどで閲覧できます。目論見書には投資先の地域や商品、過去の純資産総額の推移、組入上位銘柄などが記載されています。目論見書を読んで、投資信託の特徴を理解してから投資しましょう。
注意点3.余裕資金で投資する
いつでも引き出せるという自由度の高さは、つみたてNISAのメリットです。しかし、投資信託の基準価額が下がったときに引き出すと損失がでます。基本的には余裕資金で投資し、生活防衛資金などいざという時のお金は預貯金に置いておくことで、途中で積立投資を中断して引き出さないようにしましょう。
つみたてNISA(積立NISA)は初心者が始めやすい
一定金額内の投資による利益に税金がかからないつみたてNISAは、投資家にとってメリットの多い制度です。株式投資などと比べてリスクを抑えやすい投資信託の中で、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託だけが投資先なので、知識や経験がまだ少ない方でも投資を始めやすくなっています。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。